恭子さんが、シスター・イーディに何か言っている
あたしが稽古を付けてやるあたしを倒せるぐらい強くなりなって言っているよ
寧さんが、即、通訳してくれた
シスター・イーディの眼が爛々と輝く
早口で、ワーワーと騒ぐ
望むところだ早く強くなって、ブッ倒してやるですって
この子は
どうにか闘い以外のことにも、興味を持つようにしないといけないな
マルちゃん、どう
心配そうに、寧さんが尋ねた
前に精神がオーバーヒートしてしまった時は
ミナホ姉さんが一晩ずっと付き添って、ようやく普段のマルゴさんに戻ったのに
ふふっ大丈夫心も身体もグチャグチャになっているけれど何とか自分をキープしていられるから
まだ青い顔のままマルゴさんは、答えた
恭子さんに軍事作戦に送り込まれた時のことを思い出したよあれも、恭子さんからしたら、あたしのリハビリの一環だったんだね戦場じゃ、パニックを引き起こしたら生き残れないからあたし1人ならいいけれど周りの兵士に迷惑が掛かるしだから、絶対にパニックにならないって気を引き締めていたし実際、大丈夫だったあの時の経験が自信になって、その後で随分気持ちが楽になったもの
マルゴさんが、恭子さんの所属していたブラジルの犯罪組織の軍事部門に送り込まれて南米で他の犯罪組織と闘ったというのは、そういう経緯だったんだ
恭子さんがあたしに叫んだATTENTIONて掛け声軍隊の号令なんだよ
軍隊?
どんなに意識が朦朧としていても、あの掛け声で名前を呼ばれたら、ハッとするよあの数週間の作戦期間に、徹底的に仕込まれたからね身体が反応しちゃうんだ
それでマルゴさんは混迷から目覚めたのか
関さん麗華お姉さん、大丈夫ですか
マルゴさんが2人に声を掛ける
フルパワーの心月を無防備で受けちゃったからなあ2人とも
平気よもう
関さんが起き上がる
美智が、2人に謝罪する
いいんだよ美智妹《イモウト》は、一瞬のチャンスに賭けたんだろう
麗華も、身体の節々の調子を確かめながら起き上がる
むしろこんなことで麻痺してしまって、闘いに加われなかった自分を恥じるよ
口惜しそうに、そう言った
恭子さんは、ミス・コーデリアが満足するので尻叩きをしてあげると
ミス・コーデリアの身体をひょいと下ろして丸テーブルの方へ行く
白い女のヴァイオラとロザリンドは、すっかり困惑しているが
恭子さんの破天荒な強さは、肌で判っているのだろう
2人とも黙って静観している
恭子さんは机に突っ伏している、谷沢チーフのところまで行き
オッチャン、オッチャンいつまで死んだフリしているわけ
キムチでもいいはっ何だ、夢か
まるで今まで眠っていたかのようなフリをして、起き上がる
そういうのはいいからさ
恭子さんは、谷沢チーフをギロッと見つめる
お前が出て来たおかげで、こちらの予定が狂ったぞ
谷沢チーフも、恭子さんをジロリと見上げる
あらオッチャン的には、どういう予定だったわけ
そうだオレたちも、それを知りたい
谷沢チーフは、ミス・コーデリアと組んで何をしようとしていたんだ
組んだといっても全面的な提携では無かったみたいだし
あたしの身内が、相当な危険に陥っていたみたいだけれど
恭子さんは、谷沢チーフの前でギュッと拳を握りしめる
返答次第では、交戦するという意思表示だ
香月セキュリティ・サービスの100人のマシンガン部隊と、20人のトップ・エリートはようやく心月のショックが抜けたらしく、床に落としていた銃を拾い上げている
しかし彼らの長である谷沢チーフを人質にされたら、オレたちに攻撃はできない
それを見越して恭子さんは、谷沢チーフに近付いたんだ
ふんっミス・コーデリアが、本当に黒森のお嬢ちゃんたちを殺害しようとしたらオレは全力で阻止するつもりだったんだそのためのマシンガン部隊とトップ・エリートが20人だぞ
いや確かに、ヴァイオラの本隊やオレたちを潰すためには、この人数は大げさすぎる
トップ・エリートたちなんて、他で任務に就いていた人たちまで掻き集めているし
これは全てミス・コーデリア対策だった
だいたいお前らが優秀過ぎるんだよっオレはこんなに早く、お前らがここまで来るとは想定していなかったんだぞ
谷沢チーフは、オレたちに怒る
オレたちが出張って来なかったらお前らは、とっととミス・コーデリアとヴァイオラの本隊に殺されていたよ
ヴァイオラの本隊との闘いで、銃の使用を禁じたのは谷沢チーフだ
谷沢チーフの眼があったからミス・コーデリアは己の感情に任せて、一気にオレたちを殺さなかったんだし
余計なお世話さもし、オッチャンたちが来なくても、あたしが絶対にこの子らを助けていたからね
恭子さんが、笑ってそう言う
来るなら来るって連絡してくれオレだって、お前が来るって判っていたらこんな面倒なことはしねぇよ
不機嫌そうに、谷沢チーフは答える
こっちは時間稼ぎをしなくちゃならなかったんだからなッ
時間稼ぎだって
それってどういうことなんだ
そこから先は、私が説明しよう
この声はジッちゃん
ジッちゃんの声がスピーカーから響いている
君たちのおかげで急がされたが何とか間に合ったよ
と壁に映像が投射される
数分前に放送されたニュース映像だ
画面の文字白坂守次氏、緊急入院
ニュースキャスターが、カメラに向かって話す
マスコミ界のドンと呼ばれた、白坂守次氏、六十八歳が都内の大学病院に緊急搬送されたようです病名は、脳溢血とのことです守次氏に対しては、甥の広告代理店社員、白坂創介氏のスキャンダルについての先日の記者会見について、様々な論議が起きている最中でした
守次大叔父様
古来問題のある主人は、家来が座敷牢に押し込めて隠居させるのが習わしだ白坂家も、そういう判断をしたらしい
そういう風になるようにジッちゃんが、裏工作で仕向けたんだ
最後まで、白坂守次本人は納得しなかったらしいそれで彼らは、脳に障害をもたらす薬を使わざるを得なかったこれでもう、おそらく白坂守次氏は、生涯再起不能だろう自分の意志を言葉で正確に伝えることもできなくなった今後は、禁治産者扱いとなるだろう
禁治産者って
自分で自分の財産を管理できない人のことよまだ子供だとか、老齢過ぎて呆けているとか、精神的な病気を抱えているとか禁治産者という呼び名は、もう使っていなくて、今は成年後見というものに法制が変わっているけれどね
関さんが、教えてくれた
白坂本家内の守次氏を押し込めたグループから、私に親書が届いている私たちへの敵対行為を止めるそうだそれと白坂守次氏の出した殺害要請も取り消しだ