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マナが、窓から顔を出して、明るくオレにそう言った

ヨシくん、気を付けてね

大丈夫だよ別々の車でも、三台一緒に行動するんだから

オレはメグに、そう言ってやった

美智みんなのことを頼むよ

オレは、マセラッティの助手席に座る

ごめんね、吉田くん

シートベルトをしながら、マルゴさんが言った

後ろのベンツとバンは、防弾装備になっているんだけどこの車は、車体を重くして機動性を殺すわけにはいかないから銃撃されたら、防ぎようがないんだよ

そうか後ろの2台は、頑丈なんだ

仕方ありませんよその時は、その時です

吉田くんは、周囲の監視を頼むよ特に、信号待ちなんかの時に歩行者の振りをして近付いて来るかもしれないから、注意して

まあ、工藤さんのお父さんたちもガードに加わってくれると思うけどね

マルゴさんは、革の手袋をはめる

さて

マセラッティのエンジンが、軽やかに始動した

すぐに、後方の2台もエンジンを掛ける

マルゴさんの無線操作で隠しガレージのシャッターが開く

五月の陽光が、オレたちに降り注ぐ

OKLet’s go

三台の車が外へ

学校の裏門の外で工藤父がオレたちを出迎えてくれた

トニーさんの運転するタイタンボーイとノーマさんの運転する、黄色いプリウス

そして、工藤父はベスパに乗っている

オレたちが学校の敷地から出ると何も言わずにノーマさんのプリウスが、1号車のマセラッティの前を走り始めた

ノーマさんが先導するんだな

国立劇場へ向かうルートは、工藤父に一任しているからオレたちは、ノーマさんのプリウスの後をひたすら追い掛けることになる

ノーマさんは決してスピードを早めることなく、早め早めにウインカーを出して、オレたちに曲がる方向を示してくれた

工藤父のベスパは、2号車のベンツの脇にぴったりと付いていてくれた

これなら、信号待ちで不審者が近付いてきてもすぐに対処できる

タイタンボーイは、3号車のバンの後ろを追っている後ろから突然攻撃してくる車があっても、タイタンボーイとバンの2台の防弾車輌があれば、どうにかなるだろう

オレたちは、車5台+ベスパ1台で固まって、都心に向かって走っていく

もちろん、今見えているのは直接のガード車輌であってオレたちの車列に付かず離れずしながら、ネコさんら工藤父の配下の人たちの車も追って来てくれているのだろう

敵が路上で襲撃してくる可能性ってどれくらいあるんです

この場合は、可能性なんて考えたって意味がないさ襲撃が有るか無いかは、敵次第だからね

マルゴさんは、笑ってそう言った

ただ、今は少しでも早く国立劇場に着くことだけを祈っているよ国立劇場に近付けば近付くほど敵は襲撃が難しくなるからね

国立劇場ってどこにあるのか、吉田くん知っている

皇居のお堀端だよ隣が最高裁判所だ日本の中枢国会議事堂や霞ヶ関の官庁街にも近い

ああそれだけに、警備が厳重なんだ

それにさっき聞いた情報だと、今日の紺碧流の発表会には来日中のアメリカの商務省の事務次官も来るそうだよ

大使

次官のお嬢さんが、アメリカで日本舞踊を習っているそうなんだその先生が紺碧流の家元のお弟子さんなんだそうだよだから、ご家族で表敬訪問にいらっしゃるというのが建前で

建前

実際は、香月さんや日本の政財界の重鎮とこっそり歓談したいんだよ今日、集まる人たちなら、日米経済サミットが開ける顔ぶれだからね

国立劇場の廻りは、警察から公安関係者、さらにはアメリカのシークレット・サービスや米軍まで居るはずだよ

それに名家の護衛役が加わる

シザーリオ・ヴァイオラのことは

当然、香月セキュリティ・サービスから公安に通報が行っているよヴァイオラは、アメリカの犯罪者だからねついで、あたしがヴァイオラは、アメリカの事務次官を暗殺する可能性があるという偽情報も流しておいたから

来日中のアメリカ政府の高官が殺されたら日本の面目は丸潰れだアメリカから警護に付いて来ている連中もねみんな、必死でヴァイオラを阻止してくれると思うよ

マルゴさんの口元は笑っているけれど

眼は、真剣なままだった

だから正直、国立劇場まで行ってしまえば、そんなに心配はしていないよ決戦は、やっぱり夜のホテルになるだろうね

香月家の所有する都心の一流ホテル

あそこでは、香月セキュリティ・サービスしか守り手はいないから

マルゴさんの言うとおり

都心に近付くにつれ、警察のパトカーをよく見掛ける

あちこちで、検問もしているらしい

オレたちの車列も、警察に止められた

工藤父が若い警官とちょっとモメたけれど、どうにか、通り抜けて

何とか、5台の車+ベスパは国立劇場の前へ到着する

劇場の入り口ゲートにも当然、検問が行われている

まずは、ノーマさんが検問の係と会話していた

どうにか、ここまでは無事に来れたね

マルゴさんが、ホッと溜息を吐く

やはり、相当緊張していたんだ

あたしは、まだまだ修行が足りないね

そんなことを言う

恭子さんなら、こんな時にはジョークの一つも言って場を和ませるんだろうけれど今のあたしには何も思い付かないよ

マルゴさんは普段から、冗談なんて言わないじゃないですか

恭子さんて今、オーストラリアで白坂創介を監禁しているんですよね

恭子・ドスノメッキーさんは、マルゴさんの師匠で黒い森の護衛役だ

今はミナホ姉さんの命を受けて、白坂創介の身柄を拘束している

いや、多分、もう日本に向かって来ていると思うよただ、恭子さんの動きは本当に読めないから

あたしには想像もできなかった様な、行動を平然とするからあの人に比べたら、あたしは駆け出しの小娘だよ本当に、そう思う今回も、きっとトンデモない方法で帰って来ると思うよ

オーストラリアの警察に釈放されたとはいえ白坂創介は、現在も行方不明だ

まともに飛行機に乗って、帰国するとは到底思えないし

どうやって、戻って来るつもりなんだろう

さ、あたしたちの番だ

ノーマさんのプリウスが検問を終えて、国立劇場の駐車場へ入って行く

続いて、オレたちの車が、検問ゲートへ

検問係は、香月セキュリティ・サービスの制服を着ていた

会場警備は、香月セキュリティ・サービスが中心になってやっているらしい

お前たちも、警護課の人間か

ノーマさんの車の次だから30歳過ぎの検問係は、そう思ったらしい

ひどくぞんざいな、ナメた口調でオレたちにそう言った

黒い森

マルゴさんは、静かにそう答えた

検問係は、意味が判らないっていう顔をする