皆様も香月グループの重役ならば、お覚悟を決めて下さい
美智は、ムチを構えてじりじりと重役たちの方へ近付いていく
せ、関くん止めてくれ
重役の1人が、関さんに声を掛ける
そうだ、君は香月セキュリティ・サービスの人間だろう私たちを護る義務があるはずだ
残念ですわわたくしは、閣下の専任警護人ですしこの件に関しての処理について、閣下は全て、こちらの方にお任せになられましたからわたくしには、どうすることもできません
そう言って、オレを見る
こ、こんな子供に
はい閣下の勅命を受けたのは、この方でございますから
一堂の注目が、オレに集まる
おい、君その子を止めろ鞭打ちなんて
そんなことをされては、たまらん
そうだとも
重役たちは、口々にオレに言う
だいたい君は誰なんだ閣下とは、どういう関係なんだ
香月操の父の問いに子供の方の角田が、口を開く
ああ、こいつはですねぇみ
シュババババッ
みすずという言葉が発せられる前に、赤いムチが角田の足下を叩く
痛っぇぇぇぇぇ
ムチの先端で足の甲を叩かれた角田が飛び上がるッ
堅牢で分厚い革靴の表皮が裂けていた
今のはわざと護られている場所を叩きました
美智が、呟く
て、てめぇぇ
あなたは随分口が軽いようですね次は、口を引き裂きます
美智は赤いムチを構える
美智、本気か
ちくしょう、やれるもんならやってみろよっこの野郎
怒った角田が、美智に突進しようとする
部屋中の誰もが2人に集中したその時
ハァァァッ
不意に、美智のムチが斜め横に飛ぶ
美智はムチの方向を見ていない
見ていないのに赤いムチの先端は
確実に、高木風太の父親の腕を、打つッッ
ビシィィッ
うわぁぁッッ
高木風太の父親は、背広の内ポケットに手を入れたまま後ろに引っ繰り返る
動くな
次の瞬間麗華がササッと跳んで、撲殺ステッキを高木父に突き付ける
ゆっくり、ポケットの中の物を出しなさい
麗華の厳しい視線に高木父は、ポケットから手を引き出す
手に握られていたのは携帯電話だった
ちょっと、携帯を取り出そうとしただけじゃないか
そういう高木父に麗華は
部屋の中の人たちが、全員、あの子たちに注目した瞬間に
美智も口を開く
他の方たちの気は、全てわたくしに向かっていましたなのに、あなたの気だけは他のことに向かっていた
人間の気を察知する美智の能力は凄い
角田(子)と対峙する振りをしながら美智の心は、ずっと重役たちの気の方向を探っていたのだろう
関さんが、高木父の携帯電話を引き剥がす
画面を見て
ポケットの中で、画面を見ずにメールを打っていたみたいねきんきゅうじたいきゅうえんたのむ漢字に変換しようにも候補が読めないから、ひらがなだけで打っていたんだわ
送信先は
麗華の問いに、関さんは
ミスターとしか書いていないわ電話してみれば、すぐに判るでしょうけれど
まさかシザーリオ・ヴァイオラと直通なのか
いずれにせよ高木さん、あなたが裏切り者だったのね
関さんの言葉に高木父は、うな垂れる
高木さんが
いや、しかし
メールの文章が本当なら間違いないだろう
重役たちは、ざわざわとなる
父のすぐ後ろで、息子もガックリと肩を落としていた
確かに、高木父は新興グループの所属なのに、オレたちとの会話に絡んでこようとしたし
変な兆候はあった
そうかこいつだったのか
ジッちゃんも言ってたもんな
裏切り者は新興グループの中にいるだろうって
もちろん気絶なんかさせてあげませんからね高木さんには、別室で尋問を受けていただきます
ヴァイオラとの繋がりを何とか聞き出したい
とにかく、他の重役の方とは離れて貰います工藤さん
関さんは、美智でなく母親の方を見る
工藤母は、すっかり気が動転しているようだ
谷沢チーフと連絡を取って、尋問用の部屋を一つ用意して下さるように言って下さらないかしらこのフロアでは無い部屋よそれから重役の方たちも、この部屋から移送した方がいいわねこの部屋の位置は、すでに敵に特定されているでしょうから
工藤母は、慌てて壁のインターフォンを取る
谷沢チーフとは、ホテルの業務用の回線で連絡を取り合っているらしい
その間に、麗華が高木父を引き起こす
逃げたら手足を一本ずつ、破砕していきますいいですね
撲殺ステッキを床にドンと突いて麗華は、高木父を牽制した
あの僕も、父と一緒に行ってもいいですか
高木風太が、関さんに言った
僕はもう他の皆さんとは一緒にいられませんから
父親が裏切り者なら自分も、もう私塾にはいられない
そう判断したらしい
そうねあなたも、一緒にいらっしゃい
さてとりあえず、この部屋での任務は終了ね
関さんが、オレに微笑みかける
美智が、うんとオレに頷く
麗華も、ニコッとオレに微笑んだ
何か、釈然としない
心がまだワサワサしている
オレの反応に、不安になったのか関さんが、オレを覗き込む
いえ何か、気持ち悪くて
美智が、オレの言葉に再び室内の気を測る
麗華も、高木父を捕まえたまま重役たちの顔を見る
何がスッキリしないんだい
振り返るとマルゴさんと寧さんが、オレを見てにっこり笑っていた
2人とも、何かに気付いている
足りない気がするんです
ふぅん何が足りないんだい
それが判らないんですよ
オレは、マルゴさんに答えた
どうしてだか判らないんですけれど何か、まだ解決していないような気がするんです大きく何かを見落としている様な
まあ、そうやって勘が働いてくるようになっただけヨッちゃんも、進歩したってことだよっ
明るく寧さんが、微笑む
やっぱり見落としがあるんだ
えっ、嘘あんた、こんな簡単なことも気付かないの
オレたちの一番後ろに居た雪乃が、オレの困り顔を見て笑った
ああ、教えてくれよ
オレがそう言うと雪乃は
いつから、裏切り者は1人きりだと思い込んでいた
裏切り者が複数居るっていう可能性もあるんだ
しょうがないよ香月さんはわざと君に、そう思い込むように仕向けていたから
でももう一度、よく考えてご覧今日、君は香月さんを通して、色んなことを見て来たよね
香月家のこと
私塾のこと
白坂家の中のこと
そういうものを見て得てきたことを使って改めて、考えてご覧よ
何を考えるんです
裏切り者の目的さ
目的
裏切り者は最終的に何を狙っていると思う香月さんを殺そうとしていると思う