もう黙んなよくそ馬鹿
黙れって言ってるのあたしたちが許可するまで、二度と口を開くな
シュルルンッ
ズバッ
美智のムチと麗華の撲殺ステッキが、同時に香月健思の前の床を貫く
次は、当てます
力ずくでないと、判りませんか
美智と麗華の殺気にさすがの香月健思も黙り込む
裏の世界ではさ自分を舐めたやつは殺してもいいんだよ舐められたら、殺してでも仕返しするそうでないと、骨までしゃぶられるからね相手がどれだけ権力者だろうと嚙み付いて殺すよあたしたちは全員、自分の牙を持っている人間だからね
だから裏の世界では、礼儀はとても大切なんだよ礼儀を弁えない人間は、死んで詫びを入れて貰う表の世界みたいに、権力者は何をしてもいい強い人間にはペコペコ頭を下げて我慢するってことにはならないんだ最初っから、生きる、死ぬ殺すか、殺されるかの世界に居るんだから
というか、ここで殺しておいてあげようよその方が、この人のためなんじゃないの
寧さんの言葉に、関さんは
申し訳ありませんが生かしておいてあげて下さいここで死なれると、わたくしと藤宮さんが困ります
うん二人とも、香月セキュリティ・サービスの所属だもんな
眼の前で香月健思に死なれるのはまずい
そんじゃあさ、君、一人で敵の中に突撃してよそれなら、関さんたちの責任にはならないでしょ大丈夫よ、ダダドムゥさんはちゃんと生きて帰って来たから鉄扇の代わりに、ハリセンぐらいは持たせてあげるわっ
興奮気味に、寧さんは言った
いやそれは
香月健思が、口を開こうとすると
喋るな
ギロッと美智が睨む
この人の自分勝手な論理展開を聞いているのは、頭に来るけれどさでも、そのお陰でちょっと見えてきたよ
ミナホがどうして、香月さんと一緒に地下の部屋を抜け出したか
オレは、思わず尋ねる
ミナホ姉さんの真意をオレは知りたい
さっき、この人が言ってたでしょ重役や私塾のグループと、みすずさんたち、それにあたしたち香月さんは、それぞれのグループに対して、違った情報制限をしているという話それは本当だと思うんだ
それぞれにアクセスできる情報量を規制している
やっぱり上の階の人たちには、そんなに裏の世界のことを知って欲しくはないだろうしみすずさんたちにも、見せたくないことはあるんだと思うよ香月さんにとっては
あたしたちに見せないようにしていることが何なのかは判らないけれどあたしたちは、裏の実行部隊だからね今更、隠し事をされても困るんだけれどまあ、あたしたちのグループに対する情報制限は置いておいてそれでもとにかく、上階と地下の人たちに対する香月さんの気持ちは、この人の分析通りで正しいと思うんだ
マルゴさんは、香月健思の顔を見る
しかし、だとしたら香月さん自身は、自分をどういう立場の人間だと思っているんだろうって考えてみたんだよ
ジッちゃんはジッちゃん自身を、どう思っている
自分の身内に裏のことは、あんまり知って欲しくないと願っている香月さんはつまり、自分自身はとっても裏に詳しい人間だと思っているわけだよね
確かに香月さんは、裏の世界との接触は多いし、普通の表の世界の企業経営者よりは、遥かに裏に詳しいと思うよでも
マルゴさんは嘆息する
それは全て、間に谷沢チーフや美智ちゃんのお父さんみたいな人を入れての話だよね香月家の当主が自分一人で裏の人間と接触することなんてあるはずがないいつだって、谷沢チーフがしっかり後ろから見張っているはずだよ香月さんの知らないところで、根回し工作だってきっちりやっているはずだ
うんそれはそうだろう
どんな時でも、谷沢チーフはジッちゃんが危なくないように、陰から監視しているずだ
香月さんも頭ではそのことを判っているんだろうけれどでも
香月さんは、自分もまた他の重役たちと同じ表の人間だってことが、判っていないんだよあの人は、そこに居る香月健思さんと同じでずっと裏の世界に憧れてきた人だから
裏に憧れてきた
だから香月さんは黒い森に対して、優しいんだよあの人が昔から黒い森や黒森楼の娼館に寛容なのはお屋敷に来て裏の雰囲気を味わうのが楽しみだったからさ香月セキュリティ・サービスみたいな組織を自前で作ったのもそうだよ裏の世界に憧れているからそうやって裏と関わる機会を増やしたかったんだと思う
そうか普通は、自分の名前を冠した要人警護の会社は作らないよな
そういう会社が必要だと思ったら香月グループとは別に、こっそりと作る
香月家とその会社には、何の関係も無いように見せ掛けるはずだ
その方が対裏組織としては、自由に行動しやすい
あ、だから
工藤父は、香月セキュリティ・サービスには所属しないで自前で工藤探偵事務所をやっているんだ
事務所の車にあんなに大きく会社名を書いてあるのも香月セキュリティ・サービスとは仕事上の付き合いはあるが、自分は別会社の人間だということを、裏社会の人たちにアピールするためだろう
その方が裏の人間たちは、工藤父に気安く接してくれる
問題なのはさそうやって裏と接する機会が増えたことで、香月さんがいつのまにか自分も裏に近い人間だって思い込んでいるってことさ
ジッちゃんはそう思い込んでいる
自分はとっても裏に詳しいという気持ちが強くあるから
身内には余り裏について知って欲しくないという気遣いが生じる
それが情報の制限という形で示されている
でも香月さんの本質は表なんだ香月さんは、裏の人間じゃないその認識のズレはとても危ういと思う
ミナホは二人きりの部屋で、香月さんから本当の目的を聞いたんだと思うよ
本当の目的
香月さんがこのホテルを一棟丸ごと犠牲にしてでも、シザーリオ・ヴァイオラの一党をここに呼び寄せなければいけなかったわけをね
何かの意味が目的が、あるはずなんだ
そして、その目的の達成のためには香月さんは、地下から出て上階に戻る必要があったその理由をミナホに話してミナホを納得させたんだと思うだけど、ミナホは香月さんを一人だけで上階へ戻らせるのは危険だと感じたんだろう
だからミナホ姉さんも、一緒に上階へ向かった
ミナホは骨の髄まで、本物の裏の人間だからねちゃんと、裏の人間として思考し、行動することができる自分が香月さんの側にいた方が良いと判断したんだと思う
谷沢チーフがおられるじゃないですかその役は黒森様でなくても、今まで通りチーフが閣下のお側に付けば問題無いのではありませんか
関さんが、疑問を発する