Выбрать главу

みすずが従妹に言う

でも違いましたあたしの人生は、香月ではなく黒森の家族のもとにあります

瑠璃子さんは、ジッとみすずの話を聞いている

閣下は、打ちのめされたように動かない

もちろんそれで、あたしが香月家に生まれた呪縛から、逃れられるわけではありませんしかしこの家族がいるから、あたしには運命と闘う力が湧いてくるんです

瑠璃子さんも、こっちにいらっしゃい旦那様とあたしとたくさんの姉妹があなたを待っていますよ家族の絆は、血よりも濃いですあたしたち家族は、絶対にあなたを見捨てません裏切りませんどんなことがあっても、助け合いますもう、一人じゃないのよ

みすずの必死の勧誘に瑠璃子は

で、でもわたくしには美子がいます

美子さんは悲しそうな顔で、瑠璃子を見ていた

美子さんは、これから幾らでも自由になれます美子さんは香月の血筋の方では無いのですから

ハッとする瑠璃子

美子さんは瑠璃子さんが自由にしてさえあげれば、本当に好きな方と恋に落ちて、普通の結婚をすることができますあたしたちとは、違うのよ

美子さんはあくまでも瑠璃子のお付きだ

香月の家の呪縛には縛られない

瑠璃子がお付きの役から解き放てば美子さんは、自由な恋愛をすることができる

でもわたくしは、ずっと瑠璃子さんのお側に居たいのです

美子さんが苦しそうに、呟く

美子さんのお気持ちは判るわでも、現実にはもし、瑠璃子さんがどこかの名家に嫁ぐことになったら、あなたたちは別れないといけないわ

香月家では無い家の嫁になるとしたら

その家は、お付きの美子さんまでは引き取らないだろう

瑠璃子と香月家の連絡を遮断するために

瑠璃子の夫となる男は、瑠璃子を自分の家の中に閉じ込めようとするだろうから

瑠璃子から自家の情報が、香月家に流れることを恐れて

また、瑠璃子が夫以外の人間を頼れない様に追い込んで、自分に依存させようとするだろう

後々の香月家との駆け引きに、妻である瑠璃子を手駒として利用できるように

もちろん瑠璃子さんとの繋がりだけを狙って、美子さんに求婚する馬鹿な男もいるでしょうしかし、美子さんには自分の人生を自分で決めることができますいいえ瑠璃子さんは、美子さんが自由に自分の人生を生きられるようにしてあげないといけないわ

瑠璃子は美子さんを見る

おっしゃる通りですわたくしは、いずれ美子を解放してあげないといけないのですね

瑠璃子様わたくしは

美子さんの言葉を、瑠璃子は遮る

美子あなたの忠節には、いつも感謝していますでも、あなたは香月の血筋ではないのだからあたしの宿命に付き合って、あなたまで不幸になることはないわわたくしは、そんなことは望んではおりません

瑠璃子の言葉に美子さんは黙り込む

あたしたちはただ生きているだけで、香月家と他の名家との力関係に利用されますだから生まれてからずっと、あたしたちは親友を作ることができませんでした男の人とは喋ることさえ許されなかった

はいそれが、香月の家の娘の宿命です

でも、そのままではあたしたちは幸せにはなれません

だからあたしは、黒森の家族になりました今のあたしは幸せですあたしには愛している人がいます信頼のできる家族がいます姉や妹たちが、たくさんみんなで幸せになります幸せになろうって、心を一つにしている家族なんです

あたしは、みすずお姉様が羨ましいですわ

瑠璃子は言った

お姉様の勇気と黒森様という素晴らしい男性に出遭われた幸運が家族と呼べる優しい人たちがいらっしゃることが本当に羨ましい

しかし瑠璃子は拒絶する

わたくしは香月家の嫡男の娘です本家の血筋の娘ですお姉様の様には、生きられません

瑠璃子

わたくしはすでにこの身を香月の家に捧げていますお祖父様のおっしゃる様に生きていきますお祖父様の決められた方に嫁いで結婚後は、夫の言う通りに生きていきます

瑠璃子さんそれでは、あなたは人形ではありませんか

みすずが叫ぶ

はい人形です人形の人生で構いません

瑠璃子は悲しげに微笑む

そんな人形の人生の中で美子やお姉様が、つかの間でも人間らしい思いをさせて下さいました感謝していますこの思い出だけで瑠璃子は、生きていけます

瑠璃子お前は

どこまでも香月家に人生を捧げる気なのか

人間的な感情を全て投げ捨ててまで

これでいいのシゲちゃん

香月の家って、そんなに大切なものなの家って言ってるくせにあなたたちには家族がいないじゃない

そうだ香月家は、普通の家とは違う巨大で複雑な人間関係のシステムがそこにはあるが私たちは家族ではない血が繋がっているからといって、それだけで心を許すことは決してできないいつ、裏切られるか判らない関係だ香月の家を束ねているものは利であって血縁者の信頼ではない

暗い眼で

だからシゲちゃんは、みすずと瑠璃子さんを息子さんたちから取り上げたんでしょ自分の家族にするために

渚の言葉に閣下の眼が大きく開く

子供の頃からずっと香月家の当主として、孤独だったんでしょシゲちゃんは一緒に笑い合う仲間が、一人もいなかったんでしょ心を許せる相手がだから、シゲちゃんは孫娘たちとお友達になりたかったのね

部屋の中の全員が閣下に注目する

長男を亡くした時に手塩に掛けて育ててきた後継者を失った時何もかもが虚しくなったんだ

閣下が呟く

なるほど渚くんの言う通りかもしれないな私は、みすずと瑠璃子に家族を求めていたのかもしれないな

フフッと笑う閣下

そうかだから、私は男の子ではなく、女の子を希望したのか男の子ならまた後継者作りのやり直しだ私の心は安まらない他の男たちから隔離したのも二人を私だけの家族にしたかったからかふふふ、ふはははは

閣下が、自分を笑う

何という愚かなことを香月重孝ともあろう男が、何と器の小さい

シゲちゃんの人間らしい一面が見えて先生は、とっても嬉しいわよ

そして渚は、切り札のカードを切る

ねシゲちゃんあたしたちの家族にならない

部屋の空気が強ばる

黒森の家族のお祖父さんにならない今なら、可愛い孫娘たちが揃っているわよ

渚を見る閣下

私を籠絡するつもりかね

シゲちゃんあたしとあなたの関係で、籠絡も何も無いでしょ先生、シゲちゃんのお尻の穴だって見たことがあるんだから

言っておきますけれど今、募集しているのは家族のお祖父さん役だけよ旦那様の役はもう、彼って決まっているんだから

閣下がジロッとオレを見る

でも、仕方無いでしょシゲちゃんはもう枯れちゃって男はやれないんだから実際、彼は大変なのよあたしたち全員の相手をしないといけないんだから