オレたちが本当は夫婦だという秘密を守るために
寧は、薬指の指輪を愛しげに触っている
それは良かったところで、寧
マルゴさんが、寧に言う
寧のことだから彼の家に火を付けるとか言い出すんじゃないかと思っていたんだけれど
マルゴさんは、寧さんの放火癖を誰よりもよく知っている
そもそもは亡くなったケイさんの遺体を、家ごと燃やしたことがトラウマになっているんだろう
あ、それは考えたんだけれどねいいの、いいのっ燃やしちゃうなんて、いつでも簡単にできるしっ
寧は、ニコニコと微笑んでいる
あっ、そうだマルちゃん、今度、白いバンでまたここまで連れて来てよケイのソファを持って帰りたいのっ
寧は自分が処女を喪失したソファが、本当に欲しいらしい
ソファ
うんケイがベッド代わりにずっと寝起きしていたソファあたしが貰うことになったから
あ、でもあのソファを運び出すんなら、勝手口からじゃ無理だよ玄関からじゃないと
裏の戸は小さいし家の外をぐるっと運び出すのも大変だ
いいじゃない、玄関から出せばさ
玄関を使ってはいけないと言われている
もう、ケイいいことあそこは、そりゃ確かにあなたが所有権を持っているわけじゃないけれど、でも、あなたの家なんだよ思い出がいっぱいあるんでしょっ
それはそうだけれど
だから、いいんだよ次は正々堂々と玄関を通るからねっあたしが許すっ
お姉ちゃんが、一緒に通ってあげるからっねっ
寧は、優しく笑ってくれる
うーん、良い子、良い子大好きっ
そして、オレをギュッと抱き締めてくれた
ねえねえ、マルちゃんあたし、今、とっても幸せなのっあたし、生きてきて良かったっ
そう良かったね、寧
マルゴさんが、寧に微笑む
ありがとう、マルちゃんっ
ううん、ありがとうお姉ちゃん
いっぱい、感謝しているいつも、ありがとうずっと、ありがとうマルゴお姉ちゃんは、あたしの恩人だよっ大好きっマルちゃん
高ぶる感情寧は顔を紅潮させ、眼から涙を零す
どうしたんだい、突然
マルゴさんは、すっかり戸惑っている
あたしマルゴお姉ちゃんや、先生ううん、ミナホお姉ちゃんや、恭子お姉ちゃん、克子お姉ちゃんたちに、いっぱいいっぱい優しくして貰ってた今、すっごく判るのみんながあたしを、とっても大事にしてくれていたってこと
オレは、泣いている寧の背中を抱いてやる
ありがとう本当にありがとうっ
寧気にしなくていいんだよ君は、あたしたちの大切な妹なんだから
マルゴさんは、優しくそう言った
うんっずっと妹だよっだから、マルゴお姉ちゃんも、ずっとずっとあたしのお姉ちゃんでいてねっ
心配しなくても平気だから
ううんあたし、判っているから
ねえ、ケイ
何お姉ちゃん
あたしね高校は、後1年しかいかない一年間は、ケイと一緒に学生生活を送る
寧は、タブッているからまだ高校2年生だ
今は5月
後1年ということは卒業はしないっていうこと
どうせ元々、卒業することは無理だったんだし
寧は偽の学籍で、高校に居る
本当の戸籍が使えなかったから奈島寧子《ナジマ・ヤスコ》は、まだアメリカから帰国していないことになっている
だから、奈島寧《ナトウ・ネイ》の偽名のままでは、卒業はできない
それは元の戸籍を取り戻して、奈島寧子《ナジマ・ヤスコ》で再入学すればいいじゃないか
今は、まだ5月の始めだしカナダの高校から、編入したことにすれば
恭子さんのツテを使えば、そんな工作は簡単だろう
それでまた、1年生からやり直すの
そんなの、カナダの方の記録を操作すれば、どうにでもなるよミナホと克子さんが、学校の書類上だけ途中編入したということにしておいてくれるから寧は、今まで通り学校へ通えば、そのまま卒業できるよ卒業証書の名前を、寧から寧子に書き換えるだけで済む
マルゴさんは、そんなことを考えていたのか
確かに、うちの学校の運営はミナホ姉さんと克子姉が牛耳っているんだ
どんな無茶な工作だって、その気になればできるだろう
いいの、あたしそうまでして、卒業したくない
それよりあたし、マルゴお姉ちゃんの夢のお手伝いがしたいの
マルゴさんの夢
マルゴお姉ちゃんミナホお姉ちゃんの復讐が終わったら、1人だけで行動するつもりだったでしょ
寧が、真っ直ぐにマルゴさんを見る
顔は穏やかに微笑んでいるが眼は、真剣だ
ダメだからねあたしも一緒だからコンビでしょ、あたしたち
マルゴさんと寧はお揃いの黒い革ジャンを着て、街のチンピラや不良を狩り続けた、悪名高き二人組だ
でも寧は
大丈夫よっケイとあたしにはもう、絶対に壊れない絆があるんだもんっそれに、マルゴお姉ちゃんの計画だって、ずーっとお屋敷から離れて、どっか遠くに行っちゃうわけじゃないでしょ基本的には、お屋敷をベースにして行動するんだよねっ
マルゴさんは、黙って寧を見る
何か考え込んでいるようだ
マルゴさんの夢って、何なんですか良かったら、教えて下さい
まだ、夢っていうほど具体的なものには、なっていないんだけれどね
あたしはあたしみたいな女の子を増やさないために、何かできないかって思っているんだ
インディアン居留地に生まれながら、金髪に青い眼の持ち主だったために酷い差別を受けた
そして、12歳で実の父親を含む、男たちにレイプされ
自分の身を守るために相手を射殺した
今はあたしには、自分の身を守る技術があるから、大抵のことは怖くないあの頃のあたしが、闘う力を持っていたらあいつらだって、あたしを襲って来なかったろうし、あんなことにはならなかったと思うんだ
父親を殺したこと
それが、マルゴさんのコンプレックスになっている
だから世界中の悩んでいたり、大人に苦しめられていたりする女の子たちに闘う技術を教えてあげることができればいいなって思っているちょっとした護身術でも、知っていれば自信に繋がるから女の子たちが、おどおどせずに、胸を張って生きて行けるようになるんだよあたしがそうだったからマーシャル・アーツに出会って、あたしは本当に変わることができたから
そんな夢が
それって、道場とかジムを作りたいってことですか
それもあるけれどただの格闘技ジムじゃ、ダメだよねお金が無い子でも、通えるようにしないといけないし東京に一つだけジムを建てたって、みんなが来られるわけないしあたしは、世界中の子供たちみんなに届く活動にしたいから
世界的な夢なんだ
だから、まずはマルゴお姉ちゃんの知名度を高めないとね世界的に名前を売って寄付を集めるんでしょ国際的なムーブメントにしないとさ