ベッドに横たわったまま腕を強引に引っ張り、Olはリルを腕の中に収めた。
契約した村は6つ、それぞれ娘を捧げる月をずらしたので、2ヶ月に一度は新しい娘が届く事になっている。
お前に溜まっている魔力はまだ十分だがな、こちらにも溜まったものはある。それに情交の為にだけ存在するお前達夢魔より抱き心地のいい人間など、いる訳がないだろう
慣れないリップサービスを口にすると、リルがニヤニヤしながらOlの顔を見ていた。
リップサービスと言っても事実ではあるが、言わなくていい事を一々言わされているというのはOlにとっては若干の屈辱でもある。
それに、魔力で出来ているお前の身体は、魔力を注げば僅かずつだが容量も増える。そもそも容量自体が人間とは段違いなのだ。これからも頻繁に相手をしてもらうから、覚悟しておけ
はぁい、ご・主・人・様
耳元でくすぐる様に囁くリルを押し倒しながら、Olはもう一度心中で嘆息した。
全く、面倒な悪魔をパートナーに選んでしまったものだ。
リルも、似たような感想をOlに対して抱いている事には気付かないまま。
第4話迎撃準備を整えましょう
はぁ気持ちよかった
まるでひだまりの中でまどろむ猫の様に弛緩しきった表情で、リルはごろんとベッドに横になった。股間の穴からはごぽりと白濁した液が零れ落ち、前回よりも更に全身精液にまみれているが、前回と違って身体が動かない程疲労はしていないようだった。
随分と余裕そうだな。魔力が効かなかったか?
そういうわけじゃないよ。何回もイカされたし
言いつつも、リルは体勢を変えると綺麗にするねーと呟き、Olのものを口にくわえる。
ただ、下手に抵抗せず受け入れたら大分楽だったかなそれに、前と違ってベッドの上だったから体勢とか気にしなくて良かったし
舌を伸ばしてOlの一物を舐めあげながらも、リルの言葉は明瞭にOlの耳へと伝わる。サキュバスにとって舌や口は発音器官ではなく、口淫の為に存在するものなのだそうだ。
あは、おっきくなってきたえっと、それにOlが精と一緒に魔力を私の中に入れてるでしょ?生気は許可がなきゃ吸っちゃ駄目って契約にあるから吸ってないけど、魔力はちょっとだけ吸っちゃったんだ。それで大分体力楽かも
なんだと?
横たわったままリルの奉仕に身を任せていたOlだが、その言葉に思わず上半身を起こす。
ちょ、ちょっとだけだよ!? 契約にないからってその辺はちゃんとわきまえて
慌ててリルは弁明する。そうしつつもOlの股間から口を離さないのはさすが淫魔といったところか。
普通、他人の魔力と言うのは悪魔でもそう簡単には吸えん。魔力、魔力と一括りに言ってはいるが、大気や地面に散らばるマナと、生物の持つオドでは性質がまるで違う。ダンジョンコアで集めているのも、お前の中に放っているのも俺専用のオドだ。俺以外がそれを扱うには、一度マナまで戻してから、自分専用のオドにせねばならんはずだが
あー、なるほどね。なんか私とOlの魔力って性質近いみたいで、そのまま吸えたよ。こういうの、相性いいって言うのかな?
事も無げに言いながら、リルは仕上げとばかりに喉の奥までOlの一物を飲み込み、舌を絡ませる。
俺の魔力は琥珀色だぞ? 普通、悪魔の魔力は黒とか紫とかだろうがく、出すぞ!
ん、美味しいOlって性格は悪いけど、精はすごく美味しいよね
こくこくと喉を鳴らして精液を飲み下し、更にストローの様に吸い上げながらリルは満足そうな声をあげる。
余計なお世話だ。まあ魔力を共用出来るなら、それはそれで使えるな。お前に注ぎ込んだ魔力のうち、1割程度なら自分の物にしていい
Olは汗や精液、愛液に塗れたベッドから身を起こすと、軽く濡れた布で身体を拭い、服を着込む。
そのうち湯殿なんかも用意せんとな。が、今は先にやらねばならん事がいくつかある
Olはリルを呼んだ時と同様に血で魔法陣をいくつか描く。と言ってもリルを呼んだそれとは違い、かなりシンプルなものだ。
一応ダンジョンが出来て、家具も揃って、定期的に食料とかも手に入って他に何かやる事あるの?
とりあえずベッドのシーツを剥ぎ取り、予備の物に交換しながらリルが尋ねる。
馬鹿を言うな、やる事はまだまだ無数にある。これだけでいいなら、わざわざお前を呼んだりはしない。いでよ、インプどもよ!
Olが一喝すると、魔法陣から小さな悪魔が数匹湧くように現れた。人間の赤ん坊くらいの大きさしかないその悪魔は、しかし赤ん坊の持つ可愛らしさとは無縁の生き物だった。全身はつるりとして毛は全くなく、背中にはコウモリを思わせる翼が生えている。耳は禍々しくとがり、顔は醜悪で邪な笑みを浮かべていた。
最も位の低い悪魔の一種だが、それでも悪魔は悪魔。簡単な魔術くらいなら使用し、人並みの知能も備えているので魔術師に使い魔としてよく使用される。
まず、このダンジョンを大きく拡張せねばならん。インプどもよ、この地図の通りにダンジョンを掘るのだ
Olはあらかじめ用意しておいた地図をインプたちに渡して指示する。インプたちはすぐさま作業に取り掛かった。
ダンジョンの拡張には二つの意味がある。侵入者対策と、収集する魔力量の増大だ
汚れたシーツのやり場に困っているリルからシーツを奪い、代わりに地図の写しを押し付け、Olは説明する。
今、このダンジョンは地上への穴からこのコアのある部屋までほぼ直通の道が通じている。ここを掘り当てる為に、俺が真っ直ぐ掘ったからな。これでは侵入者がいた場合、すぐにこの部屋を攻められる事になるが、これは非常にまずい。ダンジョンコアが壊されればすべては終わりだ。そう簡単に辿りつけぬ様に、ダンジョンは複雑な迷宮にしてやる必要がある
そもそもこの部屋にはいれないように、壁で囲っちゃえばいいんじゃない?
素朴な疑問を口にするリルに、Olが首を横に振る。
それが出来んのが二つ目の理由だ。このダンジョンは龍脈の真っ只中に存在しているが、そこにコアを置けば勝手に魔力が溜まるという訳ではない。ダンジョンの通路に魔術的な彫刻を施し、周辺の魔力を通路を通してコアへと流し込むようになっている。ちょうど、植物が根を伸ばし、地中の養分を取り込む事に似ている。ダンジョンを広げれば広げるほど、大量の魔力がコアへと流れるというわけだ。コアを隔離すればそれも適わん
あー、なるほどね。ダンジョン自体が立体的な魔法陣みたいになってるんだ
飲み込みが早いな。みたいなではない。実際、これは魔法陣なのだ
図や模様には意味があり、意味には力がある。
魔法陣とは、模様の意味を利用する魔術の一種だ。例えば、円には内と外の区別という意味があり、円だけで進入を拒む最小の魔法陣となる。