お姉ちゃんはいっぱい悲しい思いをしたんだから、甘えていいんだよ
じゃあ、ケイはあたしに甘えて
寧さんの豊かな胸が、オレの背中にギュッと押しつけられる
ケイだって悲しい思いをたくさんしてきたのに自分が可哀想だってことすら、気付かせて貰えなかったんだから
オレは、別に可哀想なんかじゃないですよ
オレにはこうやって、寝起きする場所があったしご飯だって、何とか食べられたし
でもケイは、ずっと一人ぼっちだったんじゃないお父さんやお母さんに、無視されていて
ずっとじゃないですバァちゃんが居た頃もあるし
オレは、寧さんに振り向く
今は、お姉ちゃんやみんなも居てくれるから
寧さんは、オレを力強く抱いてくれた
それから居間の方へ行く
台所から廊下を出て、最初の部屋だ
廊下もこうやって見ると、埃が凄いな
親父が失踪していなくなる前は親父自身で掃除機を掛けていたんだろうか
母親がやるわけないからそうなんだろうな
ホントに他の部屋には、鍵が掛かっているんだね
寧さんが、廊下の他の部屋のドアを見てそう言う
各部屋のドア後付けで取り付けられた鍵に、でっかい南京錠で封印されている
ドアの入り口には、冬物とコート類とかバッグ類とか張り紙が貼ってある
この部屋がそれぞれ母親の荷物で埋まっているんですあの人、買い物キチガイで絶対に自分の物は捨てないですから、溜まる一方で
あの部屋は何
寧さんが指差した部屋のドアには
いらないものと書かれていた
だから捨てないんですよ買った物は、全部
あの人はそういう女だ
居間に入る
う
据えた匂いがする
やっぱりダメちょっと待って
止めて遅い
寧さんが、入って来てしまう
うわっ何の匂い、これ
あのこの家から出掛けた前の晩に、オレ、一人エッチしてそのままだったんで
居間の床に、使用済みのティッシュが落ちている
えっ、一晩だけでこんなにティッシュを使うの
オレの寝床のソファの周りは
使い終わった後のティッシュが、散乱していた
いえ親父がいなくなっちゃって家の中に一人きりになっちろゃってから、オレ、ちょっと自暴自棄で一人エッチばかりしていたから
全然掃除していなかったんだ
はい済みません
オレは、慌ててゴミ袋を引っ掴んで落ちているティッシュを拾って捨てる
あたしも手伝うよ
寧さんはそう言って床に手を伸ばす
いいですよ汚いですから
いいから、いいから
寧さんは、そう言ってオレの精液の臭う紙くずを、拾って捨ててくれた
掃除機も掛けようこの部屋も、埃っぽいから
寧さんは、窓を開けて部屋の据えた匂いを外に出す
オレは、掃除機を抱えてきてガーガーと床とソファの周りを掃除した
いや、あのオレ、本当に一人エッチばかりしていたんです入学式からずっと
親父が失踪したのが、入学式の当日だ
それから約一ヶ月
オレはこの部屋の中でオナニーばかりしていた
うん、このティッシュの量は、ちょっとやりすぎだね
ゴミ袋を見て、寧さんがそう言う
もうしちゃダメだよこういうのはさ
ケイのセックスの相手はあたしたちが、するんだから
ケイこの部屋で、自分がセックスすることって、想像したことある
無いよこの家には誰も呼んではいけないって、ずっと言われて来たから
小学校の頃でも
オレが暮らすの友達の家に遊びに行くことはあっても
家に誰かを呼んだことはない
それなのにケイここで、あたしのヴァージンを破るんだ
寧さんが、掃除したソファに腰掛ける
ボロボロのソファの表面を、撫でるように触る
ここがケイのベッドだったんだね
ちょっと狭くないこれじゃあ、身体を伸ばして寝られないでしょう
だから、丸まって寝るんだよ猫みたいに
寧さんの魅力的な肉体がオレがいつも寝起きしているソファに横たわる
そして、寧さんはソファの横の段ボール箱に気が付いた
この箱は
あ、それはオレの私物入れオレの持ち物が全部入っているんだ
寧さんは箱の上に乗せられていた写真に気付く
それは入学記念のクラスの集合写真
ふふーん、この位置にこの写真があったってことは
寧さんが写真をジッと見る
もしかしてケイこの写真に映っている雪乃さんを見て、一人エッチしていたの
ドキリとする
そ、そうだよ
それがオレのオナニーのネタだった
この部屋で最後に過ごした夜もオレは、雪乃でオナニーした
それは、雪乃を実際にレイプする前の晩だった
こんな小さく映っている雪乃さんでも興奮したの
したよあの時は
オレはまだ、童貞だったし
寧さんが、意地悪そうな眼でオレを見る
見せて
ケイが自分でするところ見てみたいの
あたしを見ながらしてみて
そして、寧さんは
ソファの上で、大きく開脚する
寧さんの白い下着が見える
ケイの頭の中から雪乃さんの記憶、全部フッ飛ばしてあげるんだから
寧さん、もしかして
オレが、雪乃をネタにオナニーしていたことに
嫉妬している
ケイの恥ずかしいところは、全部あたしに見せてっ
いい全部だからねっ
昨日書いた、後書きに間違いがありました
さなならだけが人生だは、井伏鱒二先生の文だそうです
寺山修司の言葉は、それを受けたさよならだけが人生ならばで歌にもなっているらしいです
寺山修司のこと
演劇の裏方の仕事をしている頃生前の寺山を知っている先生に何人も会いました
驚いたのはどの人も、寺山修司のことを悪く言わないんです
一人だけでも、寺山さんは本質的には田舎者だったと思うと言った演出家の先生もいらっしゃいましたがそれでも懐かしそうに、寺山との思い出を話されるのです
そのうちの一人の先生の言葉
寺山さんは凄いんだよ若い子たちに会って、その子の才能を見抜くんだよ君は編集者に向いていると言われた子は本当に編集者になったし君は写真家になるべきだと言われた子もプロの写真家になったんだ
当時は、へぇと思って聞いていましたが
後に、寺山氏に見出された人たちの文章を読んでみると
寺山氏が、才能があると感じた子には、次々と仕事を依頼したり自分の人脈を紹介しているんですね
写真家志望の子に、自分の本の写真を頼んだり
ただ予言するだけじゃなくて本当に、面倒見の良い人だったから、見出された人がプロになっていたわけです