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「料理人の方ですか」

「ああ、遅れた謝礼だ。アユとヤマメ、どちらも塩焼きだ。どっちが良い?」

「では……ヤマメで」

一度考えた後、硝子はヤマメを受け取った。

しかしアユとヤマメって時期が微妙にズレてるよな。

ゲームなので川魚なら時期とか関係無く釣れるのかもしれない。

それはさて置き、これから夜間戦闘をする訳だから色々と聞いておかないとな。

「先に聞いておきたいんだが、何か必要な手順とかあるか? 既に話したと思うけど、生憎と俺は戦闘経験があまりない。当然狩り場のルールなんかも詳しくないんだ」

「そうですね。光源は私が持っていくので問題ありません。あ、絆さんは上着などの類を所持していますか? 夜は冷えるので持っていて損はないと思います」

塩焼きのヤマメを『いただきます』とご丁寧に手を合わせながら硝子は説明する。

本人曰く、本当は行儀が悪い行いなのだそうだが、この世界では一般的に見られる光景なので『郷に入れば郷に従えという諺もありますから』と補足していた。

「上着か、残念ながら持っていないな」

「なら、私のお古を使いますか? 劣化品になりますが、耐寒効果が付与されているので現在判明している寒さには耐えられるそうですよ」

「いいのか?」

「もちろんです。既に無用な物なので処分に困っていた所でしたから」

すると硝子は交換ウィンドウから大きめな羽織を渡してきた。

アイテム名は『粉雪ノ羽織』。

弱い耐寒効果が施されており、防御力も増加する。

ただし軽そうに見えるが重量設定があるので付けると少し身体が鈍重になる。なので寒い場所や固定狩りなどで使っていたそうだ。

「俺はどちらかと言えば洋物の服を付けているが大丈夫か?」

羽織を着てみて感想を求める。

言葉通り、現在付けているのは黒色のワンピース事『ガイストドレス』。

簡単に作れる物で性能が一番高かったというのが理由だが、若干ゴシックロリータの気色が混ざっている。

一応魂人専用装備だ。

効果はスピリットが受けるエネルギーダメージを微弱に軽減してくれる。

これ等の衣類系防具しか装備できないのが解体武器の難点だろう。

周囲を見回して短剣を腰に下げた奴を見つけるが軽装、ライトアーマーなどの類を装備している。解体武器を使う人が少ないのは低い防御力も理由に違いない。

まあ半生産職なのだからしょうがないと言えばしょうがないが。

「素直に口にしますと、思ったよりも似合っていますよ。こう、ファンタジックな体裁を保っていると思います」

「思ったよりもっというのが気になるが……ありがとう。大事に使わせてもらおう」

仮に似合っていなかったとしても性能装備として使えば良い。

ネットゲームでは良くある事だ。

「それで行き先はどこなんだ? まあ行った事は無いから分からないが、どんなモンスターがいるか事前に知っておけば混乱も少なくて済むだろう」

「そうですね。説明しますと、常闇ノ森という、夜にしか入れない場所がありまして、そこに生息するダークネスリザードマンが主な標的です――」

硝子の説明を要約すると、ダークネスリザードマンが沢山沸くスポットがあり、エネルギーの実入りが良いそうだ。

ただしダークネスリザードマンはハーフ&ハーフソードを所持しており、攻撃力も高いので魔法スキルや攻撃スキル持ちというだけでは厳しい。なので一部のスキル構成の者以外滅多に足を踏み入れない穴場らしい。

本来であれば盾スキル持ちが一人はいないと狩りとして成立しないが俺達の総エネルギー量が適正よりも高い事。扇子の攻守一体、武器破壊がダークネスリザードマンと相性が非常に良い事などを加味してソロでも十分に許容範囲である、という理由から『常闇ノ森』を選んだそうだ。

「聞いた限り解体武器とは相性が悪そうだが良いのか? 下手をすると寄生してしまうかもしれないぞ」

まあ既に半分寄生している様な気もしなくもないが。

今までは一応武器相性が良かったのでダメージの通りが良かったのも理由だがな。

「例の『アレ』もありますから。絆さんが役に立たないなんて事はございません」

「そうか、例のアレか」

無論、解体の事だ。

確かにあまり狩る人がいない狩り場のモンスターが落とす素材なら、金銭的に潤うのは計算しなくても分かる。ドロップ品によっては元素変換するという手もあるので、考え無しに誘った訳では無さそうだ。

「じゃあ引き続きよろしく頼む」

「こちらこそよろしくおねがいしますね」

そう言って人が沢山いる場所で硝子は大きくお辞儀をした。

闇から這いずる影

「クレーバー!」

俺がそう叫ぶと鉄ノ牛刀が赤色に光る。そして遠心力が発生してダークネスリザードマンへと勢いを付けて切り掛かった。

――ドサッ。

そんな音と共にダークネスリザードマンの右手と一緒にハーフ&ハーフソードが地面に突き刺さり、攻撃力を減退したダークネスリザードマンに追撃を掛ける。

するとダークネスリザードマンは咆哮を上げる間もなく倒れた。

「一匹倒した。硝子、そっちは大丈夫か?」

「問題ありません! 乱舞二ノ型・広咲!」

スキルを使う前から発光していた硝子の扇子が開き、花弁が舞うかの様なエフィクトと共に二匹のダークネスリザードマンを切り裂く。

片方は崩れ、もう片方はハーフ&ハーフソードを硝子に向ける。

刃を扇子で受け止め、バキンという音を発てて武器破壊を発生させる。

「充填……」

硝子が呟くと扇子が薄く白色に光り始める。

その間も硝子はダークネスリザードマンに扇子の突きを入れてダメージを与える。

加勢しなくても問題無いだろうが鉄ノ牛刀で横からダークネスリザードマンに切り掛かる。丁度硝子の打撃と重なり、ダークネスリザードマンは倒れた。

「絆さん、お怪我はありませんか?」

「ああ、問題ない。思いの他戦えている。さすがに二匹同時は無理だがな」

一度ダメージを受けているが一応無傷だ。

ダメージよりも獲得エネルギーが勝っているので無傷と例えて差し支えないだろう。

その間も硝子の扇子は発光を強めている。

これは扇子の効果だ。

扇子の攻撃スキルは溜めが必要なものが多い。

平均10秒から3分間溜めて硝子は使っている。蓄積時間が長ければ長い程発光も強まって、威力も増す。その間にモンスターの攻撃を防ぎ、通常攻撃を織り交ぜながら交戦するのが扇子の戦闘スタイルだ。