香月健思は、自論を述べる
さあ、どうだろうね
マルゴさんは、背後の様子をチェックしながら答える
ミス・コーデリアは恭子さんと組んでいた過去のある人だからねだとしたらどんなことだって有り得るとあたしは思うよ
マルゴさんは警戒を緩めない
先頭の美智が立ち止まった
どうした美智
何か変な気を感じます
美智はスッと腰を落とし、ムチを構える
後ろもだよ
来るっ
マルゴさんは、香月健思の腕を引っ張り隊列の内側へ押し込む
関さん、麗華お姉さんっ
関さんは前の美智のフォロー
麗華は後ろのマルゴさんの方を見る
違うわ、そこに何かいるっ
前でも後ろでもなくすぐ横の天井を、雪乃が指差した
ハッと見上げると
天井に、保護色のグレーの戦闘服を着た人間が貼り付いている
完全に気配を消していた
天井の戦闘員が上からオレたちに襲いかかるッッ
311.チーム
頭下げてッ
マルゴさんが振り返りながら、天井から襲って来る敵にナイフ型の手裏剣を投げ付けるッ
ドスッ、ドスッッ
手裏剣がグレーの戦闘服の敵の腹に突き刺さるが防刃チョッキを着込んでいるらしい
敵は態勢を崩しただけで、ダメージは無いようだ
オレは寧さんを庇う腰を落として、なるべく身体を小さくして
雪乃が後ろから、寧さんにしがみついていた
マルゴさんが全速で走って、グレーの敵に飛び掛かるッ
その瞬間オレたちの前後に潜んでいた敵も行動を起こす
やらせないッッ
マルゴさんと入れ違いに麗華が後方の敵に突進するッ
美智ちゃん、下がって
関さんが、前方に姿を現した敵に拳銃を向けるッ
ドゥンンッッッダァウンッッ
牽制として、2発銃撃するッッ
敵には当たらないが正確な射撃は、オレたちへの接近しようとする動きを止める
こちら、お任せします
美智は、その様子を確認するとマルゴさんと交戦しているグレーの敵の方へ向かう
イヤァァッ、ハァァァァッッ
マルゴさんは、金属製の伸縮式警棒みたいな物を引き抜いて、天井から降りて来たグレー敵に殴り掛かる
グレーの敵は、大きなコンバット・ナイフを抜いて、応戦す
ガキッバキキキッ
金属と金属が激しくぶつかり合い、火花を散らす
ハィィ、ハィィ、ハィィィーッッ
一方麗華は、後方の敵に撲殺ステッキで三段突きを放つッ
敵は、ギリギリで避けるがオレたちとの距離は遠くなる
ダウウッッッ
関さんが、もう一発、銃を撃つ
確実に前方の敵を足止めしている
お避け下さいっ
美智の赤いムチの切っ先が、グレーの敵に飛ぶッッ
グレーの敵は、後方に跳んで身を躱す
飛びながら、美智に小刀状の手裏剣を投げ付けるが美智はサッと一歩退いて避ける
美智の脇の床に、ズドッと敵の手裏剣が刺さった
そのためにムチの第2撃は出せない
こっちを見なさいっ
美智が、片手を招き猫のポーズにする
工藤流古武術奥義心月
ダメだ、美智
美智の集中が緩む
グレーの戦闘服の敵が、英語で何かを叫んだ
伏せてッ閃光弾くるよッ
マルゴさんの声に、オレはそのまま寧さんを押し倒して床に伏す
雪乃も一緒だ
廊下の前後がビカッと激しく輝くッ
顔を上げると三人の敵はすでに姿を消していた
みんな大丈夫かい
ハァハァと荒い息でマルゴさんが言った
あたしは平気ヨッちゃんが、護ってくれたからっ
寧さんが、オレを抱き締めたまま答えた
ちょっと涙目になっている
眼がチカチカします何も見えません
香月健思は、閃光を正面から見てしまったらしい
しばらく眼を瞑っていなさい少ししたら、治るわ
関さんが、撃った弾丸を補充しながら答えた
すみません、隊列を乱す様な行動をして
麗華が、マルゴさんに謝る
いや適切な判断だったと思うよ麗華お姉さんが飛び出してくれたから、後方の敵がこちらに近づけなかったし
本来ならば、隊列の真ん中に居たわたくしが天井から襲って来た敵を撃退するべきでした
麗華はグレーの敵が天井に居たことに気付かず、初動の対応が遅れたことを反省しているらしい
いや、あの人は特別だからだから、あたしもつい身体が動いちゃったんだ本当なら、麗華お姉さんに任せて、殿《しんがり》に居たあたしが後方の敵を相手するべきフォーメーションなのについ、あのグレーの敵と交戦しなくちゃって思って、隊列の真ん中へ飛び込んじゃったから麗華お姉さんが飛び出して、後方の敵を押さえてくれなかったらヤバかったと思うよゴメンなさい
マルゴさんも、麗華に詫びる
あのグレーの敵はマルゴお姉様でなければ、対応できませんでした
マルゴさんは、グレーの敵が放った手裏剣を床から引き抜いた
ああやっぱりね
どうしたの、マルちゃん
ほら、これ
マルゴさんは、寧さんに敵の手裏剣を見せる
続いて、自分の手裏剣を取り出して
2つの手裏剣はほぼ同じ形をしていた
材質や加工は、微妙に違うけれど
同門、てことだよねこれってさ
あたしの師匠は、恭子さんあたしの前に恭子さんと組んでいたのは
ミス・コーデリア
さっきのグレーの敵は、ミス・コーデリアか
となると、前後から襲って来たのが白い女のヴァイオラとロザリンドだな
同門同士の方が、相手の手の内が判りますからフォーメーションを崩すことになっても、マルゴお姉様が相手をしたのは正解だと思います
というより、藤宮さんも美智さんも突然のフォーメーションの変更に、よく対応したと思うわマルゴさんの判断も正しかったと思うしそれぞれが常に一番良いと思うポジションに移行して、互いにフォローし合えていたちゃんとチームとして機能できているわよ
関さんが、先頭チーム全体を褒めてくれる
関さんこそ3発だけの銃撃で、正面の敵を足止めするなんて、さすがです
まああちらは、本気じゃ無かったからね
関さんは苦笑した
本気では無かったってだって
本気なら敵は最初から銃を使っているよ最初の、完全に気配を消していた状態で銃撃されていたら、あたしたちの大半は死んでいたと思うな
今回の襲撃はオレたちの戦闘力をチェックしにきただけですよね
オレはマルゴさんに尋ねる
偵察というよりあたしたちに対する、挨拶って感じだね本気で潰しには来なかったし
四人目は出て来なかったですもんね
そうだホテル内に潜伏している、ミス・ヴァイオラたちのチームは4人のはずだ
最後の一人はまだ、姿を見せない
どうせ、どこかからあたしたちの様子を観察していたんだと思うよ