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どういうお話でしょうか

ツンとしたまま、須藤秘書は言った

君を解任する本社に戻り給え

冷たい眼で、ジッちゃんは言った

不当解雇なさるおつもりですか

何だ、君は耳も悪いのか私の秘書の任を解くと言っているんだクビにするとは言っておらん本社に戻って、誰か無能な重役の秘書になりたまえ君には、私の秘書は勤まらんよ

ジッちゃんの言葉に、須藤秘書は

はい、私もそう感じておりました会長の様な、身勝手な方が相手では、秘書の仕事なんてやっていられませんわっ行き先を教えて下さらない、タイム・スケジュールは守らない他社の重役との会食の予定も、何度もキャンセルなさって私が先方に何度、お詫びの連絡をしたことか

そこで、キレるのかおい

会長は、私が作った綿密な予定を全て無駄にしてしまわれました私の方こそ、我慢ができませんっ

ジッちゃんがフンと鼻を鳴らす

気が変わった君を解雇する

横暴です私訴えますからね

怒る須藤秘書に、ジッちゃんは

先に言っておくが君の推薦者、上司、それから君が入社した時の保証人、全てにペナルティを支払って貰う君のご両親は、長野で精密部品の製造業を営んでいるのだったな

どうして、そんなことを

フッと笑うジッちゃん

私は、自分の部下の資料は必ず読み込むよ妹さんは、まだ女子大生だったね弟さんは、高校で軟式野球をやっているはずだ

黙り込む須藤秘書

君のお父さんの会社に圧力を掛ける取引先には、全て手を切らせる君のお父さんには、製品を作るための材料すら手に入らないようにする銀行にも貸付金を回収する様に指示する月末には、君のお父さんの会社は潰れることになるが、仕方無いことだ

な何をおっしゃっているんですか

怯える秘書

香月重孝を怒らせるということが、どういうことなのか身を持って、知り給え

そ、それって脅迫じゃないですか

脅迫では無い香月重孝がやると言っているんだ速やかに実行されることだよ

ジッちゃんはニッと微笑む

わ、私本当に警察に訴えますからねいいんですね私、マスコミの知り合いだっているんですからね

マスコミの知り合いなら、私にだって居るよそもそも、大手マスコミの何社かは、私の支配下にある私は大株主だからね

そそんな

君の様な身の程知らずの秘書を相手するのは、初めてだったからね楽しく遊ばせてもらったが、もう1ヶ月だそろそろ飽きたよ次の秘書は、もう少し仕事のできる仕事の判っている人に来て貰うことにしよう

そしてジッちゃんはゴミを見るような眼で、須藤秘書を見る

さっさと帰り給え本社へ戻って、私物をまとめるんだそして、香月重孝を怒らせてしまったことについて、周囲の人間に相談してみたまえ自分が何をしでかしたのかじわじわと判ってくるだろう怖くなるのは、それからだよ

私負けませんからっ

須藤秘書は、ジッちゃんを睨んでいる

何にだね勝つも負けるも無いよ私と君の間には、勝負なんて成立しないのだから

私は会長が私に何をしようとしても、絶対に成功してみせますいつか、見返してやりますからっ

ジッちゃんは、大声で笑う

彼女を嘲笑う

では君のせいで、君の推薦者たちや家族が不幸なことになるのは、構わないのだな

ひ、卑怯です会長は

そうやって、自分の置かれた現実の状況を考えずに、高いところから他人を見下している君の方が、よっぽど卑怯だよ君が大事にしているのは、君のちっぽけなプライドだけじゃないか

私は会長の様な方とは違います

それでも、須藤秘書はジッちゃんに屈しない

まあ、いい私は、明日にはもう君のことなんて覚えていないだろうからねしばらく経ってから、報告書を読むだけだ君か、君のお父さんの結末をねそれを読んで、ようやく思い出すああ、そうだ私に楯突いた馬鹿な秘書が居たまた随分、たくさんの人間を犠牲にしたものだなとね

ジッちゃんは、須藤秘書の言葉を無視して携帯電話を取り出す

谷沢かすまんが、私の秘書を解雇した本社まで誰かに送らせてくれ早急にだ二度と私は顔を見たくないからなそれから一度、こっちへ来てくれどうせ、この秘書には初めから大切な情報は伝えておらんのだろお前から、直接状況の説明を聞きたい

電話の内容を聞いて須藤秘書は、また屈辱に身震いする

電話を切ったジッちゃんが彼女に告げる

1階のフロントに、香月セキュリティ・サービスの山岡警備部長がいるそいつに言えば、帰りの車を手配してくれる5分以内にこのホテルから出て行けいいな

ジッちゃんの言葉は、どこまでも冷徹だった

はい、判りました失礼いたします

女秘書は、最後までジッちゃんを睨んで退室して行った

これから、このホテルで起こることを考えて今のうちに退去させてやったのだがあいつには、どうせ判らないだろうな

ジッちゃんは、小声でそう言った

御名穂くん今の女をどう思う

気が強い子でしたわね最後まで、睨んだままでしたから

それなりに優秀なんでしょうけれど秘書の様な、裏方の仕事には向いていませんね自分を前に出してアピールしたいという性格ですから

ああ企業家にでもなれば、そこそこの成功はするだろうだが、あの性格じゃ、敵もたくさん作るだろうし、イエスマン以外の部下とは上手くいくまい

ジッちゃんが、そう分析する

わたしに何かお望みですか

ミナホ姉さんがジッちゃんに尋ねる

君のところに向いているとは思わんか

あの子が

あんな性格だが容姿はいいスタイルも自分に自信があって、ちやほやしてくれる人間を求めているまあ、彼女ならちょっとやそっとのことでは挫けんよ

ジッちゃんはあの女秘書を、黒い森の娼婦に推薦しようとしている

確かに、ああいう子を好むお客様はいらっしゃいますが

そうだろう私も若ければ、顧客になっただろうよ正直この1月、あいつとケンカし続けるのは楽しかった

お気に入りだったんですね

私の予定は谷沢のやつが完全に管理しているからな女秘書なんて、ただ座っているだけでいいのだよそれをあいつは、ムキになりおってあいつをからかうのは、本当に面白かったよ

だから避難させたのですね

ああ巻き込むのは可哀想だからな

ジッちゃんは、寂しそうにそう言った

判りましたあの子のことは、わたしにお任せ下さい

まさか、本当に娼婦にするんじゃ

君のところで使ってくれるか

うちの女にはしませんあの性格のまま香月様のお世話のできる女に仕上げます

楽しみにしていて下さい

ミナホ姉さんは、言葉の最後をわざと喋らなかった

だけど、動いた口の形で判る