関さんは、厳しい口調で言った
今もなお、工藤さんの配下の方々は闘っていらっしゃるのですよ
わたくしたちが、閣下の勅命でここに来たのもこれ以上敵の跳梁を許さないためです
関さんははっきりと、そう言った
一昨日、夕方に綺麗な虹を見ました
東京では、あちこちで見られたらしいです
完全な半円のアーチになった虹を見たのは、生まれて初めてでした
思わず、オーバー・ザ・レインボーを口笛で吹いてしまいました
何かよいことの兆候かと思ったのですが
その夜、交通事故の現場に出くわして、血まみれになった人を見ました
そういや虹は必ずしも良いことの兆候では無かったんでしたっけ
300.大人たちと
さて重役の皆さんに、お目に掛かりたいのですが
関さんは山岡部長を急かす
あの彼らも一緒にですか
山岡部長がオレたちを見る
勅命です山岡さんあなたも、香月セキュリティ・サービスの管理職なら、この言葉の意味はよくご存じだと思いますが
嘲りの眼で関さんは山岡部長を見る
判りましたおい、この人たちを中へ入れてやれ
山岡部長は、奥の部屋のドアの前で警護している紺スーツの巨漢2人に命じた
あのそれで、閣下は今どちらにいらっしゃるのです
恐縮して、山岡部長は関さんに尋ねる
教えられませんわ
私は警備部の部長です最重要警護対象者である閣下の現在地を知らないことには
ジッちゃんの居場所が判らないから山岡部長は、ジッちゃんよりも重要度の低い重役たちの警備をしているんだ
自主的に
襲撃者との戦闘は、工藤父たちがやっているし
そもそもホテル内に残った山岡部長の配下の警備員の数では、銃を持った敵との交戦は不可能だ
となれば、ジッちゃんの身辺を固めるぐらいしか、山岡部長にはできない
というかこの状況で、ジッちゃんの警護ができなくては、警備部長としてのメンツが立たない
なのに山岡部長には、ジッちゃんの所在地が知らされていない
仕方無いので山岡部長は、次善策として香月グループの重役たちの警護を自主的にしているのだろう
あなたには、教えられません
関さんは、キッパリと言った
私には教えられないと
少し興奮気味に、山岡部長は言う
あなただけではありませんから、ご安心ください工藤さんも、ご存じないですよ谷沢チーフはご存じだと思います閣下は、大徳さんと張本さんの警護で安全な場所に退避なさっています
関さんは、嘘を言う
地下の緊急避難室にジッちゃんの専任警護人の2人の男性はいない
しかし、ジッちゃんがその2人に護られていると知れば、取りあえず安心できるはずだ
普通の人間なら
あなたたちは、閣下の警護を専任警護人の方たちだけで独占しようというのですか
その山岡部長の言葉に関さんは
ハァと鼻で笑う
そういうお考えだから、あなたは信頼していただけないんですよ
全ては閣下のお考えですわたくしたち専任警護人は、常に閣下のご意志に従って行動していますあなた、本当に何も判っていらっしゃらないみたいですね
関さんが、山岡部長を睨む
山岡さんあなたは非常に考えの浅い方だし、無駄なお喋りがお好きの様ですそれに人の本質を洞察する眼にも欠けていらっしゃるみたいですねだから、警備部長ぐらいの軽い役職しか与えていただけないんでしょうね
山岡の表情が、強ばる
警備部をバカにするのか、あなたは
ご冗談をわたくしが小馬鹿にしているのは、あなただけです
小娘が
怒った山岡部長が、関さんに掴み掛かろうとするが
その瞬間に、関さんが高速で動く
フハッ
山岡部長の身体は空中をくるりと廻って
そのままドスッッンッ
強く、床に叩き付けられる
き、貴様ぁッ
起き上がろうとする山岡部長の眼前に麗華の撲殺ステッキがドスッと突き刺さった
特殊金属の石突きがカーペットを破って、コンクリートの床に突き刺さっている
マルゴさんは、寧さんを
美智は、オレを護っていた
雪乃は放っておかれている
あなた、今の見ていたわよね
関さんは、工藤母に言った
そこのあなたたちも
奥のドアをガードしている、2人の巨漢にも関さんは尋ねる
み、見ておりました
工藤母は呆気に取られて、答えられなかったが
山岡部長の部下の2人は、関さんに答えた
先に手を出したのは、山岡部長で今のは、わたくしの正当防衛よね
そ、そうだと思います
巨漢たちは、山岡部長の眼を気にしながら答えた
思いますでは困るわ後で、報告書を廻すから、サインして頂戴ね
関さんは、クールに言った
山岡部長が、関さんを見上げる
報告書だと
わたくしは、香月セキュリティ・サービスの人間ですけれど専任警護人である以上、社内の命令系統からは外れています直属の上司である谷沢チーフの命令よりも、閣下の勅命を優先することになっていますし事実上、閣下の直属の部下ですわですから香月セキュリティ・サービスの管理職社員であるあなたとトラブルを起こしたことは、閣下に報告する義務が生じます
私を脅迫するつもりか
関さんは、工藤母を見る
この頭の回転の鈍い人に、教えてあげて下さいませんかわたくし、もう相手をするのは嫌です
工藤母は情け無さそうな顔で、山岡部長を見て
関さんには、山岡部長を脅迫する理由も、メリットも無いわ
しかしこの小娘は今、この一件を閣下に報告すると言ったぞ閣下に、私のことを悪く吹聴するつもりなんだきっと
違いますわ
工藤母は、言う
関さんが報告しなければならないのは山岡部長とのトラブルを、あたしやこの部屋に居る人に見られたからです目撃者がいる以上は、きちんと閣下の裁定を仰がなければなりませんから
こんなことで、警備部と専任警護人の間にわだかまりを作るわけにはいかないじゃありませんかっそんなことも判らないの、あなたは
工藤母の言葉に、山岡部長は黙り込む
すみませんこの人、普段はこんなでは無いんです今日は、劇場以来失敗続きで閣下の信頼を損ねて見限られてしまったのでは無いかと感じて 、少しイライラして、気が立っていたんです申し訳ございません本当に申し訳ございません
工藤母が山岡部長のために、頭を下げる
山岡部長は、最初から考え違いをなさっていますわ
関さんが、言った
そもそも閣下は山岡部長には、最初から期待なさっておられません
その言葉に山岡部長は、深いショックを受ける
山岡部長に、閣下に信頼されるだけの能力がお有りならとっくの昔にトップ・エリートに選出されていますトップ・エリートだけが、香月セキュリティ・サービスの本当の仕事をする人間ですから