あ、あたしは!
なおも意地を張ろうとするルヴェに、Olはすっと手のひらを向けて制する。
勝負に負けたのだから領地を渡せ、などとは言わん。お前たちに要求するのは至極簡単な話だ
一体何を要求されるのか、ルヴェは戦々恐々としてOlの言葉を待つ。領地以上のものとなれば一体何だろうか。命か、スキルか、それとも──
正直に話せ。ただそれだけでいい
想像を逞しくしていたルヴェは、だからOlの要求に肩透かしを食らった。
わたしは、おじさまの女にして頂けて、たくさん種付けして頂いて、幸せです
真っ先に、クゥシェがそう言ってぎゅっとOlに回した四肢に力を込める。
俺は俺はけして手の届かないお嬢様が、他の男に汚されることに途轍もない快楽を、感じている!
そしてテールまでもが、そんなことを言い始めた。
あたしあたしは
あぁっ♡
逡巡するルヴェの前で、クゥシェが腰を大きく振って甘い喘ぎ声をあげる。彼女の秘所に出入りする太い肉塊を目にして、ルヴェはとうとう堪らなくなった。
あたしも、またセックスしたい!その太いちんぽに抱き潰されて、イヤって程イカされて、許してって懇願しても許されずに犯されたい!
その光景を見ているだけで膣奥が疼き、本能がOlのモノを欲しがっているのがわかった。
クゥだけズルい!!
それを独占している妹に嫉妬して、羨んでいることを、ルヴェはようやく認めた。
お姉様こそ、ズルいです。お婆様の期待も、家を継ぐ名誉も、テールの事も、何もかも独り占めして、わたしのものを全て奪ってわたしを選んでくださったおじさままで奪うおつもりですか!?
普段大きな声など出したことのないクゥシェの怒鳴り声に、ルヴェは怯んでたたらを踏む。
あたしあたし、そんなもの、嬉しいと思ったことなんてない。テールだって無理やり相手させてただけで、心はずっとクゥの事見てるって知ってた。あたしこそ!あたしこそ、家の事なんて気にせず自由に振舞えるクゥの事が羨ましかった!
えっ
今度はクゥシェがショックを受ける番だった。敬愛し、尊敬し──そして羨み妬んでいた姉が、自分を羨ましく思っているなんて考えもしていなかったのだ。
今だってそう!あんたは家の事なんか何も考えもしないで、そうやって簡単に白旗を振って好きなことができる!あたしはあたしは、失敗する事なんて、負ける事なんて許されてないのに!
お姉様
ルヴェはいつも自信満々で、怖いものなどないのだと思っていた。何をするにも全部自分で決めて、クゥシェの意見など聞き入れてもくれない。だがそれは、責任感の強さと表裏一体だったのではないかとクゥシェは思い至った。
ようやく、互いに互いを理解できたようだな
見つめあう姉妹の頭をぽんと撫で、Olが声をかける。
お前たちは表向きは互いに尊重しあうふりをしながら、内心では互いに羨み嫉妬しあっていた。だが、だからと言ってその外面が全て偽りだったわけでもない
こくり、と姉妹は頷く。家族として愛しているからこそ、大事だからこそ。尊敬しているから、憧れているからこそ。自分が欲しいものを持っているのに、それを蔑ろにする相手の事が許せなかった。
もういがみ合う必要も、羨みあう必要もない。二人ともに溢れる程に、与えてやる。望むだけな
ぎゅっと抱き寄せられて、ルヴェは頬を染める。肩に回されたOlの腕には、これまで感じたことのない包容力と安心感があった。
クゥシェ。構わんな?
はい、もちろんです、おじさま。お姉様と一緒に可愛がってください
姉妹がぎゅっとOlに抱き着き、交互に口づけを交わす。
先に孕むのは、わたしですけどね
だがルヴェがOlとキスしている間に、クゥシェはOlにだけ聞こえるように耳元でこそりとそう囁いた。
あああ二人ともなんて、そんなああっ!
愛した相手と、関係を持った相手。その二人を寝取られる感覚に、テールは動くこともできず一人絶頂するのだった。
お疲れさまでした、Ol
ああ。お前にも苦労をかけたな
興奮と熱狂の末、意識を失った三人にもう一度石化をかけ直すOlに、フローロは本当ですよと答える。
この後ちゃんとわたしの事も可愛がってくれないと拗ねますからね?
わかっておる
そんな事を言いつつもフローロが差し出した飲み物に、Olは術をかけた後飲み干した。
いつもそれ、何の術をかけてるんですか?
毒探知だ
当たり前のように答えるOlに、フローロは流石に呆れた。このタイミングでフローロがOlに毒を盛る理由がなさすぎるが、そういう事ではないのだろう。
そんな性格だから十回以上も同じこと繰り返すんですよね
正確には十二回だな
ルヴェを挑発し、勝負を受け、篭絡して、記憶を消す。このルーチンをOlは十二度繰り返し、その度に暗示を刷り込んでいた。
ルヴェには、優れた性技によって快楽を得ることこそが最上の価値である事。
クゥシェには雌にとって価値ある雄に選ばれることこそ最高の幸福である事。
テールには、愛する者を寝取られ幸福を失うことこそが至上の快楽である事。
それぞれの価値観がそれぞれの価値観を補強し、円環を成して強め合う暗示だ。
記憶がなくとも暗示は残り、心身の変化も消えてなくなるわけではない。いやむしろ、記憶がないからこそ対処することも出来ず、心の傷は深まり快楽を覚えた肉体はそれに溺れていく。そして暗示がそれを更に深め、確実なものにしていった。
ルヴェにかけた暗示はすぐに効果を発揮したが、クゥシェはやや手ごわく、そしてテールの暗示を完全に定着させるには十二回も彼の前でクゥシェの処女を奪う必要があった。
己の身体にひびを入れる程のストレスに彼の頑強な精神はよく堪えたが、それでも最後はそれを快楽として受け入れる道を選び取ったのだ。
繰り返した回数はともかくとして、今回の方法ってこの子たちの人となりというか、性格がわかってないと取れませんよね?いつ調べたんですか?
目を付けた段階で言えば、中層に来る少し前だな
Olの手のひらに、ぽんと音を立てて使い魔が現れる。それは風船蝙蝠と呼ばれる最下層に現れるモンスターだった。ろくなドロップを落とさない上にふわふわと空に浮いて捉えどころがなく、倒すのが地味に大変だから忌み嫌われてるモンスターだ。
こいつは音もなく空を飛び小さい身体で闇にまぎれどこにでも入り込み、見つかったとしても大したモンスターじゃないから誰も気にせん。最高の斥候だな
この風船蝙蝠に密かにリルと名付けているのはOlだけの秘密だ。