ジッちゃんは、末の息子に遺産の相続放棄を求める
もちろん遺産相続は、お前の権利だ無理には求めんよお前が欲しければ、受け取って構わん
香月重冬は
お父上私は香月の家に生まれましたが、国家の官僚となり、香月グループの発展には何も寄与して参りませんでしたそんな私が、香月家の財産をいただくのは、確かに良いことでは無いと思います
みすずの父親はこういう人なんだ
私は私で将来の蓄えも、自分できちっとしておりますお父上の遺産を当てにはしておりませんみすずが、才能のある子だということも判っておりますしもし、みすずが香月家当主への道を望むのなら、喜んで応援したいと思います何より
香月重冬は、ニコッと微笑んだ
お父上から、みすずに直接相続させた方が相続税が一回で済みます
お父様、ありがとうございます
画面の中で、みすずが泣いている
では、今日中に相続放棄の書面を書いてくれみすずと瑠璃子の養女の手続きも、明日中には完了させる
ジッちゃんの言葉に、瑠璃子は
待って下さいお父様はわたくしのお父様は、どうなるのでしょうか
私より先に死ぬ者が私の遺産を相続するはずがないだろう
先に死ぬって
ち、父上わたしはぁっ
香月重秋が喚くが大徳さんが制する
さてでは、取引と行こう
ジッちゃんは、ミス・コーデリアに振り向く
おいどういうことなんだ
ロレンザッチョ・バンディーニが、ミス・コーデリアに小声で言う
ミス・コーデリアは、クスクスと笑って
もう随分前のことだけどあなたたちのチームが、ロサンゼルスで香月重春という人物を殺害したの覚えていない
そ、そんなの覚えていねぇよオレたちが殺した人間なんて、山ほどいるんだ一々、覚えちゃいねぇ
日本人の家族よ父親は、あんたが殺して母親はレイプしてから殺した男の子は、ヴァイオラが犯してから殺したのよね遺体は、モハベ砂漠に投げ捨てた
バンディーニとヴァイオラの表情が変わる
こいつらがジッちゃんの長男一家を殺した、実行犯だったのか
てめえ、仲間を売る気かっ
ロレンザッチョ・バンディーニが、憤るがミス・コーデリアの二人の部下に抑え付けられる
あら、まだ自分の立場が判っていないみたいね評議会は、もうあなたたちの処分を決めたのよどうせ処分するのなら、少しでもお金が儲かる方がいいじゃない
お前、まさか
そうよあたしたちは、最初からミスター・コウヅキ氏と契約していたのここにあなたたちを連行するのが、あたしたちの仕事だった
それで偽の情報をオレたちに伝えていたんだなホテルの警備態勢はちょろいとか、19階に脱出経路があるとか
やっと判った
バンディーニの本隊が下の階でなく、真っ直ぐ19階に向かって来たのも
ミス・コーデリアの嘘の情報のためか
あんたたちをここに連れて来る代わりに、クロモリの人間をここに集めるというのが最初の取引の内容だったんだけれどキョーコの本心が判ったなら、クロモリの方はもうどうでもいいわ白坂家からの殺害依頼も、違約金の方が倍額でふんだくれるしあたしの方は満足ね
張本
張本さんが、ジッちゃんの命でみすずの父親を置いて一度ドアの外へ出る
そして、重そうなアタッシュケースを2つ持って、戻って来る
そのまま、ミス・コーデリアの前へ行き
報酬は、金塊でということだったね
ジッちゃんの言葉に、張本さんが一つ目のケースを開ける
ギッシリと、輝く金の塊が入っていた
契約よりも、量が多いと思うけれど
ミス・コーデリアが、金塊を確認しながら言う
手間賃代わりのサービスだ気にしないでくれ
そういうことなら、貰っておくわ領収証は出せないけれど構わないわね
犯罪組織から証拠に残る様なものが貰えるとは思っていないよ
ではロレンザッチョ・バンディーニとシザーリオ・ヴァイオラ、それに彼らのチームの人員全てを、引き渡すわ
これが取引
ところで私の息子を殺した実行犯はこれで確保したが、殺人の依頼者が誰だったのか教えてはくれないか
ジッちゃんの言葉に、ミス・コーデリアは
残念だけれどあたしたちは、犯罪組織なのよ自分たちの身内は売っても、依頼者の情報は絶対に明かさないわ
では、今までのこととは別に私は君たちに、殺人を1つ依頼したい
ジッちゃんが眼で、張本さんに指示する
張本さんが、もう一つのアタッシュケースを開く
中には
やはり金塊が、ギッシリと詰まっている
どこのどいつだか判らないが犯罪組織に金を払って、私の息子一家を殺害させた輩がいるらしいのだよそれが何者なのか、私にはさっぱり判らない申し訳無いが、君たちの情報網を最大限に使って、その人物を探し出し殺して欲しい
背後で香月重秋が叫ぶ
お、お父上ぇぇぇーっ
大徳さんが、グワッと香月重秋を力尽くで抑え付ける
ミス・コーデリアは、ジッとジッちゃんの眼を見る
香月家の当主としてどうしても見過ごせんことだ私は
ジッちゃんは、眼を閉じる
一人の父親である前に巨大な組織の長なのだ
苦しませないで、逝かせてやってくれ
ミス・コーデリアはゆっくりと、香月重秋に向かう
お父上お父上父上ぇぇぇ待って下さい、私の話も聞いて下さい
コツコツと足音を鳴らして近付くミス・コーデリアに、香月重秋は怯える
重春が死んだら、香月家の跡取りは次男のお前だ普通はな私は、最初から判っていたよ
だから私は隠居せず、ずっと現役を続け後継者を明らかにしなかったみすずと瑠璃子も、お前の手が出せないように手元に置いたお前を香月グループの本流から外し主要な重役たちと関わらないようにした
父上、そうじゃない待って下さい
香月セキュリティ・サービスの様な組織を作ったのも、お前がまた犯罪組織と契約して殺人要請した時の対抗策にするためだ
私は、私はですね
今のお前にできることは、私の死を待つことだけだろうずっと、そう思っていたよだが、お前は
ジッちゃんが、真っ赤な眼で息子を見下ろす
裏で画策し続けることを止めなかった
香月重秋が、ハッと口を開ける
お前が恐れたのは私が、香月グループの経営を司馬くんに委ねることだ才能溢れる司馬くんが経営の要となってしまえば、私が死んでお前が香月家の当主となっても香月グループ全体を支配することはできない司馬くんが、才覚の無いお前の経営参画を許すはずないからな
司馬沖達氏が、息を呑んでジッちゃんを見る
だからお前は香月昇をたぶらかし、角田たちを使って、司馬くんの追い落としを企んだ