あんたが日本語が喋れるってことは、判っているんだよちゃんと調べたからなあんたが30年前に住んでいた沖縄の米軍宿舎まで特定したんだぜオレの情報部は、とても優秀だからな
ちょっと、待て
子供の頃、親がアメリカ軍人で沖縄で暮らしていたことがあるのはシザーリオ・ヴァイオラじゃないのか
ロレンザッチョ・バンディーニもなのか
とても面白い報告書だったぜ
ニヤニヤ笑いながら、谷沢チーフは話す
今から30年前二人のアメリカ人の少年が、沖縄の基地の中の学校で知り合う一人は、海兵隊の士官の息子もう一人は、基地内の洗濯屋で働くヒッピー崩れの流れ者のアメリカ人の子供だった世界放浪しているうちに、沖縄に流れ着いてアメリカ人ということで、基地に寄生して生きていたロクデナシとその息子
シザーリオ・ヴァイオラも、ロレンザッチョ・バンディーニも
二人とも、少年時代を沖縄で過ごしていて面識があった
それから15年が経って大人になった二人は、ロサンゼルスの裏町で再会する子供の頃とは、完全に逆転した立場で
谷沢チーフは、話し続けるが
13人の黒服たちは、銃を持ったままジッとして動かない
かつてのロクデナシの息子は、今やロサンゼルスの裏社会の一員それも、顔役の一人に成り上がろうとしていたしかし
谷沢チーフの口元が歪む
一方、かつての士官の息子はハリウッド・スターになる夢に破れ、みみっちぃに犯罪に手を染めて日々をしのぐ、チンケな小悪党と成っていた
隠されていた物語《ストーリー》が見えてくる
ロレンザッチョ・バンディーニ面白い名前だよなロレンザッチョアルフレッド・ミュッセの戯曲にもなっているよなメディチ家のハムレットと呼ばれたロレンツィーノ・デ・メディチの愛称だフィレンツェの専制君主アレッサンドロ・デ・メディチの親友にして、その暗殺者いかにも、ヒッピー崩れの親父が息子に付けそうな名前じゃねぇか
軍人の息子だったのはヴァイオラの方で
バンディーニの方が、ヒッピー崩れの流れ者の息子なのか
暗黒街でのし上がるためには、進んで自分の手を汚さなきゃならないしかし、ある程度までのし上がった後は、汚い仕事は信用できる部下に任せるしかなくなる何歳になっても、現場に通い続けるやつは人殺しとしては名を高めるだろうがそんな人間は、裏社会の大物にはなれない
特に大きな仕事を依頼してくるセレブとの関係に響く
ロサンゼルスのセレブ連中は、人殺しや危ない仕事を喜んで請け負う人間を日常的に求めているが
ただの人殺しとは、決してお友達になってはくれねぇからな
さっきまで誰かを殴り殺していたかもしれない手赤い血の臭う手と握手したがる金持ちはいねぇってことだ
自分自身が殺し屋である限りは、セレブからは見下される
腕が良ければセレブの皆様からの仕事は途切れないだろうが
良い様に使われているうちは、小者でしかない
谷沢チーフは、楽しそうに話し続ける
しかしロレンザッチョ・バンディーニは、人殺しの現場が大好きな男だったしかも、他人を信用しない性格だ自分の部下も心の底からは信じていない仕事の進展は、常に自ら現場に立って確認したいと考える男だ
さて、どうする
現場は楽しいがこのままじゃ、小物のまま終わってしまう
セレブたちの気まぐれで、いつでも切り捨てられる可能性があるし
いつまでも見下されたままじゃいけねぇ対等の存在、いやそれ以上にならなきゃいけねぇ
では、どうするか
若き日のロレンザッチョ・バンディーニは、裏社会に自分の地位を確立させるために、1つのシステムを考え出した
それがシザーリオ・ヴァイオラだ
シザーリオ・ヴァイオラという架空の犯罪者を産み出し、自らの犯罪は全てヴァイオラの仕事ということにしたんだろあんたは
そしてシザーリオ・ヴァイオラの名前を使って、ありとあらゆる犯罪に手を染めロサンゼルスの裏社会に名を売った売りまくった
そして自らは、シザーリオ・ヴァイオラのマネージャーということにしたんだよな
シザーリオ・ヴァイオラに犯罪を依頼する時は、どうぞ私に連絡して下さいってことだ
なるほどマネージャーなら、犯罪者本人では無い
セレブの印象も、それほど悪くは無い
しかも、犯罪の依頼を受けるためセレブと直接、面談する立場だ
何度か仕事を受けていけば、親しくもなる
裏社会への繋ぎ役として、信頼を集めていくことになる
そうして、ロレンザッチョ・バンディーニは実在しないシザーリオ・ヴァイオラのマネージャーとして、ロサンゼルスに確固たる地位を築いた
そういうことなんだよな
黒服の男の1人が鋭く叫ぶ
そいつは違うぜっ
この声は通信機で聞いた
オレが、シザーリオ・ヴァイオラだっシザーリオ・ヴァイオラは、ここに居るぜっ
男は、ドンと自分の胸を叩く
ああ、そうだなお前は、何人も居るシザーリオ・ヴァイオラの1人だからな
ミス・コーデリアがはっきりと、そう言った
ロレンザッチョ・バンディーニは、子飼いの手下を何人も抱えているわけでは無かったからな仕事によってフリーの人間を雇わないといけないしかし、フリーの人間を呼んだ現場では、ロレンザッチョ・バンディーニの他に、ちゃんとシザーリオ・ヴァイオラが存在していないといけないそうでないとシザーリオ・ヴァイオラという人物が、本当は実在していないということがバレるからな
ミス・コーデリアの言葉に、男のヴァイオラは
違うオレがヴァイオラなんだっシザーリオ・ヴァイオラロサンゼルスの暗黒街の伝説っ最悪最凶の犯罪者組織のボスオレが、シザーリオ・ヴァイオラなんだっ
ヴァイオラは叫ぶ
ミス・コーデリアは笑う
それ、英語でもう一回言ってご覧よみんな失笑するだろうさここに残った最後の人間はみんな、あんたの正体を知っているバンディーニの古参の部下だからね
ロシア人のチンピラ連中を始め
ダダドムゥおじ様の倒した、10名
バンバルビー3の倒した、7名の戦闘員たちを除いて
残った13人はロレンザッチョ・バンディーニの周りを固める、コアなメンバーだ
つまりバンディーニの昔からの配下
シザーリオ・ヴァイオラシステムの全ての裏を知っている人間だけになってしまっている
ロレンザッチョ・バンディーニが、シザーリオ・ヴァイオラシステムを思い付いた時に、たまたまあんたと再会したそれで、バンディーニはあんたを使うことにしたんだあんたとなら他の部下には判らない言葉日本語で話すことができるしねそれで、あんたは最初のシザーリオ・ヴァイオラ役者になったんだ
ミス・コーデリアが言う