ミナホ姉さんはお祖父ちゃんと言った
シゲちゃん美人で気の強い女の子が大好きなのよあの子のこと、気に入っちゃったのね
渚が、そっとオレの耳に囁く
とにかく後々のお楽しみは、たくさんあった方がいいわ今を生き抜くためにはね
ジッちゃんは、須藤秘書の行く末を案じて、ミナホ姉さんに託そうとした
娼婦になるのは、決して良いことだとは思わないけれど
ジッちゃんも屈折しているから自分だけの女にならないくらいなら、いっそ娼婦にって思ったんだろう
でも、それではジッちゃんとあの女性との関係は、断ち切れたままだ
だから、ミナホ姉さんはジッちゃんに、あの女秘書との関係が継続する可能性を示した
そうやってジッちゃんの生き抜く気力に、燃料を足そうとする
さてと白坂家との交渉には、女の秘書は必要だ華がなければ、殺伐としてしまうからな御名穂くん、克子くんを貸してくれないかねまあ、お茶出しと機械の操作だけやって貰えばいいのだが
ジッちゃんは、ミナホ姉さんにそう言う
構いませんわ克子
克子姉は、立ち上がる
では、私と御名穂くんで段取りを詰めておこう向こうの部屋がいいな克子くんも来てくれそれから、警護には関くんを連れて行くがいいな、みすずお前たちの警護は、藤宮くんに任せる
はい、お祖父様
みすずが、澄まし顔で返事をした
判っていると思うが、この場を治められなくてはお前の未来は無いぞ
この場15人の私塾の男たち
香月家の分家と、重役の子供たち
こいつらを御することができなければみすずが香月家の当主になることは、難しい
今はまだ、みすずの野心を勘付かれるのはマズイけれど
自分が彼らにとって手強い相手ということを、示さなければならない
だから、ジッちゃんはわざと席を外そうというのか
お待たせ致しました、閣下
谷沢チーフが、部屋に入って来る
お、待っておったぞあちらの部屋で話は聞こう
ジッちゃんが、谷沢チーフに声を掛ける
お前たちは、ここで飯でも食っていろ酒は飲むなよ白坂家との交渉の席には、お前たちの親も来るのだからな親が真剣に仕事している席を、子供が飲みながら眺めているというのはなどうも気分が悪い
ジッちゃんは、プリンス組にそう言った
はい、判りましたっ
軽く返事をするのは、香月仁か
それからこちらのお嬢さんたちは、みすずと瑠璃子のお友達だ私のガールフレンドも居る絶対に粗相の無いようにな
青年たちは、ジロジロとオレたちを見ている
やっぱり女たちに興味があるらしい
了解致しましたっみんな、判っているよなっ
これも、香月仁が代表して返事する
おい、廊下に居る連中も入って来い
ジッちゃんは、まだ部屋の外にいる新興グループの6人に声を掛ける
は失礼いたします
頭を下げて入室する6人
お許しがあるまでは、入室してはいけないと思い控えておりました
グループの1人が、そう言う
高木風太さんですあちらのグループのスポークス・マン担当ですわ
みすずが、こっそりオレに教えてくれた
両方の派閥でそれぞれ担当がいるのか
プリンス組はちょっと馴れ馴れしい感じの香月仁
新興組は高木風太
派閥のボスはどっしりと構えて直接前には出て来ない
あっちの組のボスは誰なの
さっきのみすずの話ではプリンス組は、香月操って人なんだろう
新興組は
本来なら、貴彦さんなんですけれど貴彦さんは、この場にいませんから
そうだ、みすずの婚約者だった司馬貴彦は
婚約破棄になったので、このホテルから帰らされた
まあ、残っていてもこのメンバーと顔を合わせるのはキツイだろうし
ですから、おそらく弟さんの司馬アキラさんになるだと思います
兄がいなければ弟
つまり、香月グループの新興勢力では、2人の父である司馬沖達の力が群を抜いているのだろう
どの人
一番奥の青いネクタイの人です
みすずが、小声で教えてくれた
オレと何歳も変わらないんじゃないかな
みすずと同い年ですわ
司馬アキラは高校2年生か
では、しばらくお前たちだけで歓談していろいいな
ジッちゃんは、そう言って部屋を出て行った
谷沢チーフ、ミナホ姉さん、克子姉、関さんが続いていく
ジッちゃんたちが、いなくなると
へぇ、可愛いじゃんどこの家の子みすずさんと瑠璃子さん、どっちの知り合い
いきなり青年の1人が、寧さんに声を掛ける
えっとプリンス組の方のやつだな
オレ角田文和つーか、知ってるだろオレのことはさ
ナンパ男に、寧さんはニッコリと笑って
ごめーん、口が臭いから、どっか行ってくれるかなっ
ムッとする角田
何だ、この野郎
おい、角田、やめろ
後ろから、香月仁が声を掛ける
失礼なのは、お前の方だぜ
でも仁さん
閣下は、女性たちに粗相はするなとおっしゃられていたろ
香月仁が、角田に言う
オレからも謝罪致します申し訳ありません、お嬢様
ギャハハと大声で笑い出した
香月仁が、寧さんを見据える
あんたたちさあ、チームワーク良すぎいっつも、そういう手で女の子を引っ掛けてるんでしょ
寧さんが、笑いながら言う
片方が強気でナンパして、もう1人が女の子を助ける振りをして気を惹くって作戦バッカみたい、そんなの引っ掛かる様な子は、ここにはいないわよっ
寧さんが、ニッと笑う
この野郎オレたちをバカにするつもりかっ
角田が寧さんに詰め寄る
そう思うのならバカにされるような真似は、しないことだね
ススッと、マルゴさんが前に出る
何だよ手前どこの家の警護役だ警護役は連れて来ちゃいけないルールだろっ
喚く角田
それ君たち私塾の子たちだけのルールなんじゃないあたしたちには、関係ないと思うけれど
お、オレはボクシングやっているんだぜ
角田が、マルゴさんに強がる
そうなら、打たれ強いのかなちょっと、あたしのサンドバッグになってくれないかな
拳を手の平にパンッと打ちつけて、マルゴさんが前に出る
おい、お前何とかしろよお前、香月セキュリティ・サービスの社員だろオレ、知っているんだぜ
香月仁が、麗華に言う
麗華は、真緒ちゃんを膝に抱っこして2人でお菓子を食べていた
そうでございますがなぜ、わたくしが何とかしないといけないのですか
麗華は、真緒ちゃんが可愛くて仕方ないらしい
真緒ちゃんの口にお菓子を運びながら、答えていた
香月仁に振り向きさえしない
だってオレの親父は、香月グループの重役だぞオレたちを守るのが、お前の仕事だろうっ