みすずと渚が顔を見合わせる
それから、二人で美智を見て
馬鹿ね
渚が、オレにキスをする
そうです旦那様は、そのままドシッとしていて下さればいいんです
みすずが、オレにキスをする
わたくしたちを信じて下さい
美智もオレにキスをした
瑠璃子が言った
みなさん本当に信頼なさっていてそれが、本物の家族なんですね
寂しそうに瑠璃子が言う
だったら、瑠璃子さんもこっちにいらっしゃい
そうよあなたも黒森の家族になりましょうっ
な、渚
あの、渚黒森の家族って
オレは渚に囁く
オレは吉田だ
今は黒森公之助の偽名を使っているけれど
黒森ではない
あなたも、そろそろ気付きなさい
渚がオレの耳にそっと囁く
あなたはもう黒森の人間なのよ
暑さが止みませんね
今までやった、一番暑かったバイト
1.花火大会の警備員
なぜか、午前中に現地に集合
午後7時からの花火大会にやって来るお客さんが会場の周りに車を路駐しないように、見張れと命じられる
昼過ぎから20メートルおき位に、一人ずつ、警備員が配置される
灼熱の中絶対に持ち場を離れるな住人以外の車は停めさせるなとの指示
一人、また一人と、熱中症で倒れていく警備員たち
持ち場に自販機のある人間は、缶ジュースも買えるが
何も無い民家に配置された私たちは、水分補給もできない
倒れた警備員の代員もいないので周りの警備員の持ち場が拡がる
そのまま7時まで、頑張る
地獄というのは、こういう場所なんだろうなと思った
2.チョコレート工場の煮釜係
チョコレート工場で、半生チョコレートの中身を作れと言われる
最初は2人体勢だったのに8月の猛暑の中で、さらにグツグツと大釜で煮る係だから暑すぎて
私のコンビになるバイトは、どんどん逃げて行く
ほぼ全員次の日から、来なくなる
代わりに来た正社員さん、こんな暑いのやってやれっかと、意味不明なことを言っていなくなった
気が付いたら半月後には、一人きりで煮ていた
こっちも初めてなので完成品がどんなものかよく判らないのに作らされる
材料を大釜に数十キロ単位でブチこんで、煮て、途中で薬品を足したりする
プリント一枚渡されて材料や薬剤の量も、バイトの私が自分で量って入れる
最後は、材料を倉庫に取りに行くのから、ポンプでコンテナに移し替えて運ぶのまで一人でやっていた
最初は1日限りで逃げたやつを根性ねえなあと思っていたが
ある日、パートの叔母さんがこんな非人間的な工場、あたし初めてよとブチ切れて辞めていく声を聞いて
ああ、そうか初日で逃げる方が、正しい対応なんだって気付いた
正社員も誰もいなくてバイト一人に作らせてるって異常だもんなあ
心が折れて、私も辞めました
以来その会社のチョコレートは死んでも買いません
ちなみに、3勤制でしたので3チームで作っていたのですがバイトのところは何故か一人体勢で、正社員だけ二人でやっている
ある日、交代したらなぜかすでに計り終わった薬剤が、ボールに入れられて残っていた
もしかしてと、思って、正社員に報告
案の定前のチームが入れ忘れていた
で正社員の対応
入れ忘れた完成品を煮釜に戻して、適当に薬剤を混ぜて終わり
絶対に、他の製品と味が違うと思う
本当にいい加減なところでしたね
この2つが、一番ブラックな思い出です
暑いなあ
253.ショウ→ウマ
あなた自身が本当の家族に捨てられた男の子でしょ
瑠璃子たちに聞こえるように少し大きな声で、渚が言った
だから、あたしたち家族になったのよ
弓槻いや、黒森御名穂に拾われた子供だ
だからあなたは、あたしたちに目一杯甘えなさい
渚の豊満な肉体がオレを抱き締める
そうです旦那様は、もっともっとあたしたちに甘えていいんですよ
オレはみんなに愛されるのに相応しい男なのかな
オレには自信が無い
急に不安が、オレを襲う
もう、馬鹿、馬鹿、馬鹿
渚がオレに言う
あなたは、いつも考え過ぎなのよ
オレ考えすぎ
まずあたしたちは、あなたが必要なの寂しくなったり、心が弱くなった時に、あなたに側に居て欲しいと思っているそれは判るわね
渚が、先生モードでオレに言う
うんもちろん
それは判っている
あたしがあなたを欲している時には、いつでも来てくれるわよね抱いて欲しい時には、いつでもセックスしてくれるわよね
うんそれは絶対にオレは渚が望むことなら、何でもするよ
渚がニッコリと微笑む
じゃああなたも、寂しくなったら思いっきり、あたしに甘えて
あたしのお願い聞いてくれるわよね
大人の情熱的なキス
あたしはあなたに縋りたい時ばかりじゃないのあなたに、たっぷり甘えて欲しい時もあるのよ
旦那様みすずもです
カーペットの上で全裸のまま座り込んでいる、みすずがオレを見上げて言う
みすずも甘えて欲しいです
でも、オレそんなのどうしたらいいのか、判らないよ
女に甘えるってどうしたらいいんだ
あら、簡単よもっと素直になってくれればいいのよっ
素直に
あたしのこと、抱き締めたくなったらいつでも、どこでも抱き締めてキスしたくなったら、その瞬間にキスして遠慮はいらないわあたしはあなたの女なんだから
そうですもっと、もっと心の壁を取り払って下さい旦那様って、まだまだあたしたちに遠慮なさっていらっしゃいますよね
二人がオレに言う
だって、それは
だってなあに
渚がオレに詰め寄る
だって、みんなオレにはもったいないくらい、綺麗で可愛くて優しくてオレなんかより、ずっとずっと頭だって良い人たちだから
オレの中でずっと溜め込んできた感情が、溢れる
オレこそみんなには、相応しく無い男なんじゃないかっていつもいつも思っているんだよオレなんかが、みんなの役に本当に立つのかなって
心の壁が壊れる
恐怖がオレを襲う
オレ本当にみんなを幸せにできるんだろうか
オレには確信が無い
オレメグやマナのために、生活費を稼がないといけないしでも、オレ、本当にちゃんとできるのかなオレみたいな男の働きで、幸せに暮らせるぐらい稼げるのかな
心の中の心配が一気に噴き出す
オレ寧さんを心の暗闇から救ってあげられるのかなミナホ姉さんの役に立っているのかなマルゴさんの足手まといになっているだけなんじゃないかな
それだけじゃない
オレメグが胸を張れる彼氏になれるのかなマナの良いお兄ちゃんになれるのかな寧さんの良い弟に克子姉の弟に渚の良い夫に美智の良い主に真緒ちゃんの良いパパになれるのかな