怖くて、撃てない
絶対に弾が当たる距離まで近付いて、プレッシャーを掛けたらつい引き金を引いてしまうだろうけれどこれだけ距離を取っていたら、あっちからは撃ってこないよ
バンバルビー3のお姉さんたちも、全員、黒服の連中が銃に慣れていない素人だって判っているんだ
だから、相手が破れかぶれになって乱射しないように距離を取って、刺激しないようにしている
最初のブーメランで、マシンガンの持ち主を倒したことで充分な牽制になっているんだ
水曜です
それでは、病院によって仕事へ行きます
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第一次世界大戦の頃の話だけどさ
アメリカからヨーロッパに戦争に行った兵士の中で、実際に敵に向かって銃を撃ったことのある人間は実は、何割もいないんだよほとんどの兵士は、弾の入った銃を抱えて、敵軍と対峙しても引き金を引かなかったんだ
銃を撃たない
そりゃあ、激戦区とか生き残るかどうかの瀬戸際なら、撃つよそうしないと殺されるって思えばでも、敵と対峙していてもお互いに、いつでも撤退できるような戦場なら、本気で撃ち合ったりはしなかったんだよこれはデーターとして、ちゃんと残っているんだ
マルゴさんの言葉に、麗華が言う
はい19世紀の銃を持った兵士が列になって、指揮官の号令と共に一斉射撃する時代なら、撃たざるを得ませんが兵士が戦場に散開して、身を隠しながら撃ち合う時代になると、敵に接触しても撃つか撃たないかは兵士個人個人の判断に委ねられますから
自分の撃った弾で、人が死ぬかも知れないって思うと普通の人は、なかなか引き金を引けないんだよきちんと想像力のある、真っ当な人間ならね
戦場で英雄になるようなやつ敵を見たら、ためらわずにすぐに銃撃できるような人間は、やっぱりどこかが壊れているということか
だから、今のアメリカ軍では戦場で動くものを見たら、反射的に射撃してしまうような訓練をしているんだよ考える前に、身体が勝手に引き金を引くように徹底してそうでないと、中東の制圧作戦なんかはできないからねだけどその結果、誤射も増えている敵ではない地元の民間人を撃ってしまったり味方の兵士を撃ってしまったりね
とにかく銃というのは、取り扱いが難しい武器なんです普通の人は、いきなり銃を手渡されても、まず人に向けては撃てないですよね
麗華が、言った
でも、ほらアメリカじゃ、よく無差別発砲事件とか起こるじゃないですか軍人さんとかじゃない、学生とかでも平気で人を撃っていますよ
ああいう事件を起こす人たちは若い人でも、だいたいが銃に慣れている人たちだし少し精神的にイッちゃっている人が、武器を持っていない人たちを一方的に虐殺するというイメージだけで行動してるわけでしょう警察が来るまでは相手も武器を持っていて、反撃されるってことを考えていないから、自分が圧倒的に強くなった気になってバンバン撃てるんだよ虐殺したいだけで、戦争したいわけじゃないから
マルゴさんが、答える
確かに無差別発砲犯が、軍隊や警察の施設を攻撃したって話は聞いたことが無い
たいていは平和な公園や学校の中で事件を起こす
マルゴさんは再び、スクリーンを見上げる
あの連中は、間違いなく銃に関しては素人だよヴァイオラが、あの人たちをどこから連れて来たのか判らないけれどいきなり、ピストルやマシンガンを持たされて戸惑っているのが動きで判る
確かに黒い戦闘服の連中は、銃を持ったまま、あたふたしているだけで闘いには参加していない
でも、マシンガンは平気で撃ってませんでした
車が停まったら、外に向かって撃てみたいな、単純な指令なら、ノリの良い人間は従うよあのメンバーの中で、一番勢いの良いやつにマシンガンを任せたんだと思うよでも人のいないところに向けて撃っていたよね
確かにホテルマンに扮して、やつらの車に接していた香月セキュリティ・サービスの警備員も、誰一人撃たれてはいない
その後、マシンガンの担当者はブーメランの直撃を受けて倒れたままだし
マシンガンは床に転がったまま、誰も拾おうとしない
あれ、どうして回収しようとしないのかしら
そんなのさ拾ったら、使わないといけないでしょみんな、嫌なんだよマシンガンで、人の群れに向かって乱射とか、ゾッとするじゃない
マルゴさんは、ニコッと微笑む
それにあのマシンガンは、もう弾切れだと思いますわ
麗華が言った
美智ちゃんあのマシンガン、何回、弾倉を交換していたのか数えた
麗華の問いに、美智は
2回です最後の弾倉に交換した後、斉射して撃ち尽くした後は弾倉を交換していません
すげぇ、ちゃんと見ているんだ
美智の返答に、マルゴさんも頷く
そうだったよねということは、もう交換する弾倉が無いってことなんじゃない予備があれば、とりあえず差し替えるからね弾切れで空っぽのマシンガンなんて、何の意味もないし
ということはさあの黒服の連中も、そんなに弾は持ってないんじゃないのっ
寧さんが、マルゴさんに尋ねる
あああたしもそう思うよ今、ピストルの中に入っている弾が全部で、予備は無いそれも、あいつらが撃って来ない理由の一つだと思う銃に手慣れたプロだったら、威嚇に何発か使うぐらいの余裕はあるけれどあいつらは、一発たりとも無駄弾にはできないって思っているんだよ
はい一定の距離を保って、こちらから不用意に近付いて刺激しなければずっとあのまま突っ立っているだけでしょうねあの人たちは
麗華も、そう分析する
バルンバルバルバルルルルーンッリュミョョョーン
一方敵味方に分かれた、フリーの警護人たちの闘いは続いている
変な奇声を発して異次元戦士・ダダドムゥおじ様が、バンバルビー3の番場さんに迫る
うわわーんっこっちに来ないで下さぁーい、おじ様ぁぁ
長い棒の先に、鋼球の付いた武器フレイルを振る、番場さん
はーい、おじ様はここですよーんっフリフララランッ
しゅるり、しゅるりと気持ちの悪い動きで、異次元戦士は番場さんの懐に飛び込もうとする
来ないでぇぇ
番場さんが、フレイルをメチャクチャに振り回すが異次元戦士には、擦りもしない
うわわわーんっ届くはずなのに、届かないようっ
アリリャーン、コリリャーン、タリラリラーンッッ
まずい、異次元戦士が、一気に踏み込もうとしている
番場ちゃん、どいてっ
バービーさんの命令に、番場さんがスッと後方に飛ぶ
今よ、ルビーちゃん
あいよ、姐さんっ
ルビーさんが、ショットガンを腰だめにして構える
暴動鎮圧用のゴム散弾を食らいなっ