うん無料ってのは、普通じゃないもんな
臣下つまり自分の身内だと思っているからこそ、ジッちゃんは無償奉仕で私塾をやっている
お祖父様は自分の臣下と、ただ雇用しているだけの人との区別は、はっきりと付けていらっしゃいます
きっぱりと、みすず言う
それもお祖父様がご自分の臣下だと思っていらっしゃるのは、あなた方のお父様だけですあなた方は臣下の子供たちであって、現実にはお祖父様の臣下でも何でもありませんお祖父様は、お客様という扱いで、あなた方と接しておられます
みすずの言葉に、私塾のメンバーたちは愕然とする
もし、アキラさんが対等なパートナーとしての雇用関係をお望みなら、お祖父様の私塾をお辞めになられるべきですアキラさんが大人になってご自分の力で、お祖父様がお認めになられるぐらいの能力を身に付けられていたならそして、アキラさんが香月グループで働くことを希望なさるのなら香月グループは、あなたを雇用するかもしれませんでも、今のあなたは、雇用する価値がある人材なのかどうかは、まだ全く判らないただの少年です
みすずの言葉に、司馬アキラは
判りました、では僕は今日限りで私塾を辞めます将来、香月グループに入れていただく気もありませんし
彼の言葉が、私塾の連中に波紋をつくる
本気かアキラくん
そう急いで結論を出すべきことでは無いだろう
新興グループの華岡侘介と孔守融が、声を掛ける
いいんです僕は自分でやってみたい仕事があるんです大企業の一員になるより僕は自分で起業して、自分の意志で会社を動かしていきたいんです
司馬アキラは、そう言った
そうですか頑張って下さいね
みすずは、冷ややかに言う
アキラさんのお作りになられる会社が香月グループに利益をもたらしそうなら、それこそ対等なパートナーとして契約を交わすこともあるでしょうしかし、香月グループにとって不利益な存在となられたら、徹底的に潰します構いませんね企業と企業との争いなのですから
みすずの強い態度に司馬アキラは、言葉を失う
アキラくんお節介を承知で、君に言うが
そう言ったのは香月家の分家ながら、香月操には付かずに新興グループの側にいる、香月健思だった
みすずさんに謝って私塾に残りなさい君の誰かの臣下になりたくない、一国一城の主になりたいという気持ちは素晴らしいと思うが、現在の君は閣下の臣下の子供でしかない君の不躾な行動で、君のお父様にまで迷惑を掛けることになる
司馬アキラは
父は僕の気持ちを判ってくれますそれに、父だっていつかは、香月グループから独立したいって考えています
いつかはだろう司馬沖達さんだって、今すぐには何もできないはずだ
香月健思は言った
企業の持ち主は誰だそれが株式会社なら株主だ香月グループの企業の株の半分以上は、香月本家が握っているつまり閣下のものだ君のお父さんがどれだけ有能でも香月グループから独立することはできない
それは投資家を探します香月グループと関係無い人で父や僕の事業に投資してくれる人がいれば
香月家閣下と敵対してまで、君や君のお父さんに投資してくれる人なんて日本にはいないよ
それなら外国の投資家を探します
アメリカやヨーロッパの投資家は、ハゲタカだよ判っているだろうねそれとも、新興国の地下資源成金でも探すかい無理だよ日本に確固とした地盤の無い日本人に彼らが金を貸してくれるはずがないだろう
香月健思は穏やかに言った
大きな夢を持つことは良いことだが夢を叶えるためには、現実に膝を屈しないとねだから、君の父上だってあんなに才能のある方なのに、他者の臣下であることに甘んじている
父だって、ずっと臣下のままではありませんっ
そうかもしれないいずれはしかし、今は閣下の臣下だよ忠実な
司馬アキラを香月健思はなだめる
閣下は器のとても大きい方だ司馬沖達氏が、野心を持つことを許して下さっているだから、沖達氏も臣下として、香月グループの中で力をつけ閣下とは円満な状態で、グループから独立することを狙っている閣下に敵対し、睨み合った状態で独立すれば香月グループだけでなく、香月グループの競合社からも攻撃を受けるそしたら独立したばかりで体力の無い会社は、一瞬で潰される君のお父さんが、独立して成功するには閣下や香月グループと友好的な関係を保ち続けないといけないんだよ
だから今は、香月家の臣下として屈しろと言うんですか
そんなアキラにみすずは
心の中から臣下になれとは望みません心の中で何を考えようと、その方の自由ですからしかし臣下であるにも関わらず、表面上だけでも臣下としての正しい態度ができないような人間は無能ですそんな人間は、必要ありませんから香月グループから叩き出します
みすずを、司馬アキラは睨む
さっきから、色々偉そうなことをおっしゃっていますけれどみすず様だって、閣下じゃない閣下のただの孫娘じゃないですかあなたにゴチャゴチャ言われる筋合いはありません
確かにそれはそうなのだが
判らないのあたしも、瑠璃子さんも今、お祖父様に試されているんですよ
お祖父様はあたしたちのこの部屋での討論を、別室で笑いながら聞いていらっしゃいますあなたたちは、臣下に相応しい人材なのかお祖父様に試されていますそして、あたしと瑠璃子さんも香月本家、香月家の当主の側に立つ人間として、相応しいのかどうかを試されているんです
みすずの言葉に、瑠璃子も頷く
その通りです香月の家、香月グループには、たくさんの人々が集っていますわたくしたちは、それらの方々の生活を守らねばなりません直属の臣下から雇用契約を結んだ方たちまた、香月グループの製品やサービスを買って下さる方々、全ての取引先わたくしたちは、その全ての人たちの期待に応えなければなりません
ですから身内である臣下に対してこそ、あたしたちは強い態度で接するべきなのだと思います臣下を甘やかすようでは家全体が綻びます
2人の少女が私塾のエリート青年たちを見下ろす
ですからあなたたちは、この場でご自分の立ち位置を定めなさい
あなたたちは、お祖父様ではなくあたしたちと世代を共にする方々です本当に、自分の将来を香月グループの中に懸けるおつもりがあるのならあたしたちの臣下となりなさい
瑠璃子も言う
そうですわねわたくしたちに臣下の礼を取る気の無い者は、今すぐこの場より、立ち去りなさいわたくしとお姉様が、香月家の後継者ですそのことが認められない方は、家より排除致します
私塾の連中は息を呑む
誰よりも早く香月健思が、跪く