そうじゃないそうじゃないんだよそれはさ
マルゴさんはまっすぐに正面を見たまま、言う
君のおかげなんだよ全部
いや、オレは何もしていませんよ
君の存在があるからあたしたちは、自分を律していられるんだよ君の信頼を損ねたくないから君にとっての、良きお姉さんでいたいから
オレのお姉さん
みんな必死だよでも、無理はしていないみんな楽しんでいるんだ君のお姉さんでいることを君が、あたしたちを信じてくれているからあたしたちは、生まれて初めて自分自身を許すことができたと思う自分自身を好きになれた君のお姉さんになろうと頑張っている自分をね
オレにはよく判りません
寧さんが、オレの手を取る
自分では判らないことかもしれないねでもあなたが、あたしたちを良い方向に変えてくれたことは確かだよ
あたしたちだけじゃないよ年少組の子らみすずさんや、メグちゃん、マナちゃん、美智ちゃんだって、君と触れ合うことでどんどん成長している麗華お姉さんや関さんですら
さっき恭子さんが、麗華お姉さんのことを叱ったでしょ
あんなこと珍しいんだよ恭子さん、よっぽど見込みのある相手でないと人を叱ったりしない人だから
うんたいていは茶化して、笑い話にするだけだよあんなに真剣に叱ってあげている恭子さん、あたしは初めて見た
恭子さんは、頭が良すぎる人だから怒るなんて、体力の消耗になるだけのことはしないんだよすぐに、対応策を思い付いちゃうから怒る前に次の行動に出ているさっきの警察官みたいに、脅しが利く相手ならためらわずに脅すし話の判らない、どうしようも無い馬鹿相手には、速攻で実力行使するし
頭が良い上に、メチャクチャ強いわけだから
怒ることに時間を取られる前に、相手を力で排除するのか
麗華お姉さんの中に残っていた余計なプライドを完全に壊したものね
男装していた頃の麗華お姉さんて、傷つきやすい心とプライドを、あの外見で徹底的に隠していたわけじゃないそれが今、心のヨロイが全部剥がれたわけだからさ
うんあたしたちに心を開いて丸裸になってくれたものね今日は、渚さんのお店に行かせたの正解だと思うよ
そうだよ今の麗華お姉さん丸裸過ぎて、警護人の仕事はできないもの一日、たっぷり渚さんや真緒ちゃんたちと家族の雰囲気に馴染んだ方が良いって
自分の護るべきものが判ったら麗華お姉さんは、もの凄く強くなると思うよ
いや、本当にさ君が起きてくる前に、恭子さんが言っていたんだよあたしたちが精神的に安定していたことも驚いたけれど君が連れて来る人たちが、みんな良い資質の人ばかりだって
いや、オレが別に連れてきているわけではないですよ
そうかなあたしは、君がキーマンだって思っているけれど
そうだよあなたがいなかったらみすずさんも、美智さんも、マナさんも、麗華お姉さんも家族にはなっていないわよ
やっぱり寧さんの言葉にちゃん付けは無い
まさかの香月さんまでが、家族入りしてくれたしね
それはオレも驚いた
ホント、君の能力は驚異的だって、恭子さんが言っていたよ
いや、オレなんて
みんなに引っ張られているだけで何の役にも立っていないのに
君は恭子さんのこと、ちょっと苦手
うんとそうですねまだ、ちょっとどういう人なんだか、よく判らないですから
恭子さんはね黒い森のあたしたちのお父さんなんだよっ
女性なのに、お父さん役だからあなたには、判りづらいんだと思う
そうだね恭子さんは男役だから
ああレズとしても
女性的な感性と、男性的な思考がゴッチャになっている人だからだから、普通にあの人の言動を理解するのは難しいんだと思うこの人は、みんなのお父さんなんだって割り切ると、とっても判りやすくなるんだけど
そうかオレが、恭子さんに感じる違和感はそれが原因か
黒い森の一番上のお姉さんて、感じではないもんな
ミナホ姉さんは、まちがいなく一番年上の姉だけれど
恭子さんはお父さんか
そのお父さんが、ちゃんとあなたの存在を認めてくれたのよあたしたちに、必要不可欠な弟だって
寧さんがニコニコして、オレに言う
他にも、恭子さんが君のことを褒めていたよ特に雪乃さんのことを家族にしないで、ちゃんとラインを引いて区別していることだね
あの子だけはどうしようも無いものね
寧さんにとっても雪乃の評価は、低いらしい
普通の男だとさそれでも、一緒に居るとだんだん情にほだされてくるから、雪乃さんみたいな子だって、仕方無く身内にしようって言い出したりするんだけど君の場合は、ちゃんと明確に区別している
雪乃さんが、絶対にあたしたちの身内にはならない気を許すことはできない女の子だってこと、判っているんだよねそういうことがキッチリできるのは、男の人としては珍しいし、優秀だって恭子さんが、君のことを褒めていたよ
オレは判っているだけです雪乃とは、解り合えないってこと
三次元における2本の直線の関係だね
数学的にはね三次元世界では、2本の直線には4種類の関係が考えられる1つめは、完全に重なる、2つめは平行に伸びていく、3つめは一点だけ交わる、4つめはねじれの位置絶対に交差しない
人間の人生を一本の直線だと考えたらちょっと面白いだろ誰かの人生と自分の人生が完全に重なることは、なかなかないよね平行なら、お互いの姿をずっと見ていられるだろう一点だけ交わって、そのまま離れて行く人生もある平行だと思っていても、実はほんの少しだけ角度が付いていてしだいに遠ざかって行くねじれの関係の人生なのかもしれないし
人と人の人生の巡り会いは、様々だ
オレと雪乃は本当なら、最初から最後まで交わることのないねじれの関係だったんですそれがたまたま偶然で、今、一点だけ交わることになりましたでも、この先は次第に遠ざかっていくしかない
オレたちの人生は重なることも、平行になることも無い
一度交われば後は別れるだけだ
さよならだけが、人生だか
マルゴさんが、溜息を吐く
昔、そういうことを言った人がいるんだよ人との出会いは毎日、意識していなくてもどんどん起きているからねだから、人間が意識できるのは別れの方ばかりだってこと
そっか別れることを前提にしているから、あなたは雪乃さんに優しいんだ
あたしとはどう
やっぱり、いつかは別れていく人だと思っている
別れたくないよずっとずっと一緒に居たい
あたしもだよ
だから、一緒にいよう一緒に居て下さい