今だけの混乱なのか今後もずっと続くことなのか
現状では、まだ判らないようです
それでは、病院へ寄ってから仕事へ行きます
278.目方でドン
最初のマシンガンの掃射で、ホテルの外に居た制服の警備員は全て退避してしまっている
謎のリムジンバスが、ホテルの正面に突入して来るのを制止する人間はいない
緊急退避いいわねっ全員、ロビーの奥へ
負傷者の搬送をしていたネコさんが、味方のフリー警護人たちに叫ぶ
了解番場ちゃん、1回、ブレイクして場所を変えるわ
バービーさんが、番場さんに指令する
えー、姐さんどうしてですぅわたし、大分身体が温まってきたところなのに
また一人、フレイルの先の鋼球で敵側に付いたフリー警護人をブッ飛ばしながら番場さんが不満そうに言った
バカ言ってんじゃないよ第2波は、あれだけ人数がいるんだプロが混じっているよピストル撃ち慣れた連中が束になってくるんじゃあ、勝ち目は無いだろ
えっと大型バスって、確か1クラスの生徒が丸まる乗って、補助席が余るくらいだよな
てことは満杯になるくらいの人数を詰め込んで来たら、150人以上は居るってことか
マルゴさんは、ヴァイオラがアメリカ本国から連れて来ている手下は、30人程度だろうと言っていた
そいつらは、普段から銃による人殺しに慣れている連中だ
残りの120人が、第1波の黒戦闘服のやつらみたいな素人だったとしても
その中に30人のプロが紛れ込まれるとこちらは不利だ
すでにフリー警護人同士の戦闘で、味方の人数も削られているし負傷や疲労もしている
番場最初の予定通りに一旦引くよそいつも、引きずって来な
ルビーさんも叫ぶ
ラジャー姐さん
番場さんは、たった今気絶させた警護人の男を引きずって後退する
ロビーの奥へ
このホテルのロビーは、1階と2階が吹き抜けになっていて天井がとても高いがこの奥の部分は、1階も2階も、お店がぐるりと並んでいる回廊になっていた
しかもその回廊のある一角は、ロビーの柱や休憩用のベンチ・ソファの類なんかが邪魔をして、入り口からは直接攻撃できないように、巧妙に配置されている
みんな早く急いでっ
味方の警護人たちが退避している間に外のリムジンバスからは、次々に武装した黒い戦闘服の男たちがドカドカと降りてくる
全員、最初に現れた連中と同じ格好だ
頭には戦闘用のヘルメット、顔は黒いマスクをしている
これでは外観からでは、人物の特定ができない
この中にシザーリオ・ヴァイオラ本人も紛れているのだろうか
――ドゥウゥゥンッ
――ダウ、ダゥゥゥンッ
太い柱の陰から、ルビーさんが、暴動鎮圧用のゴム弾のショットガンを乱射する
黒服軍団と敵に付いたフリー警護人の連中に対して牽制を掛け退避の時間を稼ぐ
――ドァゥンッドゥゥンッッ
降りて来たばかりの黒服の中から、ルビーさんに向かって数発の銃撃がある
やはりアメリカから来たプロは、人を撃つことに躊躇しない
もういいよっルビーちゃん怪我人も全員、こっちに搬送したから
ネコさんが叫ぶが銃撃でルビーさんは柱から動けない
番場ちゃん、これを使って
バービーさんが、番場さんに手渡したのはブーメラン
さっきのブーメラン使いが落としていった物を、ネコさんたちが回収してくれていたんだ
了解援護します、ルビー姐さんっ
女性なのに、普段から鋼球付きの重いフレイルを振り回している番場さんの腕力は、とにかく物凄い
くおんっ、ちくしゅおおおおっ
ブーメランは、ぐわんぐわんっとトンデモない勢いで、黒戦闘服の連中たちの群れに飛び込んでいく
パニックになってしまって足が止まってしまう素人たちの中をすり抜けて、確実にブーメランの直撃から逃れようとする戦闘員が何人か居る
こいつらがヴァイオラの手下たちか
ルビーさんは、その隙にロビーの大きな柱から、仲間たちの方へダッシュする
回廊の下にルビーさんのしなやかな身体が飛び込んで来た瞬間
防弾扉、降ろしてっ
ネコさんが、監視カメラに向かって叫ぶ
回廊の2階の天井から分厚い鉄の板が、シャーッと降りてくる
ダズーンッ
回廊の1階部分は、完全に鉄扉で隔離される
慌てる敵の連中
回廊の2階部分バルコニーの様になっている場所に、工藤父が現れる
そう言えば、ずっと姿が見えないと思っていたけれど
ようこそ、シザーリオ・ヴァイオラとその愉快な仲間の皆さん歓迎するぜ
ニヤッと微笑む工藤父
黒服の男の一人が、工藤父をピストルで狙おうとするが
別の男に止められる
どうして、ここで工藤父が出て来たのか不思議に思ったのだろう
シザーリオ・ヴァイオラくんは、アメリカ人だが子供の頃に、日本に居たことがあるんだろだからきっと判ってくれると思うんだが
工藤父は、笑顔のまま黒服の軍団を見下ろしている
日本のコント番組は、時々大掛かりなセットを組むんだよ伝統的にね
黒い戦闘服の連中は、あいつは何を喋っているんだという顔で、工藤父を見上げている
ほんじゃま、いきますっ
スウっと右手の拳を握りしめてポーズを取る、工藤父
不思議の国のアリスちゃん、どうか願いを叶えてねぇ天国行きか、地獄へ堕ちるかここは一発
スバッと、大きく手を天に向かって突き上げる
炸裂ぅっ石破天井拳ッッ
バホォッッッ
その瞬間ロビーの天井に、亀裂が走る
ヒィィィト・エンドッ
ドバァァァァッ
割れた天井から大量の水が、一気に零れ落ちる
黒服の戦闘員たちの真上に
あわぁぁ
うわらばっ
突然、落下してきた噴流に戦闘員たちは、押し潰されて流されていく
うわっはっはっは諸君、また会おう
水責め地獄と化した1階ロビーを眺めて、高笑いしながら工藤父は去って行った
3階がスポーツジムで、プールもあるなんて変な作りだと思っていたけれどこういう仕掛けになっていたとはね
マルゴさんが、映像を見て苦笑している
本当は、ロビーに放火されたりした場合の消火用のシステムなんです
まさか、こんな風に使用するとは
美智が、ぺこりと頭を下げて
すみません、父は短絡的な傾向が強い上に、派手なことが好きなので
いや、ちょっと思い切りが良すぎるけれど良い作戦だと思うよ突入してきた大人数の敵の勢いを削ぐことができたしこれで、あちらさんは状態の立て直しにしばらく時間が掛かるよね
エレベーターの制御は、1階からではできませんし非常用の発電機も上階にありますから、1階を占拠されても私たちは困りませんここから先攻撃側は、複数のグループに分かれて1階ずつ階段を上がって侵攻して来なければならないでしょうねもっとも、防衛側の各階ごとの待ち伏せに遭遇することになるでしょうが