雪乃さんには、何もあげないから財布も身分証明書も持たせないわ無一文のまま、決死の覚悟であたしたちに付いて来なさいね
もし、あたしたちから逃げたら今まで撮った雪乃さんの恥ずかしい映像は、全てインターネット上に流出することになりますからね昨日は、白坂創介のエロ動画が流出して今日は、娘の卑猥な画像となったらマスコミもネットの人たちも、また大騒ぎになるでしょうね
雪乃は酷く沈んだ顔をしている
もう、文句を言う気力も残っていないのだろう
ミナホ姉さんは、そんな雪乃を嘲笑いながらオレに腕時計を差し出す
これ吉田くんが付けていて雪乃さんの腕にも同じ物が付けてあるから10分に一回、お互いの腕時計から微弱な電波を発信して、相手の位置を確認するわもし、20分以上、電波が届かない場合は大きな音でアラームが鳴るから
雪乃が、オレたちから逃げ出したらすぐに判る
もし雪乃さんの姿が見えなくなって、時計のアラームが鳴ったら吉田くんは、すぐにあたしに報告しなさいその段階で、自動的に雪乃さんは逃亡したと見なして、全てのファイルをネットとマスコミに流すわ
ミナホ姉さんが、クククと笑った
つまりオレと雪乃は、ずっとお互いの電波の届く距離にいなくてはならない
まあ、微弱な電波って言っても、同じ建物の中に居るぐらいなら電波は届くわよでも、片方が地下とかだとダメかもね吉田くん腕時計の赤いのボタンを押してみて
オレは、リューズの脇のボタンを押す
ピピッ10メートル以内に、感知しました
オレと雪乃の腕時計が、ほぼ同時にそんなメッセージを発する
もし、相手の居場所が判らなくなったら、そのボタンを押しなさいだいたいの距離は教えてくれるから
こうなると雪乃は、絶対に、オレの腕時計に電波が届く距離に居なくてはならなくなる
黄色と黒の工事現場カラーのドレスを着た雪乃が、絶望の眼でオレを見ていた
さて、そろそろ行こうかみんな、トイレとか平気
マルゴさんが、やって来る
マルゴさんは、黒いスーツ姿にサングラスを掛けていた
遠目には、男の警護係しか見えない
いやわざと、そうしているんだ
これから行く国立劇場では日本舞踊紺碧流の家元の教室の発表会が行われる
発表会で踊るのはみすずを始め、みんな日本有数の名家の子女たちばかりだ
子供たちの発表を見ようと、政財界の名だたる大物たちが会場に訪れる
当然各家からの護衛が集結する
ならば、マルゴさんは護衛の中に溶け込んでしまおうという考えなんだろう
いや、マルゴさんだけでない
オレたちの中で、黒い服を着ているのはミナホ姉さんとマルゴさんと寧さんの3人だけ
ミナホ姉さんも寧さんも一人だけでは、黒が目立つけれど、3人並べば一つのチームに見える
マルゴさんがボディ・ガードで、寧さんは子供のお守り役、ミナホ姉さんはマネージメント担当の事務方
3人とも、どこかの名家に雇われていてもおかしくない風格があった
これに、ワインレッドのスーツ姿の美人秘書風の克子姉が加わるとますます超一流の名家に雇用されている一流の使用人たちという感じがする
問題なのはこの一流の人たちと一緒に会場に行く、オレたち年少組が、全然名家の子供っぽくないことだろう
雪乃が地味顔+工事現場ドレスではなく、精一杯お洒落したとしてもミナホ姉さん+克子姉+マルゴさん+寧さんのチームにかしずかれるのに相応しいエレガントさは出せないだろう
オレはただの貧乏高校生だし
メグは美人だけど野に咲く可憐な花だ
今日のマナは可愛いロリビッチだし
美智は美少女だけど、お嬢様のオーラは出していないむしろ、殺気が出ている
この4人に囲まれて絵になるのはみすずぐらいだろうな
みすずには、お姫様らしい風格があるから
では、出発しましょう
これが、最後の勝負になるわ今日の夜で、全てが決まるだから、全員で討って出るのごめんなさいね今のあたしたちには、攻撃と防御に人を分ける余裕は無いから
まずはみすずの発表会へ
それから香月氏の指定したホテルで、白坂家との最終決着
オレにとっては、香月閣下との対決もある
そしてそのホテルで、シザーリオ・ヴァイオラを迎え撃つ
だから、みんな揃って元気な姿でこの部屋に帰ってきましょうね
ミナホ姉さんの言葉に、雪乃以外の全員が頷く
背水の陣を敷いてオレたちは出発する
ここに再び戻って来る時には、オレたちの敵は完全に消滅していなければならない
シザーリオ・ヴァイオラも白坂家も
あたしたちが退出したら、この部屋にはロックを掛けるよミナホの生体認証が無い限り、二度と開かないからねミナホ絶対に生き残るんだよ生体認証は、生きているミナホじゃないと作動しないからね
マルゴさんが、そうミナホ姉さんに言った
判っているわあなたたたちを残したままでは、死ねないものね
弓槻御名穂はオレたち全員の姉であり、母でもある
地下通路を通って教職員用の駐車場の隠しガレージへ
一号車が、あたしの青いマセラッティで、2号車がミナホの黒いベンツ3号車は克子さんの運転する白いバンだ
学校から脱出の指示は、全てマルゴさんがする
今日の白いバンには、丸子舞台衣装という文字がマグネットで貼られている
白いバンを持って行くのは、不測の事態の時のために、いつもより多めに装備を用意しているからだろう
常に1号車と3号車で、2号車を囲んで走るから信号は必ず、3台まとめて走り抜けるいいね
マルゴさんが、克子姉にそう言う
ええ、了解したわ
こっちは、ミナホと寧を敵に獲られたら負けだからねだから、寧は2号車工藤さんは、直近のガードだから当然同じく2号車メグちゃんとマナちゃんもね
ベンツは運転席に、ミナホ姉さん助手席に、美智後部座席に、寧さん、メグとマナこれで定員だ
吉田くんは、あたしと一緒に1号車雪乃さんは、克子さんと3号車だ
オレと別れることになって、早速、雪乃の顔が曇る
さあ、乗りなさい
克子姉が、冷たい眼で雪乃に指示した
雪乃は、暗い顔でバンに乗り込む
すぐに克子姉が、雪乃の手に手錠をはめた
バンの中の鋼管のバーに繋ぐ
あたし、運転中にゴチャゴチャ言われるのは嫌いだから静かにしていてねこれ、何だか知っているわよね
克子姉は、雪乃にスタンガンを見せた
わ、判っていますから
この数日で何度か電撃も体験している雪乃は、すぐに大人しくなった
さあ、吉田くんはこっちだよ
マルゴさんが、雪乃を見ていたオレに優しく声を掛けてくれた
じゃあ、お兄ちゃん、また後でねっ