香月健思は、寧さんを見る
寧さんは一度も、香月健思に名乗っていないから
さっきミス・コーデリアの言ったナジマ・ヤスコというのが寧さんの名前だと思ったらしい
ナジマじゃないわよ奈島寧《ナトウ・ネイ》よその女の名前は
雪乃にとって、寧さんは同じ学校の不良でタブリの2年生だ
雪乃だって、昨日の夜に寧さんの昔話を聞いていたのだから寧さんの本名がナジマ・ヤスコなことは知っているはずなんだけれど
最初に認識したイメージは、なかなか覆るものではない
とにかく、この女は生かしておいて貰えるかもしれないけれどあたしやあんたは、殺したって構わないって思っているはずなんだから馬鹿なことはしないでよねっ
寧さんの過去シザーリオ・ヴァイオラとの関係
男のヴァイオラの目的が、寧さんであることを雪乃は知っている
というかあなたには、抹殺指令が出てるわよシラサカ・ユキノさん
ミス・コーデリアが言った
ゾクッとする雪乃
そうだ雪乃は、白坂家本家がヴァイオラに依頼した抹殺リストに名前が載っている
あたしの方で処分しちゃってもいいんだけれどあっちのヴァイオラに任せるわあたしが受けた仕事じゃないし
オレは通信機のスイッチを入れる
白坂家に働きかけて当主に反抗する勢力と、白坂創介の家族を抹殺する要請を受けたのは、あなたじゃないんですか
そうよ営業に行ったのは、あたしエーギョーでいいのよね日本語の表現として
ミス・コーデリアは、笑って答えた
あたしがしたのは、営業としてのオファーだけよ実際に仕事として受託したのは、あっちのヴァイオラなのほら、あたしたちは通常業務で日本に来たわけではないからあたしたちが自分で手を下すわけにはいかないのよ他の用事で出張しているのに、あたしたちが正規派遣された人の営業エリアで小遣い稼ぎしたらマズイでしょ
男のヴァイオラの来日が組織から正式に命じられた業務でミス・コーデリアはそうじゃないってことですか
オレはわざと声に出して言った
あなたはあちらのヴァイオラの監査のためにいらしたのですね
そういうことよ困っちゃうわよね偉くなると脅す・殺す・壊す以外に、そういうメンドウな仕事もしなくちゃならなくなるから
ミス・コーデリアは苦笑する
はっきり言っておくけれど男の子2人には、あたし興味が無いから逃げてもいいわよ確実に殺してあげるけれど
ややめておきます
僕体力には自信が無いんです
そうそっちの子は
ミス・コーデリアがオレを見る
逃げませんよ寧さんたちを置いて、オレは逃げたりはしません
あら、勇ましいのねあなた
ギッとオレを睨む
あなた何者なのあなたの資料だけ、どこを探しても見つからないんだけど
そりゃあ、そうだろう
オレはただの高校1年生だ
黒い森と接触してからだって、まだ1週間も経っていない
彼は黒森家の人ですよ
香月健思が、そう言うが
違うわ黒森家に、こんな年齢の男の子はいないわ香月家とも、白坂家とも繋がりが無い
白坂家とは関係ありますよオレは雪乃のクラスメートですから
クラスメート
不機嫌そうな顔で、ミス・コーデリアは答える
よく判らないけれど度胸は認めるわあたしたちの会話を、通信機を介してマルゴ・スタークウェザーに聞かせようとするところなんてね
やっぱりバレていたか
構わないでしょうあなたが、オレたちから無線機を取り上げなかったのはいつでも、自由に連絡を取れるようにするためなんじゃないんですか
おそらくミス・コーデリアも情報を欲しがっている
オレたちがマルゴさんと話す言葉の内容から色々と情報を吸い出そうとしているんだ
だから無線機を回収しなかった
ふんあなただけ先に殺しておいた方がいいのかしら
ミス・コーデリアが、オレに殺気を向ける
や、やめてよっ殺すなら、あたしを先に殺してっ
大丈夫ですよ寧さんブラフですから
オレは、寧さんに微笑みかける
あらどうしてそう思うのかしら
ミス・コーデリアは表情を変えない
オレ今、ここに居る人間の中では一番、頭が悪いんですよ鈍いんですだからこんなにペラペラ喋っちゃってますよね
美智や寧さんならジッと黙ったまま、こっそりと反抗のための準備をする
そうやってオレを脅して、プレッシャーを掛けてオレに色々と喋らせるのが目的なんでしょオレ、お調子者でオッチョコチョイだから、本当に何でもどんどん喋っちゃうかもしれませんね気を付けないといけないなぁ
だから、オレはミス・コーデリアの気を惹き付ける
ホント、いい度胸だわ
ミス・コーデリアが銃を持っていない方の拳で、オレを殴る
避けない
オレは顔を殴られて、フッ跳ぶ
平気です寧さん
口の中に血の味が拡がる
馬鹿にするんじゃないよっガキがっ
ミス・コーデリアが、オレを罵る
おやおや、ミス・コーデリアともあろう人がまた、随分と余裕が無いみたいだね
マルゴさんの声がイヤホンから聞こえてくる
オレと同じ様に美智もここでの会話を、マルゴさんたちに送信していたらしい
うるさいわねっマルゴ・スタークウェザー
あたしが恭子さんから聞いていたミス・コーデリアはもっと冷静沈着でクールな女性だったけどね恭子さんの評価が高すぎたのかなそれとも恭子さんと離れてから、劣化しちゃったの
黙れって言っているでしょ
あたしたちが行くまでは、人質の安全は保障してくれるはずだったよね
この子が突っかかってきたのよ
ダウトだあなたたちの会話は、ちゃんと聞いていたからねミス・コーデリア
オレたちだってやられっぱなしじゃない
今のはあたしが悪かったわごめんなさい
ミス・コーデリアは、オレを殴ったことを素直に謝った
いいんですよあなたみたいな人に対して、わざと怒らせる様な態度で挑発したオレが悪いんだから
オレはそう言って、笑う
あたし男って嫌いなのだから、あたしの直属の部下はみんな女なのよ特に若い男の子は見ているだけで虫酸が走るわ
ミス・コーデリアは、憎しみの眼でオレを見る
マルゴ・スタークウェザー早く来なさいこの子は、あなたの見ている前で殺すわなぶり殺しにしてやる
判ったよそれまでは傷一つ付けないってことだよね
もちろんあなたのプライドに懸けて約束してくれるだろうね、ミス・コーデリア
約束するわ
じゃあ急いで行くから、待っててオーバー
寧さんも、美智もオレより、何十倍も頭がいいけれど
メンタルはそんなに強くは無い