すると角田たちの携帯にあったミスターという人物は
ジッちゃんの次男、香月重秋だったのか
香月セキュリティ・サービスの制服警備員にスパイを送り込んだり今夜、空港で司馬くんを襲わせようとしたのもお前だな
司馬沖達氏が、このホテルに到着しなかったのも香月重秋の命令
司馬様は、私がお助け致しました
大徳さんが言う
ジッちゃんの専任警護人がずっと不在だったのは、司馬さんを助け身柄を隠し
その上で、ジッちゃんの二人の息子をこの場に連れて来るためだったんだ
お父上がお父上が、悪いんですよ
香月重秋が、喚く
私の方が兄上よりも、絶対に優秀だったんですっ先に生まれたからって、長男が家の全てを継承するなんて間違っていますよっ
追い詰められた彼は、もう止まらない
どうして兄弟なのに兄上に対して、家来みたいにペコペコ頭を下げないといけないんですっおかしいですよっだから、私は全てを引っ繰り返してやったんですよっ兄上さえ居なければ、私が香月家の継承者じゃないですかっそうじゃなきゃ、おかしいそういうルールでしょなのに
香月重秋は、憎しみの暗い眼で父親を見上げる
お父上は、わたしを無視し続けたっ馬鹿にしやがってちくしょうっ早く死ね、とっとと死ねって、毎日思っていますよっあんたなんてあんたなんてぇぇ
ミス・コーデリアが香月重秋の前に立つ
騒がしいよ、あんた
ミス・コーデリアの回し蹴りが香月重秋の頭に炸裂する
香月重秋の頭は、ありえない向きに曲がって
ぐらんと揺れた
昨日、仕事中から体調が悪く
重い身体を引きずって帰りました
この感じは、よく判ります
風邪ですね
そのまま、今日は一日寝込んでいました
眼が覚めたら、午後8時でしたので
それから、必死に今日の更新分を書きました
まだ具合が悪いので、もう寝ます
336.生と死と俗と欲
ズダァッ
香月重秋の身体は、ただの物体となって床に崩れ落ちる
お父様ぁぁっ
スクリーンの中絶叫する瑠璃子を、みすずと美子さんが抱き締めている
瑠璃子に、父の遺体を見せないように
済まない、瑠璃子恨むなら、この私を恨め全ては私の教育が間違っていたことに起因する
ジッちゃんが苦しそうに、画面の瑠璃子を見上げて言った
私は香月家の嫡男として生を受け、他の兄弟とは完全に区別されて育った生まれながら後継者はとても、孤独で寂しいものだっただから、私は自分の息子たちには、そういう思いをさせたくはないと思っていた
ジッちゃんは、泣かない
全ての感情を押し殺している
しかしその教育方針が、結果として重秋を歪めてしまった重秋に、望んではならない野心を抱かせてしまったあいつは弟が兄の家臣となるのが耐えられないと、言っていたが私の子供の頃と比べたら、あいつの体験したことなど何でも無い私の兄弟は、私と同じ部屋で食事を摂ることも、直接口をきくことすら許されてはいなかったのだから
ジッちゃんが香月家の嫡男とその他の子供の扱いの差をなくしたから
かえって、香月重秋は増長した
これは全て私の罪であり香月家本家の不祥事だだが、香月グループ全体の名誉を考えれば、この出来事は決して公にすることはできない
香月本家の次男がアメリカの殺人組織に依頼をして、当主の後継者である実兄を殺させたというのは確かに公表してはいけない話だと思う
ジッちゃんが、ミス・コーデリアに依頼して実の息子である香月重秋を処分させたということも
何より香月家は、長い歴史を持つ名家なのだ私たちはこの家を引き継ぎ、次の世代へ残して行くという義務がある私の代で、香月家を終わらせるわけにはいかないのだ
ジッちゃんは生まれてからずっと香月家に捕らわれている
それが当主として、生きるということ
だから私は全ての当事者を集め、事件を明らかにし、秘密裏に処理する方法をずっと模索していた香月セキュリティ・サービスも、このホテルも今日という日のために準備したものだ長かったこれでようやく、肩の荷が下りた
香月家の所有するホテルの中で、全てを終わらせたことも
工藤父やフリーの警護人たちに、最後の場面に立ち会わせなかったことも
香月セキュリティ・サービスの人員をこのフロアから撤収させたのも
何もかも、内々に処理したかったからか
本当なら、オレたちにも知らせるつもりは無かったんだ
みすずにも、瑠璃子たちにも後で、重秋の死だけを伝えるつもりだったんだろう
ジッちゃん、まさか死ぬつもりじゃないだろうな
オレは思わず叫んだ
ふふ実の息子を殺したんだ私も死ぬべきだろう
私はこの事件の全てを隠蔽しようとしている本来ならば、法的に、社会的に、絶対に許されぬ行為だそれを香月家の力で、断固としてねじ曲げるこの世の法と社会をないがしろにするのだならば、罪に対する罰は、法廷でも社会による制裁でもなく、自分自身で自分に下すしかあるまい死には死をもって償うしかないそれが古代以来の人間の定めた刑罰だろう
ジッちゃんは覚悟している
私の最後の心残りは美子、みすず、瑠璃子三人の孫娘たちのことだったしかし、みすずは立派に成長してくれたし谷沢と黒森くんに後を任せれば、問題はないだろうと思えたお前も居るしな重役たちと私塾の連中の捌きは見事だったぞ
ジッちゃん全て、観ていたんだ
これでもう、何の心配も無い
ジッちゃんは、司馬沖達氏に振り向く
司馬くん香月グループの経営は、君に託すさっき伝えた通り、私の持つ各企業の株式は全てみすずに譲る従って、香月家が株の過半数を堅持することに変わりは無いもちろん、君が新株を発行して、みすずの保有する株式の割合を下げることもできるしかしそれでも、みすずがグループ各社の筆頭株主であることには変わりないだろう
正直に言おう私は、香月グループの支配などどうでもいいのだ私は、香月家という名家を潰したくないただそれだけだだから、グループ全体の経営は、重役たちの中で一番力のある君に委ねたい君がトップとなった後、グループを私物化しようが、司馬グループと名前を変えようが自由だただ香月の家が破綻する様なことだけはしないと、約束してくれたまえ
ジッちゃんの言葉に、司馬沖達氏は
そのために私をこの場にお連れになったのですね
ああ、他の重役たちには真実は伝えないしかし君には、ありのままに起こったことの全てを知っていて貰いたかった
私が事のあらましを警察に通報するとはお考えにならないのですか
君はシビアな計算のできる男だ香月グループの値打ちの下がる様なことはしないよ
ではお言葉に従い、香月グループの最高経営責任者に私は就任致しますその代わり閣下、どうかこのまま顧問・相談役としてグループにお残り下さい