血筋のことを云々するのなら、盲目的に瑠璃子を崇拝しろ瑠璃子は、香月の血筋の嫡流だぞ
ジッちゃんは厳しく、問い詰める
それは、その
そこそこに血筋の良い操が、率先してリーダーをやろうしているなら、奉ってしまった方が楽だお前たちの考えは、実際のところその程度のことだろう
いや、決してそんなことはありません本当に、私たちは操様が素晴らしい方だと信じております操様は、100年に1人の傑物です
食い下がる夏木惇
嘉田奉孝、虎田知徳、谷楽進、角田文和、大張遼 そして、香月昴お前たちも同じ考えか
ジッちゃんは、他のメンバーにも尋ねる
は、はい夏木の言う通りです
オレは、操様を信じてます
同じく
いや、ホント100年に1人の人材ですってマジにそう思います
はい確信しています
お兄様は素晴らしいです僕なんて、足下にも及びません
そうかどうも、私の教育が悪かったようだな
おい、お前たち操が100年に1人の人材なら、私はどうなんだ
プリンス派の連中は大口を開ける
私は何年に1人の人材なのかと聞いている
そ、それはその
せ、1000年に1人というか
いや、閣下のご業績を見れば、10000年に1人かと
もっとですよ他の人なんかとは比較になりませんっ
フンッと、ジッちゃんは嘆息する
軽い本当にお前たちは、軽いな
私なんぞ凡人にすぎんよ操もそうだ
し、しかし閣下
本物の天才を、お前たちは知らないのだよ
ジッちゃんは言った
10年に1人の逸材などこの世には、掃いて捨てるほどいる100年に一度の逸材だって、私は何人も出遭って来た本物の天才1000年に1人、10000年に1人の能力者というのも私は知っている
香月家という名家の当主として、何十年も生きてきたジッちゃんならばそういう人物たちとの交流もあったのだろう
本物を知れそして、もっと謙虚になれ自分がどこにでもいる平凡な人間道端の石っころでしかないと気付けば、世の中の見方も変わる
私は石っころですか
ああ、石っころだしかも、かなり使いどころに困る石だ丸くないし、ゴツゴツと尖っておるからなお前という石は
厳しい言葉ながら、ジッちゃんの声は笑っていた
それでも、この人は私塾の連中に愛情を持っているんだ
そんなに私は無能ですか
香月操は、ショックを受けている
操お前、アメリカのエックス社のジョン・ジェイコブズ社長を知っているか
金融経済の神様と呼ばれている方ですね
そうだ私は何度も会ったことがあるお前ジェイコブズ氏に金融投資で勝てるか
そんな相手は神様です私などが勝てるはずないではないですか
ジッちゃんは、フンと鼻を鳴らす
私は今、2勝8敗だよ大きく負け越しているが、傷は小さい彼には、日本の香月は手強い相手だと思わせなければ日本全体が彼に喰われる
プリンス派だけでなく、新興グループまでがジッちゃんの言葉を真剣に聞いている
いいかね香月家の経営に携わるということは、ジェイコブズ氏の様な獰猛な天才たちと同じフィールドで闘い続けるということなのだよしかもこの闘いは、フェアではないしばしば、やつらのルール、やつらの審判の元で勝負しないといけない時には、戦略的に負けてやることもある大事なことは、香月には並々ならぬ闘志があり、絶対にやつらに支配されるつもりはないことを示し続けることだ隙を見せれば、喉笛に嚙み付いてくる相手だと判れば、やつらも迂闊には攻撃してこない
自分よりも能力も財力もあり国家権力と結びついている連中に対して、ファイティング・ポーズを取り続けるんだジェイコブズ氏並みの知能の持ち主はたくさんいる投資家にも、企業経営者にも、政治家にもそして、詐欺師にもね自分よりも能力のある相手だからといって、闘いを避けて逃げ出すなどということは、私は決して許されないんだよ私の後ろには、香月グループがありその後ろには日本という国家そのものがあるのだからね
操も、他の者たちもお前たちには、そこそこの能力がある血筋がある縁故があるそれらは確かに、お前たちの力なのかもしれないしかしそれらは、お前たちがたまたまの幸運で与えられた力であってお前たちが自分で勝ち取った力では無いなのに自分たちよりも幸運でなかった人間を見下してどうする
そうだ、こいつらは下しか見ていない
自分たちより、力のある人間には最初から勝てないと思っている
戦う気が無いんだ
お前たちの上には、凄まじい能力の持ち主血筋も縁故も、お前たちとは比べ物にならないような傑物が何人もいるそして、そいつらは例え、恭順の意を示したからといって、ハゲタカどもはお前たちを見逃してはくれんぞ
ジッちゃんの言葉に、私塾の連中はブルッと身を震わせる
企業の中枢に立つということの恐ろしさを初めて自覚したのだろう
私が劣った能力でも、必死にジェイコブズ氏に食らいついていくようにお前たちが見下している相手も、死に物狂いでお前たちに牙を剥いてくるだろうこの世は単純な弱肉強食ではない命懸けの弱者が、強者であるはずの者たちを打ち負かすことなど、現実のビジネスの世界では日常茶飯事なのだよ
ジッちゃんは穏やかな声で言った
もっと謙虚になりたまえ自分より優れている者にも、劣っている者にも均等に細心の注意を払うんだ我々は凡人なのだそれを常に肝に銘じろ相手をナメてかかれば、酷いしっぺ返しを食らうぞ
ジッちゃんの視線が、さらに司馬アキラに移る
さて司馬アキラ
君の志の高さは買うが人生は有限だよ
例えば、私が新しい事業を始めようとすれば明日からでもスタートさせられる私には資金があるし必要な人材を集めることもできる有能な人間を他者からヘッド・ハンティングしたっていいんだ国の規制が厳しいと思えば、政府の誰に言えばよいのかも判っている私には、新しい法律を立案し、国会で決議させることだってできる
今の君がどんな企業プランを持っているのかは判らんが君が、それを実現させるのに何年掛かる君が底抜けに幸運だったとしても会社設立から15年は掛かるだろう不運だったら、30年経っても実現しないよいや成功目前で、誰かに足を引っ張られて何もかも失う可能性だってある
でも、僕は
司馬アキラは、それでも独立の意志を曲げない
君はどういう目的で、自分のプランを実現したいのだね
目的ですか
単純に個人的なロマンの追求、自分1人の力だけで企業家として成功してみたいというのなら、私は止めないよ勝手にやりたまえそういう人間の相手はしてられないからな
ジッちゃんは、言った