関さんが、前に出る
記憶って各フロアごとに違う迷路になっているんだろそれでここは25階だから
憶えなければいけない地図は25枚分だ
大したことないわ元々、このホテルの内部構造は熟知しているし各階ごとの迷路のパターンだけ憶えればいいんだから5分下さい全て、頭に入れておかないとね
形のある地図にしてしまっては、敵の手に渡った時が危ないから
頭の中に記憶してしまうしか無いんだ
大丈夫よあたし、こういうのは得意だから
さすがトップ・エリート警護人
マルゴさんから端末を受け取ると関さんは、物凄い勢いで画面上のマップを記憶していく
へぇ閣下は、こんなところまであなたたちには情報開示して下さるのですね
端末機器の画像を後ろから眺めながら香月健思が言った
それどういうことです
思わずオレが、尋ねてしまうと
いやねここよりも上の階に、重役たちや私塾の皆さんがいらっしゃいますが彼らには、こんな情報は開示されませんよまあ、下手にホテル内の地図なんか見せたら、あの人たちの場合はフラフラとその辺を歩き回ったりしそうですしね
確かに、香月操とプリンス派の一党なら、そんなこともやりかねない
あいつら、怖い物知らずだからなぁ
ホントみなさんは、閣下に信用されているみたいですね
香月健思は、ニヤッと笑う
信用されていて何で、こんなところに閉じ込められているのよ
お茶碗で熱いお茶をグビグビ飲みながら二つだけ用意されていた、お茶菓子を1人でバリバリ食べている
何かすげぇな、お前
信用しているからこそ大事になさっておられるのでしょう
香月健思は、そう答えた
前に閣下から伺ったことがあるのですが
ジッちゃんから
人間の世界には表と裏があります表しか知らない人間は弱いです香月操さんたちみたいにねでも裏の悲しさ、苦しさを知らないと言うことは屈託の無い、真っ直ぐな人間を形成します
確かに香月操は、香月家の表しか知らないで育ってきた
馬鹿だし、自尊心が強くて、迷惑な人間だけど真っ直ぐではあるひねくれた、嫌な人間では無い
逆に裏を知っている人間は強いが、裏ばかりを知りすぎた人は性根が曲がってしまいます意地の悪い、陰険な人間になってしまいます
それもそうだな
裏の世界ばかり見せられてきたらそれはそれで辛い
一番良いのは裏というものの存在を知っていながら、自分自身は表にいる人間なのだそうです裏との交渉は、誰か人を立てて自分自身では、決して裏世界とは接触しないそういう人間になれと、閣下は私塾の僕たちにいつもおっしゃっているのです
うんその意見は判る
裏なんてなるべく、関わらない方がいい
オレは黒い森という裏組織の人間だから、心からそう思う
結局大切なのは、バランス感覚です自分の所属している場所に従って裏と表をバランス良く、受け入れなければならないのです
表の人間は表の人間として
裏の人間は裏の人間として
ですから閣下は、ご自分がホテルにお呼び寄せになられた人々を、3つのグループに分けたのですね
それぞれのグループによって知らせるべき情報に差異を作るのは当然のことです裏と表の比率が違うのですから
香月健思は、モニターに提示されているホテルの図を指して
一番上の階に居る重役と私塾の連中には、ほとんど情報は伝えられていないはずです今、このホテルを襲撃している敵の目的さえ、知らされていないでしょうただ、下のフロアでの幾つかの戦闘をモニターで見せられて震え上がっているだけですあの人たちはみんな、表の人間ですからね今回は、裏の世界の恐ろしさを存分に知るだけで充分だと閣下はお考えなのでしょう
うん上の階のやつらは、今回の襲撃の真相の全てを知らなくていい
いや、知って欲しくない
寧さんの悲しい過去から続く、因縁のことなんて
それから皆様のお話を伺うと、みすず様や瑠璃子様たちは、ホテルの地下に避難なさっておられるようですねこの方たちは、上の階の方たちよりも裏の世界について、すでに知っておられるまたは、知っておいた方が良いと閣下がご判断なさったのでしょうしかし、完全に裏の世界に染まってしまってはいけないと、閣下はご心配なさっている
そうだみすずや瑠璃子が、今後、香月家を切り盛りしていくためには
裏の世界のことは、知らなくてはいけない
しかしだからといって、裏の世界の住人になってはいけない
これは、メグやマナもそうだ
黒い森の中に居たってオレは、あいつらに裏の世界の仕事はして欲しくない
これ以上は、染まらないで欲しい
娼婦を引退した克子姉や、渚だって
そして現在、この部屋にいらっしゃる皆さん皆さんは、下にいらっしゃる方たちより、さらに裏の世界に近い人なんだと思います
香月健思が、オレたちを見渡す
マルゴさんや、寧さんそれに、オレは
黒い森の中でも、直接、作戦行動をする実行部隊だ
関さんに、麗華、美智
警護人という名目ではあるけれど目的のためには、手段を選ばない
オレたちは全員法に触れることをすることに躊躇しないという意味では、同類だ
香月健思の言う通り裏の世界の方に寄っている人間なんだと思う
でも皆さんは、完全な裏の人間では無い悪に染まった人間ではないようですねここしばらく皆さんの言動を見て来てそう思いました
皆さんは裏の世界の深淵と対峙するために、あえて裏の側に寄られているのだと思います閣下にとっては、裏世界へカウンター攻撃を仕掛けるための人材として、皆様に期待なさっておられるのだと推察致します
オレたちはそんなんじゃねぇ
だからこそ完全な情報を開示してしまうと、皆様は裏の世界に堕ちてしまわれるのではないかと、閣下は思われているのでしょうだから、閣下は、皆様をここに閉じ込めこれ以上の情報が伝わらないようにしておられるのだと思います
自信満々に香月健思は言った
とても面白い意見だと思うけれどあたしは、そうは思わないよ
マルゴさんはそう応えた
それよりさあたしたちにそんなことを言う、君の立場はどこにあるんだい
そうだ香月健思は
彼自身は、自分がどのグループに属すると思っているんだ
僕は上の階へは、もう戻れません僕の父親は、香月グループの裏切り者ですからいえ最初から、僕には他の私塾の連中の様な野心はありませんでしただから、私塾を追放になることは、僕にとっては好機です僕は、やっと自分が行きたいと思っていたポジションに着くことができる
香月健思は、ニヤッと微笑む
僕は裏の側の人間になりたいのです
日曜日です
今、東京は台風接近で大風が吹いています