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ワインレッドに染まった空。

血に似た色が頭上を染め上げていた。

不安になる色。不気味な雰囲気を醸し出している。

俺は呆気に取られた表情で唯それを見上げていた。

それは俺だけではなく、硝子も同じだ。

いや、今はそれ所じゃない。

「硝子、それよりも闇影としぇりるが先だ」

「そ、そうですね!」

先程風に飛ばされるのを目撃している。

海に落ちたなら風は多少防げるだろうが、闇影は泳げない。

そうなるとダメージを多く受けてしまうだろう。

スピリット的には可能な限り軽減してやりたい。

俺は船の周りだけでなく、遠くも眺める。

あの風じゃあどこまで飛ばされたのか皆目見当も付かない。

……二人とも、無事でいてくれよ。

「いました!」

「本当か!?」

硝子の指差した方向を眺めると浮かんでいる影が見えた。

俺は舵スキルを直に習得すると帆船を動かし始める。

今はエネルギーだの、マナだの言っている時じゃない。

「大丈夫か!」

「……ん。ヤミも一緒」

さすがに今まで舵を担当していたしぇりると比べれば拙い動きだが、船を近づける。

すると確かにしぇりるは闇影を抱えていた。

「しぇりるさん、掴まって下さい!」

「ヤミが先」

「わかりました」

硝子は言われるまま闇影を引き上げて、次にしぇりるに手を差し出した。

上がってきた二人は当然ながら海水で水浸しだ。

各言う俺達も風で飛んできた水で大分濡れている。

「闇影、エネルギーは大丈夫か?」

「……2000程受けたでござるが、ドレインでいつも皆よりもらっているでござる故、問題はござらん。それよりもしぇりる殿の介抱を」

2000ダメージというと正直、かなりのダメージだ。

スピリットは耐久的に問題ないが、しぇりるは晶人。最大HPが何あるかは不明だが、死んでいない所を見るにデスペナルティは避けられたのだろう。

「だいじょぶ。HPゲージが赤いだけ」

「それ大丈夫じゃないだろ」

問題ない事を主張するしぇりるを休ませて、俺は取り敢えず舵を第一へ向ける。

だが、自然とその視線は上空を眺めるだろう。

――ディメンションウェーブ。

俺達全員はその方角を眺めて、誰が言うでもなく確信した。

そう、第一都市の方向には未だ黒いヒビが自己主張していたのだった。

被害報告

――『絆†エクシード』さんに複数チャットが届きました。参加しますか?

第一都市へ向かっている途中。

奏姉さんと紡からチャットが送られてきた。

当然ながらディメンションウェーブの件だろう。

第一に着いたら俺の方から送ろうと考えていた所だったので舵を取りながら参加する。

「お兄ちゃん!? 大丈夫だった?」

「絆、怪我はない?」

突然二人の大きな声が響いた。

ゲームとはいえ、あれだけの事があったので気持ちは理解できる。

「ああ、海にいたんだが、硝子……仲間のおかげでダメージ一つない」

「よかった~……こっちはパーティーの二人がデスペナったよ」

「……お姉ちゃんの方では三人かな~」

「そんなにか?」

二人から落ち込んだ声で被害が報告される。

話によれば、デスペナルティを受けた奴は数えるのも嫌になる位いるそうだ。

しかし、予想よりも随分と被害が大きい。

紡が所属しているという事は、おそらく前線パーティーだ。

その中の二人が死んだとなると相当だろう。

もしかしたら俺達は海がクッションになって比較的にダメージが少なかったのかもしれない。いや……発生源が陸の方だったから離れていたのも大きいのか。

あくまで想像だが、あの突風を受けて壁にでもぶつかったら2000ダメージでは済まない気がする。そう考えると俺達は運が良かったのかもな。

「それでそっちは今どうなってるんだ? 俺達は海にいるから情報に疎くて」

「海? 海って海岸?」

「いや、沖の方」

「そんな所に行けるの? というかどうやっていくの?」

「RPGで海を移動する道具って言ったらそう何個も無いだろうよ」

「「なるほど!」」

それで納得する所がゲーマーの悲しさか。

船、あるいはそれに追随するアイテムを想像したに違いない。

「こっちは今、皆……沢山の人達で調査してる所だよ」

「調査?」

「ええ、ヒビの位置から第一から第二の間だと思うんだけど、何かイベントが発生しているんじゃないかな? というのが大多数の考えね~」

「なるほど」

よくよく考えてみればディメンションウェーブという、タイトルにもなっている物がどの様なイベントなのか俺達は何も知らない。

現状、赤い空と空間のヒビが関係しているのは確実だが、大多数参加型のイベントである可能性は十分考えられる。

参加するしないに問わず、情報を得ておくのは重要だろう。

「絆お兄ちゃん、第一の方に来れる?」

「今向かってる」

「じゃあ第一に着いたら広場で合流しましょう」

「わかった。じゃあ一度チャット切るな」

――チャットが終了しました。通常会話に戻ります。

チャットを終了して、硝子達に振り返ると三人がこっちを凝視していた。

いや……普通に電話、じゃなくてチャットしていただけだが。

「な、なんだ?」

「紡さんからお電話ですか?」

「ああ、姉さんと紡からだった」

「お姉さんもいるのですか」

「そういえば言ってなかったな。三人でやってるんだ」

「どうして別々に行動しているのでござるか?」

「そういえば、どうしてだろうな」

確かに姉妹三人でやっているのに何故か全員別行動だ。

言われてみれば三人でパーティーを組んでも良かったかもしれない。俺は最初から釣りをする事を公言していたので、二人が察してくれたんだろうけど。

「第一に着いたら一度合流する事になった」

「ご兄弟の安否ですから、とても大事な事だと思います」

「硝子殿の言う通りでござるな。この際絆殿だけでも先に第一に行くのはどうでござるか?」

「いや、二人とも大丈夫だったし、そんなに急いで合流する程でもないだろうよ」

これが創作物に良くあるデスゲームって訳でもあるまいし。

家族の贔屓目だが、あいつ等ゲームは俺よりも上手いからな。実際、ディメンションウェーブの直撃を受けて自分達は死んでないよっぽいオーラ出してたし。