Выбрать главу

サバイバル

最近読んだ本である教育評論家が、子供たちに生存競争させるような教育はするべきでないと言っていたよ私は、その評論家に唾棄してやりたいね人間は、生き続ける限りサバイバルだよ生き残り、自分と自分の家族の幸福を守りたいのなら闘い続ける意志を失ってはならない気を許せばいつでも、討たれる子供たちにこそ、サバイバルのための技術を教えるべきなんだよ

もちろん人だけではない企業にも、家にもサバイバルしていくために必要なことがある

犯罪者と戦うためには、香月セキュリティ・サービスの様な戦闘部隊を自ら組織する

香月仁、角田文和心配するなお前たちの懸念は綺麗に消してやるお前たちは、私の可愛い教え子だからな

ジッちゃんの言葉に、二人は震え上がった

この先この二人が、迂闊な行動をすることは無いだろう

もしまた、悪い連中が近寄って来ても

香月操や夏木惇たちが、監視してくれる

よっぽど悪辣な連中なら香月セキュリティ・サービスが撃退する

こうして、香月の家は守られる

血族に迂闊なお調子者が現れても、深刻な事態になることはない

さて今夜は、君たちのために、一つのプログラムを用意した

すでに知っているだろうがこの後、このホテルで私たちは白坂家の人間と会う誰か白坂博光氏について詳しく知っている者はいるかね

ジッちゃんは、講義を始めた

オレたちにも普段の私塾の様子を見せてくれるつもりなんだろう

白坂家の方ですが主流派では無い方と聞いています

新興グループの孔守融が答えた

そうだ大阪のテレビ局の代表取締役だ

大阪

日本のマスコミ業界というのは、面白い歴史を持っていてね元々は、大阪で創業した会社が全国規模になって、東京に本社を置いたというケースが多い白坂家の場合は、もっと複雑だ白坂家が新聞社を創業したのは東京だが各地方の小さな新聞社を買い取って全国展開を果たした大阪の場合も、地元に古くからあった新聞社を買収している大阪だけで販売しているスポーツ新聞には、まだ買い取られた新聞社の名前が残っているよ

大阪って行ったことが無いから、よく判らないけれど

さらにテレビ事業は、まず先に大阪の企業と出資し合って大阪にテレビ局を作った白坂家の単独でテレビ事業に乗り出す余裕が無かったんだろうな東京に系列のテレビ局を作ったのは、大阪の局の六年後だこちらは100パーセント白坂家の新聞社の子会社だこれが何を意味するか、判るかね

ジッちゃんが、尋ねる

東京の新聞社やテレビ局と違って大阪のテレビ局は、白坂家の支配が弱いということですか

やはり新興グループの花岡侘介が答える

うんこっちのグループのやつらの方が、ビジネス感覚があるんだな

そういうことだ大阪のテレビ局は白坂家の株保有率は30パーセントにも満たない後は地元の企業が株を持っている従って、系列ではあるが白坂家に完全に支配されているわけではない特にニュース番組は、東京の局の配信を断って、大阪で独自で製作している白坂家の意向に沿った報道ができないようにな

なるほど、そういうこともあるんだ

白坂家の現当主・白坂守次氏は、その様な状況を嫌って、これまでに何度も大阪の局の完全子会社化を目指したしかし、ことごとく地元企業の反発を食らって、頓挫している大阪は、東京に情報発信の全てを握られることを嫌っているんだよ

白坂家の野球チームも大阪だけは、人気が無いからな

しかし大阪の局の代表である白坂博光氏は、白坂家の一員じゃないですか

司馬アキラが、尋ねる

白坂博光氏は、白坂家でも傍系だ親の代に大阪に移って、父親は大阪の新聞社に勤めていた博光氏自身は、テレビ局の創設以勤務している白坂の名前はあるが、大阪で叩き上げで出世した人なのだよ

その人が今夜、交渉に来る

現在の白坂家の新聞・テレビネットワークは東京本社と地方で、激しい対立が起きているもはや、新聞社の野球チームの人気で視聴者を増やすことができる時代では無いからな

そんなに深刻なのですか

嘉田が尋ねた

ああ時代の変化に対応できなかったツケを、彼らは地方へのゴリ押しで支払おうとしているからね

ゴリ押し

新聞社とテレビ局ただの報道機関が、余計なものを持ちすぎている系列の出版社やレコード会社、今では大手タレント事務所の株まで買っているこうなると、始末が負えない

系列のレコード会社に所属するアーティストを売るために自局の音楽番組で取り上げる系列の出版社を儲けさせるためにその会社から出ている小説を、ドラマ化する投資しているタレント事務所の株価を下げないために積極的に、その会社のタレントを起用する全ては、東京本社だけの勝手な都合だ

あげくに売れない映画まで作るこれは全ての系列企業のゴリ押しの塊だ出版社が押してくる原作に、タレント事務所の押す俳優が出演し、主題歌は系列のレコード会社で売る宣伝は、テレビ局、新聞社、ラジオ、出版社、ありとあらゆる系列会社の力を駆使して行うそして大量の映画のチケットを系列会社に買わせる儲けは出ているが実際には客は入っていないそのツケは全て、宣伝の片棒を担がされ、無理矢理チケットを買わされる地方の系列会社に廻って来る

ああそういうシステムなんだ

15年前なら、それでもまだどうにかなっていた当時の庶民は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌からしか情報を受け取れなかったからなそれらを煽れば客は入った適当な流行やブームを生むことができた主要なメディアを抑えて、批判記事を書かせないようにすることは簡単だったからな

そっかネットがまだ無かったんだ

香月昴が、呟く

そういうことだよ今は、面白くないものは面白くないと、すぐに伝わってしまうからねどれだけステルス的な宣伝をしたところで世論の大筋は変えられない日本の庶民の感性は鋭いよ何が本物で何が偽物なのか彼らは簡単に見抜く

ジッちゃんの説明に、みんな頷いている

結果としてこの10年の間に、マスコミは大衆への影響力を大きく削がれた今では、昔のようにマスコミが煽ったところで、大きなブームにはならない宣伝効果が少ないと判れば、スポンサーも減るそれなのにも関わらず、東京のマスコミ各社は昔が忘れられないのだちょっとテレビで火を付ければ、爆発的にヒットした時代がね

オレはまだ子供だから、昔のことはよく判らないけれど

現在のマスコミ各社は、広告代理店と組んで視聴者に物を売り込むだけの組織となっている情報発信ではなくただの商人だそれが、さらに庶民からテレビ・新聞を遠ざける結果になっている

うんオレも全然テレビ見ないけれど困らないもんな