ミナホ姉さんが、ハァと溜息を吐く
まあねあの3人からしたら、香月さんが、どんな手を使ってでも白坂守次氏を失脚させ、新聞社とテレビ局を手に入れようとしているとしか、思えなかったんだろうね白坂創介の件は、白坂家に揺さぶりをかけるための作戦でもしかしたら、白坂創介の罪も香月さんがでっち上げたものかもしれないって想像しているかもしれないよ
ホント失礼しちゃうわ
あの3人は、ミナホ姉さんの復讐をジッちゃんの作戦の一部としか思っていないなんて
黒い森の人間の激しい復讐心に少しも気付いていないっていうのか
いずれにせよあの3人は白坂創介のことなんて、どうでもいいんだよ
そうですわね白坂博光さんや山田副社長にとっては自分たちの新聞社やテレビ局だけが、大切なんでしょうし白坂信子さんに至っては自分の息子が、名目だけでも白坂家の当主になれればそれでいいんですもの
一族の人間だとしても新聞社やテレビ局に籍を置いていない、広告代理店の一社員のことなど関心は無いのだろうね
白坂創介のスキャンダルで、社会的に致命傷を負うのは彼の近い親族つまり、ずっと白坂創介を可愛がっていた白坂守次だけだと思っているんじゃないかしら同じ白坂家でも、自分たちには、責任はないと思っているんでしょうね
だからさあの3人は、最初の段階では香月さんに対して強気だったんだよ
白坂守次の失脚が現実的になった今
次の白坂家のグループ企業を担うのは、自分たちだという思いがあったのだろう
自分たちには、白坂創介のスキャンダルは関係無い
むしろ、白坂守次失脚後のグループ企業をまとめるためには、絶対に自分たちの力を必要としてくるはずだと思い込んでいた
だから、私は思いきり尻を蹴飛ばしてやったんだああいう馬鹿な連中にナメられるのは仕方無い勝手に向こうが私の思惑を勘違いしているのだからなだから、そういう時は思いっきり蹴飛ばして、思い知らせてやるんだ二度と、私に対してナメた真似をしないようにね
でも情けないけれど、世の中のほとんどの人たちも、あの3人と同じ見方をしているんだと思うわ
世の中の一般の人たちはともかく政財界の人たちは、今回の件は、どこまでも香月様が白坂守次に仕掛けた闘いという風にしか見えないんでしょうね
見方によっては、ジッちゃんが無理矢理、白坂家の報道ネットワークを奪い取ろうとしているみたいで
ジッちゃんが、一方的に悪者にならないか
私はそれで別に構わんよ
君はもう私の家族になったんだ家族のためなら、私は多少の陰口ぐらいは我慢するよもっとも私は元々、敵の多い男だ今更一つぐらい罵られるネタが増えたところで、どうってことはないそれに
日本の報道機関の再編は、いずれ手を付けねばならないテーマだと思っていたせっかくの機会だから、着手するよ御名穂くんも克子くんも、協力して貰うぞいいね
ミナホ姉さんは、ジッちゃんに頭を下げ
ここまでしていただいた以上、あたしたちのできることは何でも致しますわ
ジッちゃんは、ジロッとミナホ姉さんを見て
しかし君は、まだまだ他人行儀だな早く、私をお祖父様と呼びたまえ
ミナホ姉さんは、緊張している
まあ少しずつ慣れてくれればいい君と克子くんには、経営について徹底的に仕込むからな
驚く、ミナホ姉さん
君たちがフォローしてくれなかったら、誰が、みすずと瑠璃子の補助をするんだね私塾の連中が使い物になるまで、まだしばらく時間が掛かるそれに、あいつらは表向きの仕事は任せられるが裏の方は上手くはやれんだろう君たちは、裏の世界にも顔が広いだろうし
しかし、あたしたちは黒い森の
元・娼婦という単語が出る前に、ジッちゃんはミナホ姉さんの言葉を遮る
過去は、過去だ気にするなむしろ、その過去のおかげで君たちには多くの人脈があるはずだ
ミナホ姉さんも克子姉も黒い森の顧客だった政財界の重鎮たちをたくさん知っている
ああいう大物たちと、どうやって渡り合っていけば良いのかも君たちは、よく知っているその能力をみすずと瑠璃子のために活かしてはくれぬか
ジッちゃんは、2人を見た
でもあたしはパン屋さんがやりたいんです普通のパン屋さんが
克子姉が、苦しそうに言う
克子姉パン屋の方は、オレに任せてくれよ
克子姉と同じくらい美味しいパンが作れるように、オレ、努力するから毎日、たくさんパンを作って克子姉には、味見して貰うからそれで、克子姉がオッケーしてくれたパンだけ売るからさ
あっ、あたしもヨッちゃんと一緒にパン作るよっ売り子もやってあげるっ
寧さんが笑って、そう言う
もちろん新商品とかは、全部、克っつんが作るんだよっそれから、もちろん忙しく無い時は、パン作りも売り子も手伝ってね克っつんのお店なんだからっ
うんあたしも手伝うよ
寧さんの言葉にマルゴさんも、そう言ってくれた
美智、あなたも手伝いなさい
みすずが、美智に言った
パ、パンでございますか
美智は不安そうな顔をしている
大丈夫だオレもこれから克子姉に作り方を習うんだから一緒に、教わろうどっちが先に美味いパンを作れるようになるか競争だ
競争となると美智の中の闘争心に火が付いたらしい
どっちにしろ
この子には、料理とか女の子らしい体験をもっとした方がいい
あたしも協力するわ今のうちのお店は移転させて克子のお店とお隣同士にすればいいのよそしたら、お店の経営はあたしが見てあげられるでしょ
渚も、そう言ってくれる
克子姉は、涙目で
バカね渚は、こっちよ
こっち
あんただって、大物の知り合いがいっぱいいるでしょ
克子姉は渚にも、みすずたち香月家のフォローに加わるように示唆する
そっかそうだわね
渚が、ニコッと笑う
仕方無いわね家族のためですものねっ
瑠璃子が、オレに言う
あの助けていただくばかりでは、申し訳ございませんわたくしにも、何かお手伝いできることはないでしょうか
じゃあ、瑠璃子もパンを作ってくれ
超お嬢様の瑠璃子をお店に出すのは色々と心配だけれど
店の中でパンを作るのは、問題無いだろう
判りました美子も一緒に作りましょうね
こう見えても美子は、お菓子作りが得意なんですよ
まあ、即戦力ね
渚が、ニコニコ笑って美子さんを見る
美子さんは瑠璃子と一緒にできることを見つけて、嬉しそうだった
麗華お姉さんはどうパン屋さんとか
マルゴさんが、麗華に振る
克子ちゃんのパン屋さんはパンを売るだけですか
麗華が、真顔で克子姉に尋ねる
ついでにカフェをやったりはしないのですか