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難点を挙げるなら攻撃も防御も中途半端という事か。

攻撃スキルは範囲系が多いのでダメージが低く、防御は盾には劣る。

「じゃあこいつ等を解体する。敵が湧いたら護衛を頼む」

「わかりました」

俺は倒れたダークネスリザードマンに鉄ノ牛刀をそのまま向け、鱗から順に剥がしていく、そして効果が切れている事に気が付き小声でスキル名を呟く。

「高速解体……」

すると解体速度が上昇する。更にスキル説明には記入されていないが、二つ隠し効果がある。一つは解体成功率にも補正が発生する。早く解体している割に取れる量が使用前後で差が無いのはその為だ。

もう一つは解体武器を使っている際に少量だが身体が軽くなる。

解体速度とやらが攻撃速度と同カウントという事なのだと判断している。

ともかく死体が三つもあるので急がなくては。

そんなに直に新たな敵がやってくる事は無いが急ぐに越した事はない。

――ギンッ!

敵の攻撃を扇子で防ぐ金属音が響く。

硝子の方では既に戦闘が始まっている。

予測よりも敵が早く湧いた。急がなくては。

敵が三匹以下なら解体を続けると事前に決めてあるので俺は解体に集中する。

これが解体武器の仕事だとは理解しているが、焦りはある。

だが今は自分の仕事を全うするだけだ。

「終わったぞ。そっちは…………大丈夫だったみたいだな」

三匹の解体を終えた頃に丁度硝子が戦っていたダークネスリザードマンが倒れた所だった。俺は何か言われるまでもなく、そのまま解体作業を始める。

「エネルギーの調子はどうですか?」

「そっちこそ頻繁にスキルを使っている様だがどうなんだ?」

「私はエネルギー生産力がⅩですから、この程度の量ならば問題ありません」

俺よりも二段階ランクが高い計算だ。

さすがは元前線組。取得スキルも良いのが揃っているな。

その間も手を動かしアイテムを確実に手に入れていく。

「ふぅ……」

敵の波が止み、解体するモンスターもいなくなったので軽く深呼吸する。

周囲は深い闇の森だ。

硝子が持って来た提灯の灯りが唯一の光源で星の光一つない闇の世界。

そんな深い森の中で一本道の洞窟を陣取って狩りをしている、という状況だ。

これもかれこれ2時間近く続けているので大分慣れてきた。

「絆さん、疲労は大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」

「無理は禁物ですからね? 私達は魂人なんですから、些細な失敗が命取りになります」

「これ位なら別のネットゲームで紡に付き合わせられた事に比べれば楽なもんだ」

「わかりました。では、もう一時間程続けて様子を見ましょう」

ダークネスリザードマンは硝子の話通りかなり美味しい。

撃破数も多いので獲得アイテムも膨大だ。それでいて人も見かけない。

硝子のおかげという部分が大部分を占めているが安定して狩れるのも良い所だろう。

無論、視界が悪いのが最大のネックだ。しかしこれなら夜目を取得するのも検討に入る位にはエネルギー効率が良い。

尚、既にエネルギー総量2万を超えた。このまま増えてくれれば良いんだがな。

「…………?」

「どうした? 何かあったか?」

不思議そうな表情をする硝子。

こんな顔を見るのは初めてなので気になって訊ねる。

「いえ、何かおかしな音がするので気になりまして」

音?

言われて俺は耳を澄ませてみる。

無論、その手のスキルを取得していないので音に変化はない。

が。

――ザ、ザ、ザ、ザ、ザ、ザ。

確かに何かが走る様な音が聞こえてくる。

「……そこです!」

硝子が何も無い場所に扇子を振るう。

そしてバチンという音と共に半透明な物体が黒煙と共に姿を現す。

「待ってくだされ! 自分は外敵ではござらん!」

言い訳と共に頭からすっぽりと黒装束を身に纏った忍者みたいな奴が現れた。

おそらくは潜伏だとかハイディングみたいなスキルに違いない。

にしても『ござらん』って俺が出会う奴はどうしてこうロールプレイヤーが多いんだ。

「そんな言い訳が通用する状況だとは思えません。言いなさい。何が目的で私達に接近したのかを!」

「誤解でござる! 自分はボスモンスターから逃げていただけでござる!」

「そんな言い訳が通用する状況だとは――」

硝子が前後のセリフと同じ事を言ったので以下略。

ともあれ妙に敵愾心を抱いている硝子を説得して黒装束の話を聞く態勢を整える。

「ともかく話位聞いてやろうぜ。な?」

「絆さんがそうおっしゃるなら……」

なんとなく普段と違う反応を示す硝子に好感を抱きながら黒装束に向き直る。

「それで? どうして隠れていたんだ?」

「違うでござる。隠れていた訳ではござらん。先程も口にした通りボスモンスターに追われていたのでござる。自分は闇属性装備の素材を集めていたでござるが、運悪く遭遇してしまったでござる。そして逃げていたでござるが、潜伏スキルを使うとボスでも反応が少し鈍るのでござる」

「ふむ。お前の話が真実だと仮定して、そのボスモンスターはどこにいるんだ?」

嫌な予感しかしないんだが一応訊ねる。

「この洞窟の目の前でござる」

「やっぱりか……」

最初の言い訳を聞いていた時から、その可能性については考えていた。

洞窟の先を恐る恐る眺めてみても闇が一帯を支配していて良く見えない。

「自分、夜目を取得しているので見えるのでござる」

「なるほど。じゃあボスがいるとして、これからどうするか、だ」

都市帰還アイテム『帰路ノ写本』はダンジョン判定の施されている常闇ノ森では使用できない。そしてここは一本道の洞窟内。逃げ道は一つしかない。

その逃げ道はボスモンスターが占拠している。

「貴方、なんて事をしてくれたのですか! 私達は簡単には死ねないんですよ!」

珍しく硝子が慌てている。

そう、俺達スピリットは死ねない。

死ねばエネルギーが0になり、大きく弱体化してしまう。

言うなれば全レベルダウン。