うんこちらから劇場外へ出向くのは止した方がいい
判ったわそちらは、あたしが連絡に行って来ます
よろしくね克子
ミナホ姉さんに一礼して、克子姉が入り口へ向かう
さてあたしたちは、どうしようか
マルゴさんが、ミナホ姉さんに尋ねる
とみすずが
あのあたし、そろそろ自分の舞台稽古の準備に入らないと
衣装に着替えたりしないといけないんだな
うん楽屋に行くんだね
はい皆様もいらっしゃいませんか
そうね恵美やマナさんたちは、しばらくみすずさんと一緒の方がいいかもしれないわね
今、この劇場内で一番安全な場所だからよ外で自主練習している子たちも居るけれどほとんどの出演者は、楽屋に居るんでしょ
そうか出演者を守る警護役の人間も、楽屋に居るはずだ
はい、ですから皆さんで参りましょうよ
そう言うみすずにミナホ姉さんは
そうもいかないのよ今日の出演者の中には、小さなお子さんも居るでしょ警護役だけでなく、保護者の方も来ているんじゃない
はい、何人かはいらっしゃると思います
それがお母様ならいいんだけれどもし、お父様で、あたしたちの顔を知っている人なら
あ黒い森の顧客が居るかもしれないんだ
こんな所でしかも、開場時間前にミナホ姉さんと顔を合わすのはマズイだろう
だから、もうしばらくロビーに居るわ
オッケー、なら、あたしもこっちに居るよ
マルちゃんが居るなら、あたしもっ
あたしにとってはさ、マルちゃんが居る所が一番安全なんだもんっ
寧さんは、そう言って微笑む
後は、オレと美智と雪乃か
雪乃さんは楽屋には、いらっしゃらない方が良いと思いますよ
そのお姿ではさすがに変です
雪乃は、黄色と黒の工事現場カラーだ
決して品の悪い服装では無いが
どうみても、頭が弱い子にしか見えない
趣味が悪すぎて目立ちすぎている
それに今日は、高林清子さんがいらしています
みすずの話に、雪乃がスットンキョな声を上げる
雪乃さんの中学校時代のクラスメイトです
マナが、教えてくれた
お昼からずうっと、楽屋で雪乃さんのお話しをなさっていますよ白坂創介さんの家に遊びに行ったことがあるっていう話で家の間取りから、おやつに何が出たかまでずっと話していらっしゃいますわ
みすずが、苦笑する
白坂創介だって、一流広告代理店の部長だ
白坂家の一員だし雪乃だって、中学まではお嬢様校に通っていた
紺碧流の家元の弟子に、一人ぐらい知り合いがいてもおかしくはない
あの女
雪乃が、苦々しい顔をする
それなら、顔を合わせない方がいいかもね
幾ら変装しているとはいえ元のクラスメイトなら、雪乃の正体を見破るかもしれない
マナは、その人と会っても平気なのか
舞夏さんは、その人とは一度くらいしか会ってないしそもそも、マナは舞夏さんじゃないもんっ
マナは、そう言ってニタァと笑う
大丈夫よあたしが付いているから
メグが、そう言ってくれた
旦那様は、どうなさいます
こっちに数人やって来る
前を歩いているのはオレたちにパンフの作業を頼んだ、加奈子さんだ
その後ろに居るのは
工藤遙花と4人の手下だった
ごめんなさい舞台稽古の後、また本番用の衣装を脱がないといけなかったから
稽古様の浴衣に着替えた加奈子さんは、ハァハァ息を切らしてやって来た
わたしの今日の衣装は、家元様からお借りした物だから汚すわけにはいかないんです
加奈子さんは、小さなハンドタオルで汗を拭きながらそう言った
まあもう、全部終わっているのごめんなさい、みすずさんとお客様にみんなやらせてしまって
あたしたちだけじゃないわ瑠璃子さんと美子さんにも手伝っていただいたから
本当申し訳ないです
みんなを代表してオレが、加奈子さんに言った
オレたちみんな、みすずの身内ですから
オレの言葉に加奈子さんは、びっくりする
みすずさんもしかして、この方
あしまった
加奈子さんは、オレを現在非公開になっているみすずの婚約者だと勘違いしてしまったらしい
違うのよ加奈子さん
この人は、お祖父様がお決めになったあたしの婚約者ではないの
メグとマナが、オレの背中をトントンと叩く
ここはみすずさんのテリトリーだから
うん仕方無いよね
もう、鈍いなぁ早く、ミィちゃんの隣に行きなっての
寧さんが、オレを後ろからドンッと突き飛ばす
オレはみすずの横に並ぶ
みすずがニコッと微笑んで、オレを見た
この人はあたしが選んだ、あたしの大好きな人よ
まあそうだったんですか
加奈子さんの顔が、パッと明るくなる
ええ加奈子さんだけに、教えてあげるわねっ
この二人の感じだと加奈子さんは、とっても大人っぽい顔立ちをしているけれど
みすずより、年下なんだな
愛美ちゃんには、話してはダメですか
うふふいいわよでも、愛美さんだけにしてね
和やかに微笑み合う、みすずと加奈子さんの後ろで
工藤遙花は、苦々しい顔でオレたちを睨んでいた
じゃあ、パンフレットのことは加奈子さんにお任せしていいのね
はいもうすぐ、撫子先生の内弟子の皆さんがいらっしゃいますから
あれ、内弟子なら清香さんがもういらしているはずなんじゃ
清香さんは、今、緑子さんと牧恵さんの自主練習を見て下さっています
そっか内弟子の皆さんも、大忙しなのね
みすずと加奈子さんは、紺碧流の弟子同士にしか判らない会話をしている
そろそろ、みすずさんも準備なさらないといけない時間ですよね
そうだったわ急がなくちゃ
加奈子さんが、オレを見る
パンフレットの順番、御覧になりました
順番
みすずさん今日は、最後から3番目に踊るんですよ
最後から3番目って
一番最後は家元の撫子先生が踊られますから
今日の会は、紺碧流の家元がやっている日舞教室の発表会だ
最後は先生自らが踊るんだな
撫子先生の前はお教室の中で一番上手な、愛美ちゃんです
確か愛美さんは、家元先生の孫娘だって言ってたっけ
みすずは、その前
ということはみすずは、今日の出演するお弟子さんの中で2番目の腕前ってことか
大抜擢なんですよみすずさん、とってもがんばっていらっしゃいましたから
そんなこと言わないで恥ずかしいわ
みすずは、照れている
うんとっても、楽しみだよみすず
今日はあたし旦那様のために踊ります
オレはみすずにキスしたくなった