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もしも、不意に何かのトラブルに遭遇したら谷沢チーフの部下が、オレを助けてくれるだろうし

あ全然、ダメだなオレ

オレやっぱり、女の子の前だと格好つけているんだな

さっきの車中みたいに、無防備に居眠りとかできないもの

あいつらの前では

あの子らの視線を感じていつも、緊張している

マルゴさんは、それを知っているから

オレが一人になって、リフレッシュする時間をくれたんだ

まだまだダメだなオレ

道の向こうに、お屋敷のある小高い丘が見えてくる

あそこへ着いたらまた、キリッとして、心を集中しないといけない

うんちょっと、まだ気持ちが整っていない

オレは、一旦、立ち止まる

道端の自販機で、冷たいコーラを買って飲んだ

炭酸がシュワッとして眼が冷める

オレは、自分の頬をパンと叩く

しっかりしろオレ

さあ行くぞ

お屋敷に向かって、再び歩き出す

ここからは黒森の男に戻らないといけない

次話から、アニエス編です

360.二つの監禁室

しっかし

よく考えたら、お屋敷に玄関から徒歩で入るのは、これが初めてじゃないか

いつも、車だし

メグと登校した時は、裏口からだったし

どうやって、入ったらいいんだ

尾行が付いて来ているから、スッと入りたいけれど

とりあえず、鉄の門の前まで行く

おこんなところに、呼び鈴がある

とにかく、スイッチを押してみよう

ポチっとな

それだけで、ホッと安心する

何か、格好悪いが他に返事が思い付かない

ええ見えているわ

オレからは判らないけれど監視カメラが、あるんだな

今開けるからはい、どうぞ

鉄の扉が、ガチッと鳴り自動的に、キーッと開く

オレが敷地の中に入ると、扉は自動的に閉まった

香月セキュリティ・サービスの尾行の人たちとは、ここでお別れだ

手でも振ってあげた方がいいのか

いや、無視してあげた方がいいんだろうな

オレも、あの人たちも余計な気遣いをしなくて済む

緑の中を、屋敷に向かって歩く

ここはいつも車で通っているから、よく知っている

うん、今日も天気がいいな

空は青空寒くもない、熱くもない

理想的な五月の休日だ

身体が、かなり疲労している

裏庭の芝生にでも引っ繰り返って、日向ぼっこしながら、ゆっくり昼寝でもしたい心境だ

オレが屋敷の玄関に着くと

ドアが、ガチャッと開いた

お帰りなさいませっ

出て来たのは、メイド服を着たメグだった

恥ずかしそうに、オレの方を見ている

後ろから、お揃いのメイド服衣装の克子姉も現れる

どうメグちゃん、似合うでしょう

克子姉が、自慢げに言った

どうかな、ヨシくん

うんすっごい良く似合っているよ

メグは長身で、細くて、足が長いからコスプレ衣装が似合う

うんあたしは、やっぱりお嬢様じゃないから高価なドレスよりも、こういう仕事着の方が似合うよね

メグは、そう謙遜する

そうじゃないってすっごい可愛いよっメグ

オレは、グルッとメグの周りを廻って、じっくり観察する

うん健康的な溌剌とした肉体が良い

ヨシくん気に入ってくれた

もちろんさ

オレが、そう返事をすると

ほらっ、あたしが言った通りでしょはいメグちゃん、ご挨拶して

克子姉が、メグを促す

でも、恥ずかしいです

いいから、絶対に喜んでくれるから

メグは、克子姉の言葉にスカートをちょこんと摘んで、オレに礼をして

メグは今日から、ヨシくんだけのメイドさんになりますよろしく、お願いします

違うでしょ、そこはよろしくお願いしますご主人様でしょっ

だって恥ずかしいしご主人様は、美智さんが使っているから

じゃあ、英語でMasterとか呼ぶ

やめてくれよ、克子姉オレがマスターじゃ、田舎の喫茶店みたいだよ

うんカンベンして欲しい

ええヨシくんは、ヨシくんです

メグも、そう答える

本当のメイドさんじやなくってメグは、オレのお嫁さんなんだから、呼び方まで変えなくていいよ

そうねメイド嫁でいいか

克子姉は、納得してくれた

じゃあ、あたしはメイド長奥さんね

上機嫌に微笑む

色々とご指導下さい、メイド長さま

メグが恭しく、克子姉に頭を下げると

この克子姉さんに、まっかせなさいっ

克子姉は、ポンと自分の横腹を叩く

さ中へ入ってあなた、お昼は食べた

いや今朝は朝食が遅かったし、缶ジュース一本飲んだだけだよ

じゃあ、何か用意するわ

克子姉とメグと一緒にお屋敷の中へ入る

建物の中を抜けて中庭のテラスに出る

そこには、ミナホ姉さんが紅茶を飲みながら、ノート・パソコンを拡げていた

あら、お帰りなさい

ただ今、姉さん

家族として、ごく当たり前に挨拶する

大変だったでしょ尾行されながら、帰って来るのも

いいや、全然帰りの電車は、ずっと寝てきたよ

だって、あの人たち護衛なんでしょ

そうよよく気付いたわね

フフっと、微笑む

香月セキュリティ・サービスの情報部の人たちよあたしたちは、香月様のご命令で特別に秘匿・保護すべき集団に認定されることになったから

特別に秘匿・保護すべき集団

香月グループにとっての特別な集団ではないわよあたしたちは、日本国家にとってのトップ・シークレットになるわけ

に、日本の機密

今回の事件は政財界のご年配の方たちにとって、衝撃だったらしいのつまり、あたしたちの持っている顧客名簿や記録写真がね戦後の日本の政財界の皆様の夜の交友録が全て判ってしまうわけでしょうああいう世界だと、70代、80代でも現役でお仕事なさっている方も多いし代替わりしても、息子さんが事業や政治の地盤を引き継いでいらっしゃる方も多いしねあたしたちの持っている記録は、いつでも大きなスキャンダルを引き起こせるわ

白坂創介は、馬鹿だからそれをすんなり暴力団に渡してしまおうとしたけれど

ミナホ姉さんのお祖父さんが運営していた頃の、黒森楼の全盛期にはこの屋敷に、日本の大物たちが通い詰めていたんだ

ただの娼館でなく、一流の社交場であったという

ならば、政治家や事業家たちによって、ここで多くの裏取引も行われたのだろう

どうする思い切って、全て公表してみる与党も野党も、大物と言われる政治家は全員ダメージを負うわよ政権交代どころか、歴史のある政党は全て潰れるわね大企業もそうよ世襲の社長さんや会長さんたちが軒並み、引責辞任しなくてはならないことになるわね

ミナホ姉さんは、意地悪そうに笑った

止そうよそういうの、オレは興味が無い

あたしはあなたたちが幸せに暮らしていく場所を護れれば、それでいいわ