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オレたちに危害を加えたら、ジッちゃんに怒られるだろうしな

とにかくうざったいだけだから気にしないで、真っ直ぐ寄り道せずに帰るんだよお屋敷まで付いたら、恭子さんが何とかしてくれるだろうから

どっちにしろ池田先生のところへ行ったって、君は診察が終わるのを待っているだけだしその後は、寧を美容院に届けて美智ちゃんをまた葬祭場まで帰してあげないといけないしねあたしがやっておくよ

いや、別に待つのは構わないですけれど

尾行を、半分受け持って欲しいだけだよ追尾が半分ならあたしが、追っ手を巻くから

そうかそれなら

もしもの場合は、すぐに携帯で電話してあたしでも、克子さんの方でも構わないから

ええっとさっき渡された、携帯電話はちゃんと持っているよし

寧と美智ちゃんもいいね

うん、ヨッちゃんがいなくなるのは寂しいけれどあんなのが、ずっと付いてくるのは嫌だもんね

仕方ありません

二人とも、納得してくれる

地下鉄の青山一丁目の駅の前で、車を停めるから君、帰り方判る

だいたい判ります

東京の地下鉄は複雑だけれどまあ、路線図を見ればなんとかなる

ヨッちゃん、お金持ってる

上着を確かめると昨日、ミナホ姉さんに渡された封筒が、そのまま入っていた

一万円だけ持っていきますあんまり大金を持っていると怖いし

オレは、一万円札を1枚だけ抜いて残りを寧に預ける

持っててよ、姉さん

寧が、封筒を受け取る

車を降りたら、マセラッティの後ろを見て多分、バンパーの下に発信器が付いていると思うから、引き剥がして

引き剥がして、どうするんです

その辺に放り捨ててくれればいいよ君を追う尾行者が拾っていくだろうから

さ停めるよ

マルゴさんは、大通りの大きな交差で車を停めた

いや、信号待ちの時間に合わせて普通に停車する

じゃあよろしくっ

はい美智ちゃんと診て貰うんだぞ

かしこまりましたご主人様

美智は、真剣な顔で頷く

姉さんもまたね

うんヨッちゃんまた後でねっ

寧は、ニッコリとオレに微笑む

マルゴさんよろしくお願いします

君も、気を付けるんだよ

オレは、車を降りる

マセラッティの後部に廻り込んで

車体の下を覗き込む

確かに、小さな機械がくっついている

オレは、それをむんずと掴んで車から、剥ぎ取る

後ろの窓越しに、マルゴさんたちに見せた

寧が、オレに手を振っている

ドドドドゥゥッ

マセラッティは、信号が変わったのを確認して

オレを残して、発進する

オレは、急いで歩道へ上がって

発信器は、ガードレールに引っ付けた

周りを見回す

あホンダのショールームだ

祝・優勝の大きな垂れ幕が出ている

何だか知らないけれどレースでホンダの車が優勝したんだろう

ふっと、後ろを振り向くと

オレたちを尾行していた車の片割れ

青い車が、道の反対側で停車している

中から、スーツ姿の男が3人下りて来た

あああいつらが、オレを尾行する担当なのね

まあいい

ホンダのビルを背にしてオレは、地下鉄の入り口へ降りて行く

何の問題も無く、切符を買って地下鉄のホームへ

休日だから、人はまばらだ

あ、こんなところに鏡がある

オレは、何気なく鏡を覗く振りをしながら背後を伺う

うん尾行者は、付いて来ている

このままお屋敷まで、ご案内だな

どうせ谷沢チーフの配下だ

黒森のお屋敷のことは知っているから、連れて行っても問題は無い

寄り道しないように

それとオレの知り合いには、会わないように気を付けよう

オレの正体は、谷沢チーフもまだ確認していないはずだ

自分の中に、そういう言葉が浮かんでみて

あれれと思う

オレの正体って

オレは、改めて鏡を見た

鏡の中に映るオレ

ちょっと、くたびれた顔をしている

昨日から、大変なことばかり続いたもんな

口元を歪めて、無理に微笑んでみる

はっ相変わらず、冴えない顔だ

うんでも、これはオレの顔

これはオレだ

大きく、溜息を吐く

しっかりしろ、オレ

勘違いするんじゃないぞ

今オレの周りにたくさんの女の子が居てくれる

みんな、オレを求めてくれる

みんな美人で、才能溢れる、魅力的な子ばかりだ

ミナホ姉さんや、マルゴさんたちみたいにオレを助けてくれる人もいる

本当に、スバ抜けた能力の人たちだ

そういう人たちに囲まれているからといって

別に、オレ自身が凄くなったわけじゃない

オレはマルゴさんや美智たちよりも、弱い

寧やみすずたちよりも頭が悪い

あの子らみたいな、魅力は無い

鏡を見ろ

情けない顔をした情けない小僧がいる

これが、オレだ

オレは両親に捨てられた、ただの高校一年生

無力な存在だ

自分が、弱っちぃ人間だっていうことを思い出せ

忘れるな

オレは、オレなんだ

まもなく、電車が参ります

ホームに、アナウンスの放送が流れる

自分という人間の小ささを再確認したら、気が楽になった

尾行のやつらなんか、どうでもいいや

電車の中は、寝て帰ろう

そういや、ちょっと眠いや

ドゥドドドゥゥ

地下鉄が、ホームに滑り込んでくる

ああ空いてるこれなら座れるな

ドアが開くと、オレは車輌の隅っこのシートに座った

そして眼を閉じる

地下鉄から、JRへ

そして、私鉄へ

私鉄の駅から、バス

お屋敷へ戻る道中、オレはほとんど眠っていた

目的の駅に着く度に、慌てて下車するのを繰り返す

尾行のことは、無視していた

バス停から、お屋敷へ向かう道すがら

オレは、ふと気付いた

この尾行者には殺気が無い

ヴァイオラの配下に追い掛けられた時には、もっと緊迫感があった

そういう怖さを感じない

だから、オレ居眠りできた

あ、オレマルゴさんに、騙された

オレの後ろに居るのは尾行者じゃない

護衛だ

谷沢チーフは、ジッちゃんに対して気を遣って

部下に、オレたちの護衛をする様に命じているんだ

オレがみすずの相手だから

もちろん大きなお世話だし

発信器とか付けてくるのは、論外だけれど

谷沢チーフに悪気があってしていることではない

って、ことは

マルゴさんは、尾行者の数を減らして、巻くためにオレをマセラッティから下車させたんじゃない

オレが、一人きりになる時間を作ってくれたんだ

一人になって、ゆっくり過ごす時間を

ここんとこ、ずっとオレは、誰かと一緒に居なくてはいけなかったから