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嘉田が、真剣な顔でそう答える

その辺は、まだ閣下に秘策があるのではないかな

夏木惇も会話に加わる

外資でも、アメリカやヨーロッパの金融機関なら閣下と近い関係にあります白坂家が金を借りるとしても、新興国の金融機関は利用しないでしょう

司馬アキラが、そう分析する

しかし閣下と白坂本家との争いに気付いて、どこかの投資ファンドが株を買い漁るということは無いのでしょうか10パーセント以下でも、株を保有されたらその方たちが、閣下と白坂本家の闘いを左右することになるのでは

香月健思が、懸念を述べる

そもそも株式市場に流れている株は、どれだけあるのでしょう白坂家内でも、本家と反目している人間の持ち株は

孔守融が、そう言うが

いや、白坂家内の反主流派でも、白坂家が新聞社に影響を及ぼせなくなるのは嫌なのではないでしょうか白坂家全体で、株を集め何としても過半数をキープする戦術に出ると僕は思いますね

香月昴が、そういう意見を述べる

だからといって今更、白坂守次に自分の持ち株を預けますか白坂守次が、当主として死に体だということは誰もが知っています白坂家が結束して、防衛するとしても新しいリーダーを決めてからということになるでしょう

そう言ったのは、華岡侘介だ

しかし、白坂守次の後継者争いは揉めるだろうそもそも、白坂守次氏自体は、引退の意志はあるまいやつらが家内でゴタゴタしている間に、全て閣下の思い通りになってしまうのではないか

大張遼は、そう言う

うむ閣下のなさることに、間違いがあろうはずないものな

谷楽進が、大きく頷く

大声で、議論を続ける私塾の連中

その会話を聞きながらマルゴさんが、オレに言った

君は、どう思う

あんなの全部、ブラフですよ

私塾の連中の眼が、オレに集まる

すでに2パーセントの株を押さえたっていうのも嘘だと思いますね

おい、お前、どういうことなんだぁそれは

虎田知徳が、大声でオレに尋ねる

だって株の買い占めなんて、金が掛かるじゃないですかこんなバカなことのために、あの人は無駄なお金は使いませんよ

オレの言葉に、雪乃が反応する

白坂の家から、新聞社を奪うことがバカなことだって言うの新聞社は、白坂家の要よあの新聞社は、できた時からずっとあたしたちのものなんだからっ

そういう話をしているんじゃないんだよ

今、相手をしているのは、あの3人で要は、あの3人がこっちの言うことを聞くようになってくれればいいんだろ

私塾の連中はオレの話にピンと来ないらしい

こいつらは奪うとか手に入れるとか、見栄えの良い結果を求めている

でもジッちゃんは違うと思う

あの人は、下らないことに金と労力を使うのは避けるだろう

白坂博光さんも、信子さんも、山田副社長も結局、当主の白坂守次を追い落としたいだけで、他のことは全然意見が合ってないですよね

博光氏は、自分たち地方の会社を白坂家の影響下から独立させたいだけだ東京の新聞社の本体については、どうでも良いと思っている

信子氏は、自分の息子を白坂家の当主にしたいだけ実際の経営権は、ジッちゃんに委ねてしまっても良いと思っている

山田副社長は、新聞社の経営から白坂家に出て行って欲しいと思っている地方の会社は、これまで通り東京から支配したいと考えている

少しも妥協できる関係は無い

それぞれが別の目的を持っていて意見が違うことは、判っているわけですだからみんな、香月さんにお願いしている対等な関係の交渉にならないんです3人が一致した目的で団結すれば、香月さんと対抗できる強い勢力になれるのかもしれないのに今のままでは、それぞれ地方の会社、白坂家の中の反主流派、東京本社の従業員という弱い勢力の代表でしかないんですから

ジッちゃんに支持して貰わないと自分たちの勢力を維持することすら、難しいだろう

香月さんは、相手のそういう弱さを感じ取ったからブラフで脅すだけでいいと判断したんだと思います

脅すだけって

角田には、判らないらしい

まあ、エリートでいつも威張っている連中には判らないか

このやり口は黒い森に近いもんな

判りませんかお祖父様は、相手に負けるかもしれないと思わせるだけで充分だと判断なさったんですよ

白坂家の新聞社の株保有率が過半数を割った51パーセントから49パーセントになったそう言うだけで、相手は心配になります実際にはまだ、白坂家がお祖父様に新聞社の経営権を奪われたわけではないのに奪われるかもしれないと思い込ませるだけで、あの3人は落ちます香月家には、財力も国家への影響力も充分にあることは判っているのですからしかしお祖父様は、実際には白坂家の新聞社に対して、株式公開買い付けなどなさりませんよ大金を支払ってまで、手に入れるような新聞社じゃありませんし先程、みなさんがご討議なさっていたように外資や投資ファンドが乗り込んできて、お金を毟り取られることは判っていますからね

しかし脅すだけでは、何も動きますまい

大張遼が、みすずに尋ねる

何故です白坂信子さんは、新聞社の6パーセントの株をお持ちなんですよ信子さんを屈服させれば、それだけで白坂家の保有率を過半数割れさせられますよね

そうだわざわざ大金を出して、実際に白坂家の内部の株保有者から2パーセントの株を手に入れる必要は無い

株式公開買い付けもそうですお祖父様が、TOBするらしいという噂を流すだけで充分です後は、あなたたちがおっしゃっていた通り内外の投資家たちが、白坂家の新聞社に襲いかかります現在の守次当主と反主流派に分かれた白坂家では、防衛しきれないでしょう白坂家が消耗し完全に体力がなくなったところで最後に、お祖父様が救済に乗り出すことになるのだと思いますそれが、お祖父様が一番楽にあの新聞社を手に入れる方法ですよ

救済ってどうするんです

香月昴がみすずに尋ねる

白坂家のメイン・バンクに手を廻してお祖父様の名前は出さずに、白坂家の方の株を買い取りますホワイトナイトの振りをした乗っ取りです買い取るというのも最初は、銀行から株を担保にしてお金を貸りるという形になるでしょうね投資ファンドとの防衛戦になった以上、それでも白坂家全体で過半数近い株を保有したままになっているでしょうしもう、その頃には、白坂家には株しか動かせる資産が残っていないでしょうから永らく懇意にしていた銀行が、貸し付けてくれるのなら白坂守次さんも特に疑ったりはしないでしょう

みすずの言葉を、私塾の連中は真剣に聞いている

そして株が担保になった段階で、白坂家の他の事業に別のトラブルを起こします何でもいいんです白坂家の返済を滞らせることができるのならその結果、担保となった新聞社の株は、銀行の物になりますそして、そのままお祖父様のものになります株式市場で買うよりも、遥かに安く大量の株を手に入れることができます