助かったそう言えば、ちょっと腹が減っていた
香月セキュリティ・サービスの制服警備員は全然見掛けないな
20階から30階までは、今日は私専用にしてある私は、それらの階のどこかに居るということだ山岡の部下は、ここには入れさせんよ
閣下が、オレの心を察して、そう説明してくれた
制服組の仕事は、私専用のエリアに敵を上がってこさせないことだ
そういう風になっているんだ
あの大徳さんと張本さんは
関さんが、閣下に尋ねる
私が呼べば、すぐに来るようにはなっている今は、素晴らしい孫娘たちとの時を楽しんでいるんだあの二人の顔は、今は見たくない
まあホモだし
そこだ鷺の間ドアを開けてくれたまえ
麗華と関さんがドアを開く
広い結婚式場の真ん中に、寧さんだけが居た
他の人の姿は、見えない
んー、何何、どうしたのっ
寧さんがオレたちに振り返って、愛嬌のある顔でそう言うから
これは、マルゴさんのいつもの手だ
寧さんを囮にして
脱出のキッカケを狙っている
マルゴさん、オレたちです大丈夫ですから問題なしですっ
大きな声で、そう叫ぶ
オレたちの入って来たドアの近くの丸テーブルの下から、メグとマナが顔を出す
香月さんとの交渉は上手くいきました全て、オッケーです
本当です、嘘ではありませんお祖父様は、あたしと旦那様を認めて下さいました
みすずも一緒に、叫んでくれた
御名穂さん本当に、問題はありませんから
渚の呼びかけでようやく、他の人たちも顔を出した
みんな、あちこちの机や演壇の後ろに隠れていた
克子姉ミナホ姉さん雪乃もいる
上に居た
照明の機材を吊す鉄パイプの間からスッと姿を見せる
ロープを使って、スルスルスルッと降りてくる
みんな揃っているわね
ミナホ姉さんがオレとみすずと渚と真緒ちゃんを見て、ホッとした表情をする
うむちゃんと連れて来たぞ
閣下が、ニヤッとミナホ姉さんに微笑む
ありがとうございます香月様
恭しく頭を下げる、ミナホ姉さん
寧さんたちは、まだ不安そうな顔をしている
閣下との交渉の結果が、判らないからだろう
それでどうなりましたか
ミナホ姉さんが、代表して閣下に尋ねた
彼とみすずさんを、お許しになって下さったと聞きましたが
うむ実は、そのことでな
閣下は、もったいぶって喋る
君たちに要求したいことがある
ミナホ姉さんたちは息を呑む
これは今後の香月家と君たちにとってとても重大な影響を及ぼすことだ
どのようなご用件でございましょう
真剣な顔でミナホ姉さんが、尋ねる
ああよく聞いてくれ
香月家当主香月重孝は、言った
私のことはお祖父ちゃんと呼んでくれ
次話で、家族懇親会です
しかし、まさかの鷲羽ちゃんネタとは
朝から入院する父に付き添っていました
医師の手術の説明に立ち会ったり親族の承諾書にサインしたり
そのまま夕方まで、ドタバタしていました
手術は、月曜日に決まりました
早ければ、翌日には退院できるそうですが
大変ですけど、しょうがない
頑張ります
259.家族結集
突然の閣下のお祖父ちゃん発言に
克子姉も寧さんも、ぽかーんとした顔をしている
メグとマナに至ってはの嵐だ
どういうことでございましょう
ミナホ姉さんが、無表情で閣下に尋ねる
どんな時でもポーカー・フェイスでいられることが、ミナホ姉さんの強さだ
言葉の通りだ私も、黒森の家族に参加することにしたお祖父ちゃん役としてな
閣下は楽しそうに、笑っている
渚、あなたの仕業ね
ミナホ姉さんが、渚を見る
うふふ何もかも、うまくいきましたっ
渚は、満足そうに笑っている
克子くんが良く知っていると思うが現在の私には、もう男性的な機能は無いいや、私は、克子くんには大変感謝しておるのだよここ数年克子くんは、わたしのお気に入りの女性であることを演じ続けてくれた
閣下の言葉に、克子姉は寂しそうに微笑む
今、この部屋に居る人間の中で最近まで、娼婦として閣下の相手をしていたのは、克子姉だけだ
克子姉はすでに、香月老人がセックスできない身体になっていることは、誰にも言わなかったのだろう
閣下の自尊心を傷付けないように閣下は自分の生殖能力が枯れてしまったことを臣下たちに知られたくなかったから、平然とそれまで通りお屋敷通いを続けていたに違いない
克子姉は、そういう閣下の気持ちがよく判っていたから外部の人間たちには、ずっと閣下とセックスしている振りをし続けていたのだと思う
私が、すでに女を抱けない身体であることは谷沢すら知らない私の大切な秘密の一つだよ
わたくしも知りませんでした
申し訳ございません、お嬢様
克子姉が、ミナホ姉さんに頭を下げる
いいのよお屋敷の女としては、正しい対応です
ミナホ姉さんは、穏やかにそう答える
君や克子くんのそういう実直さが私が君たちを信用するに値する人間たちだと判断させたのだ克子くんを責めないでくれ
責めたりは致しませんむしろ、誇らしく思っております
実際のところ私は、無理をしたらできないこともないのだよ今は良い薬もあるしなしかし82歳にもなって、心臓に負担を掛けるのは良く無いどうしても私は長生きせんといけないのだみすずや瑠璃子、そしてお前たちのために
閣下はオレたちを優しい眼で見た
だから、大変残念ではあるが黒森の一家の主人が、こいつであることを受け入れることにした黒森の家族が、こいつを要にして成立していることは判っておるしな
そう言ってオレを見る
こいつとか言っているがオレを見る視線には、親しさがあった
こいつは私の孫である、みすずの心を射止めたしかし、どうもこいつはあんまり賢そうでは無いし野心家でも無い香月家の婿として香月家の当主となるのなら、知性、品格、家柄、全てに渡って失格だがこいつは、香月家に入り込む気は全く無いという
閣下がミナホ姉さんたちに心の中を説明していく
そして香月家の未来は、みすずが背負うこととなったみすずが女当主として君臨するのならその亭主には、こいつの様な穏やかな性質の方が良いこいつは、基本的に控え目だしみすずや瑠璃子の話を良く聞くそれでいて、本当に必要だと思うことは物怖じせずに話す何より、自分の欲求を満たすことよりも女たちの希望に応えることに喜びを感じているようだみすずのバック・アップには適任な男だと思う香月の血筋と私が偏った教育をしたせいでどうせ、まともな結婚は望めまいそれならば、こいつに任せるのは間違っていない選択だと思った