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今日、発表会に出るお弟子さんは、全部で50人を超えるからね

えそんなに出るんですか

そりゃあ、一番下は6歳からだからね小さい子たちは、何人か合同で踊ることになっているらしいし

そうか家元の教室って言っても、小学生のお弟子さんとかも居るんだよな

規模は大きくても、日舞教室であることに変わりは無いんだし

ただみんな、政財界の大物の子供たちっていうだけで

だから本番前の舞台稽古に、時間が掛かるんだよ

舞台稽古

本番通りに、舞台の上で踊るんだけど音響とか照明の都合もあるよねだから、何度か繰り返すことになるし小さい子は、こんな大きな舞台で踊るのは初めてだろうから、会場に慣れる必要もある教室のお弟子さんは、プロの舞踊家じゃないんだから余裕を持ってスケジュールを組むと、それだけ時間が掛かるんだろう50人以上もいるんだし

本番の発表会は長くても3時間くらいだろう

なのに、舞台稽古はその倍以上の時間が、掛かるんだ

でもちろん、お弟子さんたちはみんな良家の子女なんだから、一人では劇場に来ていないよね

みんな、それぞれの保護者や護衛も一緒に来ている

だからあたしたちが紛れ込んでも、誰も変だとは思わないよ

ミナホ姉さん、克子姉、マルゴさん、寧さんは、どこかの家から派遣された人たちに見えるだろうし

メグ・マナ・美智はお弟子さんのお友達に見えるだろう

問題はオレと雪乃か

オレ何に見えます

正直に、尋ねてみた

オレは、護衛とかにはとても見えないだろうし

かといって、名家の人たちのお友達っていう柄でもない

吉田くんはみすずさんの何なの

オレは、みすずの男だ

胸を張って堂々と会場の中を歩くんだねそうでないと、みすずさんに失礼だよ

廻りの人たちがどう思うかなんて、関係無い

オレとみすずの間には、絆がある

それだけでいい

まあ、君が思っている以上に、いいとこの坊ちゃんぽい感じには仕上がっているから安心して

マルゴさんがオレの姿を見てそう言った

その背広仕立てもいいし、克子さんの直しも完璧だよ靴も用意して貰ったんでしょ

この背広はミナホ姉さんのお祖父さんの物を、克子姉がオレのサイズに直してくれた

革靴は、Yシャツなんかと一緒に、いつの間にか用意してくれていた

克子姉には、感謝している

まあ会場には、すでにそこそこ人が来ているし出演者のお供の他に、香月セキュリティ・サービスの人たちがウジャウジャ居るからねそんなに気にしなくても平気さ香月セキュリティ・サービスの検問を通っ会場にて入って来たってだけで、身分が保証されているってことだからね

えあんな検問で

でも、ゲートの前には3人しかいませんでしたよ

そりゃあ、あんまりたくさんの人が居たら今日、ここに重要人物が集まることがバレちゃうじゃない見た目も良くないしね偉い人って、そういうことを気にするから実際には、何かトラブルが起きた時に対処する人たちが、ゲートの近くに何班にも別れて待機しているんだと思うよ

じゃあ、簡単な検問に見えたのは

あくまでも見せ掛けだけだよ検問係の態度が悪かったのも、怪しい相手にはわざとああしろと指導されているんだよああやって、こっちの出方を見るわけ

怪しい相手って

工藤父なら判るけれど

オレたち、そんなに怪しいかな

本来ならこんな時間に来場する人間は、全部シャットアウトなんだよ今日みたいな会だとマスコミとか、ジャーナリストとかあるいは、スパイとか名家の人に近付きたいだけの山師とかそういう人が何とか会場に忍び込もうと、次から次にゲートにやって来るからね警備の人たちも大変なんだよ

そうか出演者とお供の人たちは、午後1時の集合時間に合わせて来ているはずだし

こんな中途半端な時間に来場する人間は、怪しまれてもしょうがないんだ

それに香月セキュリティ・サービスの山岡部長がすぐに現れたでしょ監視カメラで観ていたんだろうね

実際には、あれで二重三重のチェックを同時にしているんだよ

だからこの会場にヴァイオラの関係者は紛れ込まないから安心してね

マルゴさんは、オレに微笑みかけてくれる

でも劇場って、たくさんの人が働いていますよね掃除や売店の人とか、レストランの関係者に成りすませば

オレの心配を、マルゴさんは笑う

吉田くんここ、国立劇場だよそういうことに対するセキュリティは万全だよ

今日は、紺碧流が借り切っているからね売店もレストランもお休みそれから、今日は、劇場のスタッフも掃除の人も、照明や音響の人たちまで全部香月セキュリティ・サービスの人間を配置してあるよ

上流家庭の人たちってさ、劇場へ行くのが割と好きなんだよ客席から観るのも、子供を舞台に出すこともねだから香月セキュリティ・サービスには、劇場の仕事のできるスタッフを抱えた部門があるんだよ

みんな香月セキュリティ・サービスの人間なんだ

本物のプロのお芝居とか、オペラやミュージカルなら、専門のスタッフじゃないと音響・照明はこなせないだろうけれど日本舞踊の発表会ぐらいなら、香月セキュリティ・サービスの人たちでもできるよ

そういうことだから、この劇場内に居る限りはヴァイオラのことは心配しなくていいからね

そういうことなら

シザーリオ・ヴァイオラの襲撃については、一先ず頭の隅に置いて

別の問題に集中しよう

みすずのこと

みすずの祖父の香月閣下は

さすがに、まだ来場してはいないだろう

それと

今日は、みすずの婚約者も来るんだよな

オレとマルゴさんが、いつまでも車から降りてこないのでマナが心配そうな顔で、マセラッティの窓をコンコンとノックした

ああ、今、降りるよ

オレは笑顔を作って、助手席のドアを開ける

ミナホ姉さんや寧さん、メグも美智もすでに車外に居た

克子姉と雪乃も

慌てて、マセラッティから降りる

寧さんとマルゴさん、同じ靴を履いていますね

二人とも、そっくりな黒い革靴を履いている

かかとの低い

ああ、あたしたちは動きやすい様にね機能性を重視しているんだよ

そう、何かあった時に走り回れるようにねっ

二人は、顔を見合わせてニコッと微笑んだ

これ特注なんだよちゃんと、あたしたちの足の形に合わせて作って貰ったんだから

最新のスポーツ用シューズの技術を採り入れてあるんだよ見た目は、普通の革靴だけどね

工藤さんの靴も、そうだよね

マルゴさんが、美智に言う

はいお判りになられましたか

美智は、静かにそう答えた

あたしは、職業柄、人に会うと最初に靴を見るから