地方の不況は凄まじいのです大阪の私の局は、独立も可能ですが他の地方では、新たに新会社を興すことなんて無理です
東京との繋がりなければ、存続できないのなら東京本社に支配されるのは、仕方ないことだろう
そこは香月様のお力で何とか当座の資金だけでも、投資していただけませんか
金は出して欲しいが、口は出さないでくれというのは身勝手過ぎるんじゃないかね
地方の会社が東京に対して不満を抱いているということは、よく判ったしかし、私に援助を求めるのは筋違いだろう
次に、ジッちゃんは白坂信子を見る
それから私は誰が白坂家の当主になるかなんてことに興味が無いそんなことは、白坂家の中で勝手にやってくれ
そうおっしゃらないで富久志が当主になりましたら、香月様に尽くします絶対にご恩は忘れませんからっどうか、富久志をご支持下さい
白坂信子は、必死で訴える
私はね私に忠実だが愚かな人間より、不忠でも利口な人間を好むよ頭の良い人間は、何が自分にとって得かを常に理解して行動するからね私が利益を保証している限りは、彼らは絶対に私を裏切らないんだ逆に、愚かな人間は私に対して忠義を示すと言ってロクでもない行動を身勝手に行い、結果として、私にとんでもない損害をもたらすことが多々ある
富久志はわたくしの息子は、頭の良い人間です早稲田の政経を卒業していますから
本当に頭の良い人間なら、遅刻せずに今、この場に居るはずだよ人生には、絶対に外してはいけない重大なポイントがある
今、この場に来ていない以上私は白坂富久志という人間を信用することはできない
香月様もう少しだけ、お待ち下さい何かの手違いですきっと道が混んでいるんですわ
さらに言うと息子の将来に過度に干渉する母親というのも、どうかと思うがね
ジッちゃんの言葉は、冷たかった
ちなみに君の息子の富久志くんというのは、今年何歳なんだね
38歳ですわ
うんそりゃ、ダメだ
ダメダメだ
さて最後に、山田副社長君の提案は、妥当なものだと思う白坂守次氏が新聞社の代表を辞すのと同時に役員全体も改選するべきだ
は、はいよろしくお願い致します
山田副社長は、自分の提案が受け入れられたのだと喜びの表情を浮かべる
もちろん君にも辞めて貰うことになるよ
山田副社長の顔が、一瞬にして青ざめる
君だって白坂守次氏の下で永年、役員として働いて来たのだろ彼にも能力を認められていたはずだそうでなければ、副社長というポストには就けないはずだ
それは確かに、そうなのですが
ならば君だって、白坂守次氏と一緒に退職するべきだとは思わないかね
黙り込む山田副社長
交渉というものは、取引だ価値のあるものと、価値のあるものの交換だしかし君たちの提示した条件は、どれも私にとって価値のあるものでは無かった
ジッちゃんは冷たく話す
だからここから先は、私の好きにやらして貰おう克子くん
ジッちゃんは、克子姉を呼ぶ
画面の外から、克子姉が現れる
その姿は、ジッちゃんの雇っている美人秘書にしか見えない
この人たちに見えるように、資料を提示してくれ
機械の端末を操作する克子姉
どうやら、ジッちゃんたちの居る会議室にも、映像を映し出すスクリーンがあるらしい
そこに資料が投影される
もちろん、オレたちの見上げているスクリーンにも連動して資料が示される
これが君たちの新聞社の株式の状況だ51パーセントを白坂家が押さえている残りの49パーセントは、様々な企業と個人株主で保有し合っている
白坂家が51パーセントを保有していると言っても、本家の当主・白坂守次氏が持っているのは28パーセントだけだ他は一族の人間で分けて保有している
あたしも6パーセント保有しています
白坂信子が言った
そうだ、君が6パーセント分の株式を持っているように白坂家の血筋で、ありながら当主・守次氏に反発している株主が何人かいる私はそういう人物から、2パーセント分だけ株を手に入れた
2パーセント
つまり白坂家の現在の株保有率は、49パーセントだこれが、どういうことか判るかね
白坂家以外の株主の保有率が51パーセントになったってこと
株というものは、半数以上を押さえれば、その企業を自由に動かすことができるようになるさて、連休が明ければ私は、君たちの新聞社を買収するために、TOB株式公開買い付けを行うことを発表する昨日からの一件で、今は君たちの新聞社の株価は大きく暴落しているすでに安くなった株を買い占めさせているがTOBとなれば、市場価格よりも高い値で株を買い取るということだみな、こぞって私に持ち株を売ってくれることだろう
ジッちゃんの話を三人は、びくびくしながら聞いている
特に各企業が持っている分の株は、みんな喜んで私に売ってくれるはずだよ私は香月重孝だからね私には恩を売っておきたいだろうし睨まれたくはないだろう
し、しかし白坂本家が、株式市場から2パーセント分の株を買い足せば再び、白坂家の新聞社支配は動かしようがなくなるはずです
白坂博光氏が、額の汗をハンカチで拭いながらそう言う
買い足す誰が、どうやって
ジッちゃんは、クククと笑う
私はすでに、白坂本家のメイン・バンクに指示しているどこの銀行も白坂本家には金を貸さない株の保有は個人の資産だから会社の資産を流用することもできない手持ちの個人の資金だけで白坂守次氏は、どこまでやれると思うね
すでにそういう攻撃をジッちゃんは準備している
何、私が本気だということが判れば本家以外の白坂家の株主も、みんな私の方へ付くよ白坂守次氏に未来が無いことは判っているんだ倒れることが判っている人間と心中する気は無いだろう
確かにこの様子なら
白坂家の他の連中だって、すぐにジッちゃんに降伏するだろう
君たちの新聞社の経営権を私は手に入れる新聞社本体には、系列会社の株式が付いてくる結局のところ君たちの報道ネットワークの全てを私は確保することになるだろう
ジッちゃんは、ニコッと微笑む
君たち3人の協力は、必要としていない今日は、わざわざ来て貰って済まなかったねさあ、帰ってくれたまえ
白坂家の反主流派の三人は互いに顔を見合わせ
ま、待って下さい香月さん
275.第2の交渉・3
さすがは、閣下だすでに、ここまでの準備をなさっておられるとは
白坂家の反主流派3人を圧倒するジッちゃんの映像を見て香月操が言った
いや実際には、どうなのでしょう白坂本家が、閣下の意志の通じない例えば、外資系の金融機関と組んだ場合白坂家が、株の過半数を抑えることはまだ可能なのでは無いでしょうか