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オレと寧さんが、車から降りると

マルゴさんは、すぐにマセラッティを発進させる

オレたちに微笑んだまま

二人だけで取り残される、オレたち

さあ、行こうかケイ

二人きりになった途端寧さんは、オレをケイと呼ぶ

うんお姉ちゃん

オレも寧さんに合わせて、呼び方を変える

うわっすっごいねジャングルみたい

オレの家の庭を見て寧さんが言った

うちの庭は、バァちゃんが死んでから誰も手入れしていないから

樹は茂りまくり、草は生えまくりの大変なことになっている

一応、玄関まで敷石のところは草が生えていないから通り抜けられるが

まあ、外から見たらグッチャグチャだな

住人のダメさ加減がよく判る

うちは親父も母親も、誰も家に呼んだりしませんからここは夜、寝に帰るだけの家だから家の手入れとか、誰もしないんです

オレも、今年の春まで中学は寮生活だったし

この家に帰って来てからも、庭をどうにかしようとは思わなかった

というか勝手に何かしたら、母親に叱責されることになるし

とにかく中に入ろうよ

オレは鉄の門を開けて中に入る

母親の車がいつも停められていた、駐車場は空いている

まああの人は、もう実家から戻って来ないつもりだろうから

ジャングル庭を抜けて玄関へ

あ、この入り口は母親専用なんでオレと親父は、勝手口からでないと入っちゃいけないことになっているから

よく判らないよオレが子供の頃から、そういうルールだから

ケイは、玄関から家に入ったこと一度も無いの

うん記憶には無いなあ

寧さんを連れて、家の外を廻り込む

ここはコンクリートが敷き詰められているから、ジャングル化はしていない

勝手口のドアの前に出る

オレは勝手口の脇に、無造作に積まれたコンクリート・ブロックを持ち上げる

確か、上から三つ目のブロックの隙間に

うんあった

キャンディの入っていた、小さな金属の箱が出て来る

錆びの浮いた箱を開けると鈍く光る鍵が出て来る

勝手口の鍵は、オレが小学生の頃からここに隠してある

オレはドアに鍵を差し込む

中へ入る

空気が澱んでいる

しばらく、家に帰っていなかったから

この家は元から、空気が澱んでいる

この家から離れてみて克子姉によって、ちゃんと生活感が保たれたお屋敷での生活を知って

吉田家の異常性に、オレは初めて気が付いた

この家はダメだ腐っている

娼婦たちの館よりも生命感に欠けている

家の中が、オレが最後に出掛けた時のままなら

どうしたの中、入らないの

不思議そうに、寧さんがオレを見る

あのちょっと待ってて貰える

いやちょっと、中を掃除してくるから

やだっ

お掃除なら、お姉ちゃんと一緒にしよう

でも何て言うか

恥ずかしいの

恥ずかしいというかオレのこと、嫌いになっちゃうと思う

うん多分

ならないよ嫌いになんて

でも、本当に汚いままですから

寧さんは、笑って

平気だよ

そして、言った

あたしケイのことは、何でも知りたいから

勝手口から家の中へ

うん、埃っぽいな

こんなだったんだオレの家

オレは急いで、台所のゴミをチェックする

ゴミ入れにはパンの袋とかしか入っていないし、カップ麺の容器も水で洗ってあるから

悪臭は発生していない

まあ生ゴミの元になるような、肉や野菜は買わないからなあ

オレ一人だけの生活だったし

冷蔵庫、使用禁止だし

ここが台所で隣が、居間です居間って言ってもオレの寝起きしていたソファがあるだけで、他は何も無いんだけれど

家族は来なかったの居間には

うん親父も母親も自宅には居る時は、自分の部屋に入ったきりだったしそれでも親父は、コーヒーとかを煎れにたまに台所に来たりはしたけれど2階の母親の部屋には、全部揃っているらしいから

揃っている

キッチンも、風呂場もトイレも母親専用のがあるらしいんです中へ入ったことがないから、よく知らないんですけれど

とにかく、同じ家の中に居ても、姿を見掛けないから

母親の部屋には、何でもあると思うべきなんだろう

親父の方は風呂やトイレに1階に降りて来るものなあ

オレ1階のことしか知らないから2階へは、上がっちゃいけないって言われてきたし

ね、見に行ってみない2階

無理ですよ鍵掛かってますから

はい、母親はとても疑り深い性格なんでとにかく、この家は家中鍵だらけだから

オレは、台所の食器棚を示す

この食器棚にあるお皿やカップは全部、母親専用なんだオレや親父は、使うことは許されてないんだよ

食器棚には全て、大きな南京錠で扉が開かないように施錠されている

この台所と隣の居間と1階のトイレと風呂場くらいかな母親が鍵を掛けていないのは後の部屋は、全部母親の持ち物で埋まっているから全部の部屋に鍵が掛かっているよ玄関の下駄箱とかもねあそこには、母親の靴しかないから

あなたやお父様の靴は

寧さんが、呆れ顔で尋ねた

オレの靴は、そこの勝手口に脱ぐことになっているまあ、通学用の靴だけだから親父は、毎回、コンビニのビニール袋に靴を入れて自分の部屋まで持って行ってた

玄関そのものが母親専用なんだからそうするしか無い

オレが居ていいのは、鍵の掛かっていない部屋だけなんだよつまり、台所と居間だけ玄関に出る廊下も、基本的にはダメなんだよね

子供の頃から、ずーっとそうなの

いや小学校の頃には、オレの部屋もバァちゃんの部屋が1階にあったんだけれど中学の寮生活から戻って来たら、なくなっていた

なくなっていた

うん鍵が掛けられていて母親の新しい荷物置き場になっちゃったらしい

詳しくは知らない

親父も母親も何もオレには言わないし

でも鍵が掛かっているということは、立ち入り禁止ってことなわけだし

いいも悪いもここはオレの生まれ育った家だけれどオレの持ち物ではないから仕方無いよ

オレは部屋の澱んだ空気が、息苦しくなる

窓を開けて、換気した

うわこの窓、とんでもなく汚れているな

最後に大掃除したのは、バァちゃんが生きてた頃だものな

家じゃないわねここは

こんなの家じゃないわよ

ケイは、そう思わない

うんと

オレここしか知らないから

他の家のことはよく判らない

黒森のお屋敷は、普通の家とは違うだろうし

そうだったねごめん

寧さんが、背中からオレを抱き締める

あたし全然判ってなかった

あたしはヴァイオラにケイちゃんと拉致される前は、幸せだったものパパもママも優しくて良い人だったあたしの家は家だったあたしには、ちゃんとそういう幸せな記憶があるのに自分は可哀想な人間だって、思い込んでた周りの人たちに甘えていたんだねあたし