自分の会社の部下が一緒だから、機密だらけの本部に入れて、何でも見せてくれたっていうより変な子供が混じっている集団を、入り込ませてくれるってのおかしいでしょ
そうだけどじゃあ、何で谷沢さんは、そんなことをしたんだ
雪乃は言う
決まっているじゃないあたしたちを油断させるためでしょ
油断させる
オレはこんなにお前たちに心を開いているってことを示すためにわざわざ、機密のある場所まで入れてくれたのよ
あたしもそう思うよ
マルゴさんがコンピューター端末を接続しながら、言った
もちろん、あの人はあたしたちの敵じゃない悪い人ではないでも、あたしたちに何かを隠そうとしているそれは、間違いない
ポケットに入れておいた無線機がぷるぷると振動する
地下の緊急避難室からの通信か
無線機を持っている全員がイヤホンを耳に入れる
もしもし、旦那様
その声は、みすず
大変です旦那様
みすずの声は、緊迫していた
お祖父様と黒森様がいなくなってしまいました
ジッちゃんとミナホ姉さんが
昨日、今日と東京は朧月が綺麗です
父の近況
院内感染で肺炎になったりして、長いこと入院していましたが
来週にようやく退院できることになりました
食事は、先週からお粥的なものになりました
それ以前は、アポロ時代の宇宙食みたいなご飯でしたから
ポタージュ味のゼリーと、どろっとした飲み物とか
手術から1ヶ月やっと、人間的な食事になってきて、父の様子も大分普通になってきました
やっぱり、食事って大事ですね
本当なら、病院でもう少しリハビリする方が良いのですが本人がどうしても帰宅したいということで、退院が早まりました
しかし、この1ヶ月寝たきりでしたから、足腰は衰えていますし呆けも完全には治っていません
帰宅してからも、苦労は続きそうです
皆様には、ご心配いただき、本当にありがとうございました
心より、感謝致します
308.香月健思
いなくなったってどうやって
オレが尋ねると通信機の向こうのみすずは
お祖父様が2人だけでお話がしたいとおっしゃって、監視室の方に黒森様とお二人だけで行かれたんですそのまま、ずっと出ていらっしゃらないので
ジッちゃんとミナホ姉さん
おかしいなと思って、お部屋のドアを開けてみたらお二人とも、いなくなっていたんです
二人だけで地下の緊急避難室から脱出した
もしもし、あたしよ判る
通信がみすずから、克子姉に変わった
部屋の壁のパネルの中に一人ずつ、上に脱出できる昇降装置が隠されていたわ下から上にしか行かれない造りになっているから、この装置を伝わって敵が降りてくることはできないと思うわ
そんな脱出経路が、隠されていたのか
どうする何なら、あたしが、この装置を使って追っ掛けてみるけれど
オレはマルゴさんを見る
克子さんはそのまま、そこに居て今から追い掛けても、ミナホと香月さんには追いつけないと思うよそれに、昇降装置の先がホテルのどこに通じているのか判らないしね無闇に追っ掛けて、敵の部隊と遭遇したら危ないよ
ジッちゃんは、ホテル内の構造を知っているから脱出装置で抜け出したんだろうけれど
ホテルのどこに通じていて、そこから先の秘密経路もあるんだろう
でも、克子姉にはそんな知識は無いのだから一人で追い掛けさせるわけにはいかない
でも、あたしお嬢様が心配なんです
克子姉は不安そうに、そう言う
気持ちは判るけれど克子さんは、そこで渚さんと一緒に他の子たちのメンタルをケアしてあげてきっと、みんな不安になっていると思うから
うんみすず、メグ、マナ、瑠璃子、美子さんみんな、怯えているはずだ
克子姉オレの声を部屋のみんなに聞こえるようにしてくれる
オレの提案に、マルゴさんが頷いてくれる
とにかく、安心できる言葉を言ってくれる相手をあの子らは求めているはずだ
ええ、ちょっと待って
克子姉が、通信回線を開くまでしばし待つ
もしもしオレだ状況は今、みすずと克子姉から聞いた
ヨシくん、そっちは大丈夫なの
緊急退避室の方は、一つのマイクで音声を拾っているんだな
マナとメグの声が、同時にオレの耳に飛び込んで来た
申し訳ありませんお兄様
オレに侘びるのは瑠璃子か
お兄様がお命じになられていたのにわたくし、お祖父様から眼を離してしまいました
済んだことは、もうしょうがないよ気にしないで
今更、そんな話をしてもラチが開かない
ジッちゃんは元々、オレたちだけを緊急避難室に退避させて、自分はホテルの上階へ戻るつもりだったそれは判っているよな
はい、そういう兆候がございましたからわたくしは、絶対にお祖父様を見張っていなければならなかったんです
瑠璃子、本当にその話は、もういいから瑠璃子たちの監視は、ちゃんとできていんだよだから、ジッちゃんはミナホ姉さんと二人きりになる口実を作って、瑠璃子たちの眼から逃れたんだろ
はい、まさか黒森様もご一緒に脱出なさるとは思いませんでしたので
ジッちゃんはミナホ姉さんに脱出を見逃して貰う代わりに、なぜどうしても上階へ行きたいのかの理由をミナホ姉さんに説明したんだと思うそして、それを聞いたらミナホ姉さんも、一緒に上階へ行こうと決心したんだよ
そうとしか思えない
いずれにせよジッちゃんも、ミナホ姉さんもオレたちを黙って見捨てるような人じゃないそうだろ瑠璃子
はい、お兄様それは判っているのですが
不安の暗い影が、瑠璃子を覆っている
みすず、瑠璃子のことを頼む美子さんもお願いします
瑠璃子は、ジッちゃんを信頼しきって成長してきているから
何か理由があるのだろうということは理解できてもジッちゃんが、自分を置いて無言で立ち去ったという現実に、心が対応できていない
とにかくジッちゃんとミナホ姉さんの行方は、オレたちで調べてみるから何か判ったら、すぐに連絡するよ
お願いしますお兄様
ああメグとマナも、みんな仲良くして待っていてくれ
判ったわ、ヨシくん
渚も頼むよ
はいこっちの部屋のことは任せておいてあなた
渚が部屋全体の様子を見てくれるなら、心配は無い
瑠璃子の不安は、これで少しは解消されるはずだろう
真緒ちゃんは、どうしてる
すっかり眠ちゃっているわ今日は、色んな人と会ったから、ハシャギ過ぎて疲れているんだと思うの
そうか今日は、一日、大騒ぎだもんな
小さな真緒ちゃんの一日は、もう終わってしまっているけれど
オレの一日はまだ終わらない
今が勝負の瀬戸際だ
克子さんそっちの監視室って、ホテル内の全てのデーターが送信されて来ている