恭子さんは、麗華に言う
まだ若いんだ自分が間違っていたと判ったら、何度だってやり直せる
麗華は、素直に礼を言った
でも、わたくしこのままでいいのかどうか判らなくて
何のことだい
わたくし昨夜は、みなさんの家族に入れていただきましたでも、わたくしの様な半端な未熟者がみなさんの仲間になって、本当にいいのか朝になって、自分の顔を鏡に映して見たら、本当に怖くなったんです
ふーんあたしには、よく判らないわねその辺の過程を知らないからあんた、何とかして
恭子さんは、オレの顔を見る
麗華はオレたちの家族になるのを、やっぱり取り消したいの
いえ、そういうことではないんですただ昨夜のわたくしは、身の程知らずの愚か者でしたから皆さんの家族になるということは、みすず様とも家族となることではありませんか香月家の本家の方と、そういう大それた関係になるなんてよく考えたら、自分には許されないんじゃないかと
ああ、朝になってみたらゾッとしたってことなのね
オレたちは、何も無理強いはしないよ全て、麗華が自分で決めてくれればいい
いいんでしょうかそんな身勝手なことで
麗華は、上目遣いでオレを見る
麗華の人生なんだし、オレには何も決定する権限は無い
ダメだよ麗華お姉さん一度、あたしたちの家族になるって約束した以上は、もう取り消せないからね
ほら、あなたも勝手なことは許さないって、怒らないとダメよ
そう言って、強い眼でオレを見る
もう家族なんだから
麗華お姉さんはね今、あたしたちと離れたらダメになっちゃうよだから、絶対に離さない、解放してあげない諦めて、みんなと一緒にご飯を食べて
寧さんの言葉に麗華は、困惑している
あんたって確か、警護人なんだよね
恭子さんが尋ねた
はい谷沢チーフの下で、トップ・エリートの1人ということになっています一応
恭子さんという超人級の能力者と出会って麗華は、本当に自信をなくしたらしい
得物は、そのステッキかいちょっと、構えてみな
恭子さんは、麗華に命じる
いえ、わたくしは
いいから、構えてみなって言っているんだよ
麗華恭子さんの言うとおりにしろ
オレも麗華に命じる
麗華は、席から立ち上がって
恭子さんに向かって、正眼の構えでステッキを向ける
もういいや判ったよ
それだけで、充分、判ったから
恭子さんは、ギロッと麗華を見上げる
あんた剣の修行しかしてこなかった人なんだね
ははいそうです
恥ずかしそうに、答えた
恭子さんは、食卓の上のベーコン・エッグの皿を示し
これ、克子ちゃんが作ってくれたんだけれどあんた、こういう料理作れる
麗華は、皿をジッ見て
卵焼きくらいは焼けますけれどこんなに綺麗に仕上げる自信はありません
うん他の料理やパンと同じく
克子姉のご飯は、そのままお店で出せるクオリティを持っている
見た目も、味も
克子ちゃんは、どうしてこんなに美味しそうなものが作れると思う
やっぱりお料理の才能ですか
恭子さんの問いに、麗華は答えた
そうじゃないよ食べる相手のことを考えているからだよどうせなら、見た目も綺麗で、美味しい物を食べて欲しいって願っているからだよ
恭子さんは、言った
そうだねあんたの剣技を、ラーメン屋に例えるとする
恭子さん、いきなりどうしたんです
ほら、ラーメン屋にもいるだろう自分の作るラーメンの味だけにこだわって、他のことには何も気付かなくなっちゃってるオッサンがさ
恭子さんは、真顔で話している
でもさどれだけ、その店が出すラーメンが美味くても丼に傷が入っていたら、お客は食いづらいだろ椅子がガタついていたり、テーブルが斜めっていたら店の中が小汚かったら、どうだいそんな店で、良い気分でラーメンが食えるかい美味しいラーメンを食った気になれるかい
なれないと思います
麗華は、答えた
そうさラーメン屋だからラーメンだけ拘っていればいいわけじゃないんだ椅子もテーブルも良い物の方がいい店の中だって清潔にしておくべきだラーメン以外にも、ちゃんとやらなきゃいけないことがあるんだよ
みんな、真剣に恭子さんの話を聞いている
オレは剣の道とラーメン屋の関係が、今ひとつ判らない
一流の店は料理の味だけじゃない器にも気を遣っているし、店の内装だって綺麗だそこまで気を配らないと、お客さんには本当に悦んでは貰えない良い評価は、得られないんだよいや、もちろん店の綺麗さとかにばっかり気を取られて、味が全然ダメな店は論外だよでも、味さえ良ければいいっていうのは、間違っているってことは判るよね
あんたは、そこそこ剣の腕はあるんだろうそれは構えただけで、判るでも、それだけだそこから先の拡がりがあんたには無い
恭子さんは、そう言い切った
あんたもあたしも闘う人間だ剣を向けるということは、そのまま戦闘に入ることもありえるっていうことは判っているね
判っていますですから、その覚悟でわたくしは恭子様に剣を向けました
全然判ってないよ
恭子さんは、麗華を叱責する
この部屋で、あんたとあたしが戦闘行為に突入したとしてあんたは、他の子たちのことは想定したかいマルゴはどう動くと思うそこの工藤のとっつぁんはイーディはメグちゃん、マナちゃんの安全は確保できるのかい真緒ちゃんが、間違って戦闘領域に飛び込んで来たらどうするつもりだい
そういうことは、何も考えていませんでした
そうだろうあんたは、あたしにだけ集中してあたしが次に取る行動に合わせて、反射的に対応すればいいって決め込んでいた自分で考えることを、投げ捨ててしまっていたんだよ
麗華は後悔している
あんた一人ならそれでいいさでも、そういう発想で、あんた警護人なんてやってられるのかい今のあんたには、誰も護ることなんかできないよ自分だけ生き残って、護るべき人間を殺しちまうのがオチだろうね
へなへなと麗華は、床にへたり込む
ずっと自分一人で闘ってきたから、そんなことになっちまうんだよっホント、腕は良くても流行らないラーメン屋だよっあんたはさ
ぶるぶると震えて麗華は、涙を流す
本当にわたくしダメな女ですこのままでは、わたくし生きている値打ちは無い
そうさっだから、今日からあんたは克子ちゃんに家事を習いなっ
あんたが護るべき家族と常に一緒に居て家族の中で、自分のできることを見極めていくんだね今のまんま一人で居たって、あんたみたいな女は成長できないよ
ご飯の支度に、掃除、洗濯みんなのために、何ができるかどうしたら、家族のみんなは悦んでくれるのか一つ一つ、克子ちゃんから教わるんだその経験が、きっとあんたを強くしてくれる