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あたしは別に、国とか法律とか、そんなことは言っていないわただ、あんたたちはみんな間違っているって言っているのよっ

なあに、国や法律や警察や裁判所は、間違いを起こさないっていうわけ

それは時には、間違うこともあるんでしょうけれど、でも誰にでも公平に、みんなのためを考えて、そういうものは作られているんでしょ

ふーん、あんたの言う公平ってのが、どういう基準ののものなのかあたしには全然判らないんだけれどもし、あんたの言う通りに世界中の法と警察と裁判所が機能しているとしたら、あたしはまだブラジルのリオで楽しく生活していると思うよ

何の話よ

あたしは知っているわ法律も警察も裁判所も、絶対に頼りにはならないって少なくても、あたしたちの味方じゃないってこといつも必ず敵っていうこともないんだけれど、でもあたしたちに優しい相手ではないわ子供の頃から、周りの人たちが何人も犠牲になっていく姿を見てきているから

だから自分と仲間の身は、自分で護らなければいけない敵が金と権力であたしたちを襲って来るのなら、あたしは金と暴力で対抗する目には目を力には力を金は奪えばいい表の公権力がやつらのものなら、あたしたちは闇の暴力で対抗するそうやって、あたしたちは生きてきたのよ

その恭子さんの重い言葉に、雪乃は

話を誤魔化さないで人が死んだのよそれを隠したまんまにしていいわけないじゃないちゃんと警察に名乗り出るのが、当たり前のことでしょ

いつもと同じパターンだ

理屈で問い詰められたら、自分の感情だけを爆発させる

残念だけれどここには、当たり前の人なんて1人もいないのよね

恭子さんの声が、空虚なフロアに響いた

まず、ここに居るのは、あたしと同じ国際的な犯罪組織の一員本物のアウトローたち

恭子さんの眼が、ミス・コーデリアたちを見る

ミス・コーデリアは妖しく微笑んでいる

それから国家組織と対抗できる力を持つ本物の権力者とその下僕たち

恭子さんは、ジッちゃんと谷沢チーフを見る

ジッちゃんは、恭子さんと雪乃の会話を面白がっているようだった

みんな、国の法律とかの支配の外に居る人間よ明確に自分の行使できる力を持っている人間法や国家の助けは必要としていないのよ

恭子さんは、ニッと微笑む

だからと言って、常に国家と対立しているわけではないわあたしたちは、共存できる限りは、国家とも権力者とも友好的な関係を保つわあたしたちは主義者でも革命家でもないから世の中を自分の思い通りにしたいなんて、大それた考えはないのよただ、愛している人たちと幸せに暮らしたいだけ

ジッちゃんが、恭子さんの言葉に続ける

残念ながら生まれ育った環境が、私たちに普通の国家市民の様に生きることを許してはくれなかったのだ私は、香月家という巨大な力を持つ家に生まれ日本国家は、これまで何度も香月家の持つ財力や支配力を奪おうと画策して来たよ私は、何度も彼らと闘い打ちのめしてきた香月の家は日本にあるが国家権力を振りかざす連中の力を、これ以上強化してやるのは良くないと思うからないや、国家と闘ってきたという言い方が悪いのだな国家などという物に明確な意志は無いのだから私が闘ってきたのは、いつも他人の財産や力を好き勝手に奪い取れると勘違いしている政治家と高級官僚だよ国家などという大きなものではないほんの数人の下劣な感性の持ち主が、国家権力を使って、私に戦争を仕掛けて来るだから、全力で叩き潰すそれだけのことだ

お嬢ちゃんの思い違いをしているポイントは、多分そこなんだろうね国とか法律とか司法制度とかが、NOBLEでQUITABLEで絶対的なものだと思っているんだろそうじゃないんだよ国も法律も司法も人間の使う道具、あるいは力でしかないからねそれを使う人間が腐敗していれば、正義が果たされるはずはないしかも、力を持った人間が腐敗するのは当たり前のことだからね

恭子さんは、雪乃に言った

あんたたちこそ何も判っていないのよ

雪乃は折れない

そうやってグチャグチャ小理屈をこねくり回しているけれどねあたしには、判っているわ

軽蔑の眼でフロアに居る全員を見る

あんたたちは全員、刑務所に入って縛り首になるべきなのよっそういう人間たちなのよっ何よっ極悪人が偉そうにさっ

恭子さんが、ニッコリと雪乃に微笑む

そうよやっと判ってくれた

だから、あんたこそ極悪人に正論を語るのが無駄だってことに、そろそろ気付きなさいね

雪乃は憤怒の表情でオレを見た

あんたはどうなのよっあんたも、この女たちと同じ考えなの

オレは、すぐ横の寧さんとマルゴさんを見る

美智とシスター・イーディを

麗華と関さん

それからスクリーンの中の、克子姉、みすず、瑠璃子、美子さん

オレは犯罪組織黒い森《ブラック・フォレスト》の一員だよこの人たちが、オレの家族なんだ

オレはもう覚悟ができている

この家族と共に生き死ぬ覚悟が

雪乃は、静かに言った

なら、あたしもう、こんなところには居られないわ

雪乃が、壁のドアに向かって歩いて行く

おい、どこへ行くつもりだよっ

帰るのよっこんなところもう一秒だって居たくないあんたたちと一緒には

帰るって、どこに

あたしの家に決まっているでしょ

お前の家なんて、マスコミだらけだぞ

昨日の白坂創介の大スキャンダルの発覚から、まだ二十四時間も経っていない

当主・白坂守次氏の緊急入院だって報道されたばかりだし

そんなのどうでもいいわよっあたしは帰りたいのっここから出たいのよ

雪乃はドアのノブに手を掛けるがドアは開かない

鍵の開いているドアは、どこよっ

待てよ雪乃そんな格好のまま、外に出るつもりかよっ

雪乃は全裸にオレのYシャツを1枚羽織っただけだ

足は裸足だし

何だっていいわよっ

だいたいここはお台場の外れだぞここから、どうやって帰るつもりだよっ

もうすっかり夜だし

雪乃は一銭も持って居ないし

うるさいわねっレインボーブリッジを歩いて帰ればいいんでしょっ

いやレインボーブリッジって、Yシャツ1枚で通れるのか

いいから、ここに居ろよせめて、着替えとか用意して貰うから靴だって要るだろ

いらないっ何もいらないっあんたたちにはもう、何もして欲しくない

ギギッと、憎しみの眼で雪乃はオレを見る

ダイッ嫌いよこっちに来ないで

もう二度と一生あたしに関わらないでっあんたの顔なんて、二度と見たくないわっ

雪乃がオレを拒絶する

オレはここ数日、ずっと雪乃を苦しめるだけの存在だった