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物々交換は不便である上に、互いに良貨を使う必要がある。Olには貨幣が絶対に使われるという確信があった。

なるほどですが、Ol様の目的は、別に貨幣を流行らせて無限の財力を手に入れる事ではありませんわよね?

なぜそう思う?

Olがわずかに目を見開き見つめると、ナギアは予想外の事を問われたかのように慌てた。

えっ、だってOl様はそう、スキルにもアイテムにもさほど興味がなさそうですもの

なるほど、とOlは理解する。別にナギアは論理的にその解答に辿り着いたわけではないのだ。だが、人が欲するものを嗅ぎ分ける嗅覚を持っている。それは商人として実に有用な素質だった。

まあ壁族として成り上がる為の財力は必要だがな。俺が真に探しているのは人ブランを打倒できる人材だ

ブラン様を?ですがOl様は一度ブラン様を下しているわけですし、そう難しいことではないのでは?

ブランは非常に強いが、搦め手には弱い。無論生半可な搦め手であればそれごと破壊する力を持ってはいるが、Olであればいくらでも裏をかけるのではないか、とナギアは首を傾げる。

策を使わず、真正面からだ

無理なのでは?

そしてその首が、反対側に傾いた。

ブランの強さはシンプルな種族としての身体能力と、磨きぬいたスキルの強さだ。単純であるが故に真正面から勝つのは極めて難しい。

恐らく、金の腕と金の盾を持つテールでも勝てないだろう。

中層で力を持つ三人の壁族のうち、レイユはその経済力ゆえ。ハルトヴァンはカリスマと部下の練度ゆえに広い領土を維持している。

そしてユウェロイの力の根源は、ブラン個人の武力によるものだ。無論ユウェロイ自身の統率力や家柄といった条件はあるものの、ハルトヴァンが、そしてレイユがユウェロイ領を攻め落とすことができないのはブラン一人の戦闘力が原因だった。

彼女に完全に負けを認めさせるには、正面からそれを打破しなければならない。ユニスがいれば何とかなっただろうに、と思わずOlはため息をついてしまう。ないものねだりをしても仕方がないが、逆に言えばユニス並みの強さを持った個人が必要なのだ。

一人である必要はないが、特定の条件や初見殺しといった要素なしでブランに勝てる個人が。

まあそんな人材にそう簡単に会えるはずもない。今は焦らず、冒険者を集めて戦力を整えるしかないか、とOlは諦める。

オーナー様。よろしいですか?指導をお願いしたいという冒険者が来ているのですが

彼が待ち望んでいた原石に出会ったのは、そんなときの事だった。

第12話冒険者ギルドを作りましょう-3

シィルです、よろしくお願いします!

ユグですえっと、お願い、します

ナギアとの情事のあとを始末して服を着こんだ後、部屋に迎え入れた二人を見て、これはまたチグハグなコンビが来たものだ、とOlは内心思った。

何せOlの目の前に現れたのは、手のひらに乗りそうな大きさの翅族と、見上げんばかりの大きさの蹄族だったからだ。

翅族というのは、鳥のような翼を持つ翼族とはまた別の種族で、昆虫のような薄く小さな羽を持つ魔族だ。身体も小さく、ちょうどOlの知る小妖精に近い外見を持っている。

シィルと名乗った翅族は、丸くまとめた桃色の髪が特徴的な少女だった。身長は30センチ程だろうか。小さいのは背丈だけではなく、体型も同様だった。短い手足に起伏に乏しい身体付きは、幼い子供のように見える。

他の翅族はなりは小さくともしっかり女性の体格をしていたので、それはシィルの個人的な発育具合によるものだろう。しかしその愛くるしい外見に相違して、彼女の瞳には幼い子供にはない理知的な輝きがあった。

一方蹄族は名前の通り、蹄の生えた足が特徴的な種族だ。ユグと名乗った少女のふんわりとした淡い茶色の髪からは、牛のような黒い角と大きな獣のような耳が突き出していた。スカートの裾から生えた脚は膝から先が蹄の生えた獣のような脚になっていて、先端にだけ毛の生えた尻尾が緊張しているようにせわしなく揺れている。

だが何より特徴的なのはその大きさだった。蹄族は大柄な者が多いが、三メートル近いその身の丈は流石に規格外だ。そしてその身長もさることながら、特に目を引くのがその巨大な胸だ。彼女の大きく張り出した乳房は、Olをして今まで見たことがないサイズだった。

体格自体が大きいのだからバストサイズも大きくなるのは自然なことだが、それを考慮に入れてもなお大きい。サキュバスのリルや豊穣を司る火山の神サクヤでさえ、身長を同じだけに引き延ばしても敵わないであろう爆乳の持ち主だ。

その二人に、Olは見覚えがあった。最下層でサルナークに仕えていた奴隷だ。フローロに解放された奴隷たちは、そのほとんどが今は冒険者として登録していた。

では、わたくしは受付に戻りますわね。どうぞごゆっくり

ナギアがその蛇の下半身を撫でると、すらりとした白い脚に変化する。そしてOlの頬に見せつけるようにキスをして、部屋を出て行った。

オーナーさん、本当に魔族とでもえっちなことをしてくれるんですね!?

シ、シィルちゃん、失礼だよ

シィルがその体躯に似合わぬ大きな声で問い質すと、ユグもまたその巨躯に似合わぬ消え入りそうなか細い声でたしなめる。

女の魅力に種族など関係ないからな

じゃあ、えっちなことをしたら強くしてくれるっていうのも本当なんですか!?

まあ、本当だな

シィルの言い方には多少語弊はあったものの、ありていに言えばそのような話だったので、Olは頷く。

じゃあ、ユグちゃんともえっちしてくれますか!?

ああ。だが、お前はしないのか?

いちいち声がデカいな、と思いつつも、Olはシィルに尋ねた。

え?あたし?あたしは流石に無理なのでは?こんな身体ですし

己の身体を改めて確認するように、シィルは両腕を広げて見せる。確かにとてもOlの一物を受け入れられそうなサイズではないし、身体つきそのものも子供のように凹凸に乏しかった。だが顔立ちそのものは十分に愛らしいし、実年齢で言えば別に幼いというわけでもない。

そんなことはない。何の問題もないな

つまりは十分、Olの射程圏内であった。

え、ほ、ほんとですか!?やったー!

シ、シィルちゃんは、可愛いけど、わ、わたしもですか?

小さな身体で諸手をあげて喜ぶシィルに、大きな身体を自信なさげに縮こませるユグ。本当に対照的な二人だ、と思いながらも、Olはベッドの端に腰掛ける。

そもそも、お前たちは指導が必要な底辺冒険者なのか?

そうです!

Olが冒険者という制度を作り出し、ほとんどの者はそれまでよりも豊かな生活を送れるようになった。わざわざ物々交換が成り立つ相手を探す必要がなくなり、需要の少ないアイテムやスキルを死蔵する必要がなくなったからだ。