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攻守一体のやや防御よりの武器で衣類系の回避系防具。

敵の攻撃を防ぎ、必要ならば避ける。

なるほど、効率重視殲滅系パーティーだと身の安全を守るのが重要になりそうだ。

「まあ勇者様もスピリットなんか入れて吸われない様にしろよ?」

「そんなのオレ達の勝手だ」

「じゃあな。おれ等も暇じゃないからな」

嫌みを告げると金髪達は元来た道を歩いていった。

暇じゃない割には随分と熱心だった気もするが、まあ良いだろう。

そうだな。奴等に一つ言うならば。

「お前等が――で助かったよ。俺の大事な仲間と出会う機会を作ってくれてさ」

比較的大きな声で言ったつもりだが、彼等は気付かず去っていった。

あれか、難聴属性持ちか。

もしかしたら何かの主人公かもしれないな、あいつ等。

「悪い。気分を害したなら謝る」

「まあネトゲやってれば、ああ言うのにも遭遇するだろうさ」

「そう言ってもらえると助かる」

「スピリットが弱いのも事実だしな」

実際他の種族と比べて戦闘能力はあまり高くない。

やり方しだいでは他種族を上回れる手段もあるが王道からは外れる。

しかし俺の言葉にロゼは。

「オレは違うと思う」

「そうなのか? 前線組の話なら参考になりそうだな」

「奴等にも言ったが、スピリットがいなかったら第二都市開放戦で一度負けてたはずなんだ。スピリットは雑魚戦では弱いかもしれねーけど、ボスには強いと思う」

「なるほど」

言われてみればリザードマンダークナイト戦でマイナス3000状態の闇影のドレインは結構なダメージを出していた。

あのダメージを、ゲームが始まって二週間で出すには他種族では難しいだろう。

更にはHP、というかエネルギーで計算しているので死に難い。

まあこの三週間でエネルギーを稼ぐのがどれだけ大変か知っている俺からすれば、雑魚戦でも程々に稼げていると思うんだ……硝子も海はかなり美味しいと言っていたし。

まあ良い。今は他にやるべき事がある。

「そんな事よりもディメンションウェーブだろう」

「そうだったな。絆はこれからどうするんだ?」

「紡にも会えたし、姉さんと会ったら、知り合いから情報収集だ」

硝子達に情報収集と約束している手前、ボーっとしている訳にもいかない。

アルト辺りは今頃どこかを走り回っているはず。

そのアルトから情報を得られれば現状を把握するのも容易い。

後は三日後に何かあると備えた場合、武器と防具も一新しておきたい。

その材料、海に生息するモンスターから得たアイテムが山ほどある。

以前ロミナに解体アイテムを優先的に売ると約束したので、それも果たせるだろう。

考えてもみれば、残り三日じゃ時間がいくらあっても足りないな。

迅速に、慎重に動きたい。

「じゃあ俺は俺で調べてみる。ロゼット。紡を……妹を頼んだ」

「お兄ちゃん、なんで彼氏に任せる風に言ったの!?」

「いや、お前だし」

「意味がわかんないよ!」

「ははは、紡は家の火力だし、任されるというより任してるぜ」

……さすがは戦争の申し子。

俺は紡の廃人っぷりを改めて噛み締めながら行動を開始したのだった。

戦闘準備

俺達の動向とは余所に世界は実にゆっくり時を刻んだ。

無論、三日後に備えて動く俺達にとっては、その緩やかな時間も無駄にはできない。

まず硝子達と合流を果たした俺は、それまでに得た情報を共有し、逐一連絡しながら様々な方面で現状把握に尽力した。

例に挙げられる物では、アルトから特設マップの場所を得たり、ロミナからパーティー全員の武器を作成してもらったり、防具職人を紹介してもらって装備を一新した。

海の装備な影響か青に近い色彩の防具が多く、鳥系も混ざったふわふわな感じも多い。

そして特設マップの調査もした。

他のパーティーなど情報は出尽くしていたが、このゲームは自分の目で見ておく事が重要だ。なので一度四人で調べた。

場所は第一から第二の間。

元は大きな壁のあった場所なのだが、そこがぱっかり開いて道になっていた。

ディメンションウェーブの影響で道が出来たらしい。

そのマップに入ると遠目ながら、黒い次元の裂け目を見る事ができる。

だが、そのマップには現状モンスター一匹存在しない。

その為、そこがどの様な形状をしたマップなのか調べる事は容易だった。

地形は緩やかな段差こそあるが比較的平地。

道は山を二つ挟んだ真ん中、右側、左側と三方向ある。

その三方向はヒビの方角でも道が集約している。

憶測だが、大規模攻防戦になった場合、敵が三方向から来る、と思われる。

逆にプレイヤーが三方向から攻めるというのも無難な線か。

そこが特設マップである理由は他にもある。

まずマップ会話が存在する。

基本的にはチャットを除けば現実と同様、どんなに大きな声を出しても近くの人にしか声は届かない。

だが、ここではその人物がパーティーリーダーであればリーダー同士で会話ができる。

そんな理由もあって現在パーティーの限界人数である10人で組む為にメンバー募集などが第一、第二都市の各所で騒がれている。

ともあれ、各都市を見るに潜在的にディメンションウェーブに参加を決めている奴は相当数いる。特に現在第一、第二では武器防具、アイテムなどの売買が盛んだ。

アルトもロミナも大変そうにしていた。

その中で様々な情報を与えてくれた二人には感謝の言葉が尽きない。

ただ具体的な参加人数が不透明な事を含め、沢山の人が参加する戦場は混迷を極める事が推測できる。

中には作戦だの、計略だの話していた前線組もいたが、人数的に統率は不可能だろう。

というのもマップその物が相当広い。

プレイヤー人口を具体的に把握している訳ではないので迂闊な事は言えないが、1000人位なら簡単に納まってしまう程度には広かった。

故に調査にも限界はある。

こうして紡や姉さんに解体アイテムを譲ったり、アルトやロミナに売ったりする内に二日目が終わっていた。

「今日が三日目だが、相変わらず変化なしか」

装備などの準備を一応に終えた俺達は特設マップに来ていた。

辺りは大地の表面に絨毯の様な雪が積もり、空と同じ赤い雲が上空にあった。

次元の裂け目の黒いヒビは、この三日間まるで変化がない。