タンクの栓を開けるのを忘れてタンクの縁から、トバーッと溶けたチョコが2トンぐらい溢れたとか
途中の機械からチョコが漏れて、床中チョコ塗れとか
その度に全身チョコまみれになって掃除する
本当に作業員全員で、茶色くなる
作業着が真っ茶色になる
もうバケツとか、ちりとりとかで、チョコをかき集めて捨てる
甘い匂いが、身体から取れなくなる
タンクに余ったチョコは、セメント袋に入れて捨てる
私たちが袋を持っているところに、直接溶けたチョコを落としていく
チョコは結構重い
で、熱いチョコでたぽたぽになった袋を冷蔵室で冷やして固まったら捨てる
運ぶ途中で転ぶとまたチョコの掃除大会になる
賞味期限の切れていないチョコは、他のチョコにブチ込んだりする
だいたい工場プラントで、他のブロックからチョコがパイプで圧送されて来たりする時は
プラントの中のパイプなんて、一々洗えないので最初は、パイプに残っている前のチョコと混じったチョコが出てくる
それを全部捨ててチョコの色が完全に変わるのを確認して、次のチョコの作成に入る
もう無駄だらけ
毎回、トン単位でチョコ捨てさせられていたもんなあ
254.瑠璃子、心を開く
わたくしはお祖父様が、お望みになることに従うだけです
瑠璃子はそう答えた
全身が緊張している
心からの言葉ではない
うん、良い答えねこれであなたもあたしたちの家族よ
と渚は言うけれど
瑠璃子私はもう年だこの先、そう長くは無い
閣下が、瑠璃子に言う
お祖父様、何をおっしゃるんです
本当のことだよ82歳というのは、明日倒れてもおかしくない年齢だ
閣下は立ち上がり、瑠璃子のところまで歩いてくる
お前とみすず私の我が儘で、人生をねじ曲げてしまった許しておくれ
そんなこと、おっしゃらないで下さい
悲しそうな顔で、うつむく瑠璃子
私が死んだ後の、お前たちの行く末だけが心配だったしかし御名穂くんたちに託すというのは、良い選択だと思う彼女たちは、身内を命懸けで守るきっと、お前たちのことも守ってくれる
ふふふと、閣下は笑う
思えば私が黒森の屋敷へ行くことを楽しんでいたのも、彼女たちにもてなされている間は香月の当主であることを忘れられたからだ渚くんも克子くんも数十年前に初めて接した黒森の女もみんな、私をただの一人のエロジジィとして受け入れてくれた
それが初代・黒森公之助の遺訓でございますから
渚が、答える
ミナホ姉さんの祖父高級娼館黒森楼の創設者、黒森公之助
あたしたちは、お屋敷にいらっしゃったお客様には絶対に差を付けませんどんな身分の方でも、お屋敷にいらっしゃえば等しく、あたしたちのお客様です
うむ公之助翁の作られた世界は、素晴らしかったあの暗愚な二代目と白坂のところの小僧が全てを破壊してしまったが御名穂くんは、よく再生してくれた
それも香月様のお助けがあったからですわ
白坂創介がミナホ姉さんの父親をそそのかして黒森楼にクーデターを起こし、黒森公之助を追放した
後は、やりたい放題でお屋敷の中は、メチャクチャになった
ほとんどの昔からの顧客はお屋敷に来なくなり白坂創介の変態仲間だけが、たむろする救いようのない時期がしばらく続いたらしい
それを救ったのが閣下の介入だった
閣下が、追い払われていた黒森公之助時代の番頭、森下さんを呼び戻し、女たちの警護役兼監査役として恭子・ドスノメッキーさんを送り込みそして、黒森御名穂を運営者の一人に抜擢した
以後お屋敷は白坂創介の変態路線と、ミナホ姉さんの高級娼館復古路線の2本柱で運営されてきた
しかしまさか、自分の孫たちを託すことになるとは思わなかったよ
閣下は、自嘲気味に笑う
ご安心下さいみすず様も瑠璃子様も、屋敷の女には決して致しませんからこの子たちは、彼の女ですあたしたちの妹ですわ
渚が閣下にみすずたちを娼婦にしないことを誓う
信用しよう君たちはみな望んで現在の運命を受け入れた女たちではないものな
はい運命の巡り合わせで苛酷な状況に陥りましたがでも、幸せになります彼と一緒に
みすずが、オレの手を握って、ニコッと微笑む
美智はオレが長い黒髪を撫でてやっている
この小僧は黒森の礎石か
はいあたしたちの幸せの起点であり終着点ですわ
閣下と渚の言葉はオレには、よく判らない
暗い顔の瑠璃子が椅子から降りて、床に手を付く
ふつつか者でございますがどうぞ、よろしくお願い致します
声と手が震えている
祖父に売られた様な心境なんだろう
いきなり黒森の家族になって、オレの女になれって宣告されたんだから
瑠璃子
はい黒森様
瑠璃子が怯えた表情で、顔を上げる
黒森様じゃないお兄様だろオレは、お前のお兄様だ
瑠璃子はジッとオレを見上げている
そうお望みでしたらその様にお呼び致します
そういうことじゃない
オレは、お前を女奴隷みたいにしたいわけじゃないんだよっ
ちょっと怒りを込めてオレは瑠璃子に言った
は、はい申し訳ございませんお兄様
瑠璃子はすっかり、心を閉ざしている
このままじゃあいけない
瑠璃子立て
オレは命じた
おそるおそる立つ瑠璃子
15歳の少女はまだ小柄だ
とっても色白の綺麗な肌をしている
でも、つるぺたの美智と違って出るところは出ている
美智は、日本人形みたいな美少女だけれど
瑠璃子は綺麗だな
オレは、心の中に浮かんだ言葉をそのままぶつけることにした
瑠璃子は巫女さんみたいなんだな神聖な神々しい感じの美少女なんだ
うん瑠璃子の純真無垢さは
聖域の巫女の美しさに通じている
わたくし美少女などではございません
瑠璃子は謙遜して、そう言う
オレの眼には美少女にしか見えないよ本当に綺麗だ
瑠璃子が頬を赤く染める
抱き締めるよ
瑠璃子が答える前にオレは、彼女の身体を抱く
ギッと身体を強ばらせる瑠璃子
オレが怖いのか
怖いですわ
瑠璃子が小声で言った
大丈夫だみすずも渚も見ているお前のお祖父さんもいるし美子さんもいる美智もいる無茶なことはしないよ
オレはそう言って抱き締めたまま、瑠璃子の黒髪を撫でる
さらさらとした艶やかな髪から緊張している背中を撫でていく
瑠璃子はまず、オレに抱き締められることになれないとな
瑠璃子が綺麗だから可愛いから、抱き締めたくなっちゃうんだぞ
抱き締めて、髪と背中を撫でる以外はしない
今は
キスしたり胸やお尻を触ると、きっと酷い拒絶反応が出る