今までは、お互いの心の内がよく判らなくて疑心暗鬼だったんだろうけれど
現在のみすずと瑠璃子は、心と心の信頼関係が築けている
ですからわたくしとみすずお姉様の関係には、お兄様という仲立ちは必要ありませんみすずお姉様が、心底お兄様を愛しておられるということは判っておりますしわたくしも、そのことは尊重しておりますがお兄様が、この段階で亡くなられたらまた別の選択肢が生まれるということを、つい考えてしまいます
香月家を支配しようという野心を持っている男を排除して自分たちのパートナーには、企業グループの経営に参画させない
香月家は、みすずと瑠璃子で共同統治する
そこまではいいのだろう
しかし、瑠璃子にとっては別にオレでなくてもいい
どこの誰だか判らないオレよりも
家柄と血筋の良い男で野心の無い男を探して来た方が
この計画は、より堅固で完璧なものになる
うんそうだろうなよく判るよ
やっぱりオレ、ここで死んだ方がいいんだな
オレが死んだらあちこちに角が立たないで、丸く収まるような気がする
何だよ、瑠璃子
瑠璃子は困惑していた顔面蒼白だ
わたくし今、わざとお兄様を怒らせるために酷いことを申し上げました
本当にお兄様はみすずお姉様やわたくし、ひいては香月家全体のことまでお考えになって下さっているのですね
だってお前たちが幸せにならなきゃ、意味が無いじゃないか
わたくしのことも家族だと思って下さっているのですね
いつからいつからです
いつからわたくしを家族だと思って下さっていますか
いや、いつからだなんてはっきり覚えていないけれど瑠璃子のことを、瑠璃子さんでなく瑠璃子って呼んだ時から、腹は括っているよ
腹を括る
ああこいつはもう、オレの家族なんだから幸せにしなくちゃいけないんだって
覚悟はできている
結局あなたの頭の中には、いつも、あなた自身の幸せが欠落しているのね
さて、最後に尋ねるけれどあたしたちのことはどうする気あたしと、克子と、渚と寧は
4人の年上の女たちがオレを見る
そ、それはでも、ミナホ姉さんたちは強いから、オレがいなくても平気だろ
ミナホ姉さんが、ハァッと溜息を吐く
良い機会だから言っておくわ前に、あなたに言ったでしょ何があっても、最低一人の女は、あなたから離れないって
確かにそんなことを言われたと思う
そのことなんだけれどあなたの居ない時に、あたしと克子と渚の3人で取り決めをしたの
取り決め
もしあなたが死んだら、あたしたち3人の中でその時に一番あなたに近い場所に居た女は一緒に死ぬから
絶対にあなた1人では、死なせないから
大丈夫よ、残った2人が後のことはちゃんとするわみすずさんや、恵美やマナさんの面倒も見るわ美智さんや麗華お姉さん、瑠璃子さんたちのこともね
そうよ一番近い場所に居た1人だけが、あなたを追って死ぬの
あたしたち、そう決めたんだから
ミナホ姉さん克子姉渚
でも、渚は真緒ちゃんが
真緒のことも御名穂さんと克子にお願いしてあるわ
全部、あなたが死んだらってことが前提の話よあなたが、生きていてくれたら起こらないことなんですからね
渚が涙目でオレを見ている
あたしも死ぬよっヨッちゃんが死んだら、そっちの3人とは関係無しに
あたし弟が先に死ぬのを見るの、もう嫌だものヨッちゃんが死んだらあたしも一緒に死ぬとっくに、そう決めているよっ
寧さんは、ニコッと微笑んでくれた
だから、あなたは絶対に死んではダメなのよ
克子姉が瑠璃子に言う
告白するけれどあたしも渚もお嬢様も、元娼婦なの
娼婦
瑠璃子はジッちゃんによって性的な知識を制限されてきた
娼婦が何だか、判らないのだろう
悪い男に無理矢理誘拐されて奴隷のように働かされてきたのよ何年も
まあ、
あたし自分にはもう、人並みの幸せは来ないって思っていたわパン屋さんになるのがあたしの夢だったけれどそれはただの妄想で、絶対に実現する可能性は無いって思っていた
だってあたしの心も身体も、すっかり汚されていてこんなボロボロのあたしが、生き続けていて良いのかって、ずっと思っていたからあたしにはもう、誰からも愛される資格はないし、あたしも誰も愛してはいけないって思っていたあたしは汚れた女だから
そんなことは無いよ
あの頃のあたしは自暴自棄でパン屋さんになりたいっていう妄想だけで、何とか自分を保っていたわあなたに出遭うまでは
あたしという汚れた女に価値を見出してくれたのは、あなたよあなただけよあなたがいないと、あたしはダメなのまた、自暴自棄なだけの心が溺れた女に戻ってしまうわ
あたしも、そうよあたしは足を洗うことができてお花屋さんを始められたけれど、やっぱり自暴自棄になっていたあたしの過去は、あたしの心を蝕んでいたもの特に、真緒の存在は
真緒はあたしの宝よあの子のためなら、あたしどんな辛いことでも耐えられるでもあの子は、あたしが望んで産んだ子じゃないそのことがあたしの心にずっと突き刺さっていたの
真緒ちゃんは父親が誰だか判らない
渚が娼婦としてたくさんの男たちに避妊せずに犯され続けて、妊娠した子だ
あたし何度か、恋をしてみようと頑張ったの結婚相談所にも登録したのよお見合いもしたことがあるわでもどんなに素敵な人に出会っても、真緒のことを全て話すことはできなかったわいいえあたし自身のことも
渚は震えていた
あたしと克子は、高校一年生で誘拐されて娼婦に堕とされたあたし、一度も恋ってものを体験していなかったのだから、恋してみたかっただけど普通の男性には、あたしの過去も、真緒の出生についても、どうやっても話すことはできなくて
娼婦としての過去犯されて産んだ子
だから、あたしどうしても、恋ができなくてそれであたしも、自暴自棄で自堕落な生活をしていたわ
渚はお店の美少女店員たちをペットにしていた
男と恋愛できないから年下の女の子たちを誘惑していた
だけどねあたし、今、恋をしているのよあなたに
渚が、オレに言う
あなたはあたしを元娼婦では無く、真緒のお母さんでもなく1人の女の子として見てくれている愛してくれている
覚えているこの間あたしのお店を脅しに来たヤクザさんと交渉するのに、あなたが工場街の小さなお店にまで来てくれたじゃない
覚えているよ
お店に入る前に、あなた体操していたわよね
あれはちゃんと身体を慣らしておかないといけないかなって
すっごくおかしかった楽しかった一生懸命なあなたの気持ちが伝わってきて胸が熱くなったあの時、あたし高校生の頃に戻った気がしたの