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工藤母が、怒りの矛先をマルゴさんに向ける

そういうあんただってただの警備会社の社員じゃないだろ裏の世界に少しでも顔を突っ込んで生活している人間が、偉そうなことを言うもんじゃないよ

あたしは香月セキュリティ・サービスの人間ですあんたたちとは、違うわ

工藤母は、黒い森への蔑視をあからさまにした

夫以外の男と不倫している様な女が、勝手なことをおっしゃらないで下さい

美智が、静かに母に告げる

子供のくせに、親を批判しないでよっ

カッとなった工藤母が、再び美智を平手打ちしようとする

今度は、美智は母の手を避ける

母の首元をドンと突いた

工藤母は、そのまま後ろに尻餅をつく

美智ぃぃあんたぁぁ

工藤遙花が、折れた腕の痛みに耐えながら妹を見上げる

そんなに強いくせに今まで、あたしに隠していたの

工藤遙花は悔し涙を流していた

妹に圧倒的な力の差で負けたことが、どうしても納得できないようだ

姉上に勝つなというのがこの方のご命令でしたから

美智は母親をこの方と言った

もはや工藤悦子を自分の母親とは認めたくないらしい

お母さん何で

工藤遙花が、泣きながら母親を見上げる

この子は美智は、工藤流古武術の申し子なのよこの子は、生まれつき工藤流の考え方をしていたの誰にも教えられないのに、工藤流の闘い方を理解していたいいえ、何度あたしが教えても、普通の格闘技のルールが理解できなかったの工藤流しかできない子なのよ

わたくしには、スポーツとしての格闘技に対する興味はありません必ず1対1で闘うとか、時間制限や、禁じ手の有無審判による判定など、理解ができませんそんなもの実戦には全て関係ないではありませんか

美智は実戦、本気での殺し合いにしか、興味が無い

この子は天才よあの人も、そう言っているわ工藤流古武術の歴代の継承者の中でも、この子ほど早熟な人間はいないってでも

工藤母は、憎々しげに話す

この子の力は現代では裏の世界でしか使えない無意味な天才なのよ

工藤遙花が、妹を見上げる

じゃあ今まで空手の試合で、一度もあたしに勝てなかったのは

マルゴさんが、口を開く

美智さんだって、もう大人なんだ空手の試合ってことなら、ルールを尊重しようとするさだから、混乱してしまうんだろうねルールとは関係無く、美智さんには相手を確実に倒すための道筋が見えているそれが空手という格闘技の枠からは大きく外れているから実際にその通りにするわけにはいかなくて、それで負けてしまうんだろう

はい空手という枠の中では、わたくしは自由に動けません

美智が、そう告白する

美智あんた、いつからあたしに勝てると確信していたの

三歳年上の姉が妹に尋ねた

わたくしは物心がついてより今まで、一度たりとも姉上に劣っていると感じたことはございません

生まれてからずっとあたしのことを弱いと思っていたのねずっとずっと、あたしのこと馬鹿にしていたのね

口惜しさと憎しみの涙がボロボロと零れる

申し訳ありません

美智はスッと姉に頭を下げた

どっちにしても君には、この世界は無理だよ他のお友達と一緒にスポーツの世界へ戻るんだね

マルゴさんが冷たく、工藤遙花に言った

ちくしょうみんなして、わたくしを弱いと嘲笑うのねちくしょう

震えながら泣く工藤遙花

どうせ、あたしの才能なんてこんなものよ妹にすら勝てない、弱い身体の持ち主なのよ

こうなるのが判っていたから美智には、本気で遙花と闘わないように言い聞かせてきたのに

工藤母がマルゴさんとミナホ姉さんを睨む

恨むわよ、あんたたち絶対許さないから

違うよその子が弱いのは、才能が劣るからでも、身体が弱いからでもないさ

工藤母と姉娘が怒りの眼で、マルゴさんを見上げる

弱いのは心だよ

心なら

美智だって、決して強くはない

オレの呼び掛けに、美智がスッと反応する

はいご主人様

今、この瞬間に家を捨てろお前の残りの人生は、オレとみすずに捧げるんだ

美智は母親と姉に振り向く

お別れでございますこれまで、わたくしを育てて下さってありがとうございましたお二人には、大変感謝致しております

美智あんた、何を言っているの

驚く母

わたくしは身も心も完全に工藤流古武術継承者になってしまいましたもう、あなた様たちと一緒の家族には戻れませぬ

美智

わたくしの私物は全てご処分下さいお手数をお掛けして、大変申し訳ございませんが

美智馬鹿なこと言わないで

姉が、叫ぶ

武人として生涯を捧げるべき主に巡り会えましたわたくしは、この道を参りますどうぞ、ご達者で

美智は、オレとみすずが貰いますこいつには、オレたちのために生きて貰いますオレの子を産ませます

ずっと母親と姉に対して無表情だって美智が背筋をゾクッとさせる

ご主人様

美智はさっき本来の工藤流古武術とは自らの意志をもたぬ一塊の凶器と化す業だと言った

つまり美智は、自分の圧倒的な戦闘力を自分でどうつかうべきなのかは、考えられない

武人として力は全て、主に捧げるものだと信じ切っている

それは、みすずが言っていた通り

美智には、常に彼女を支配する人間が必要だってことだろう

そういう相手がいないと美智は、自分の武力に押し潰される

ずっと、オレとみすずの側に居ろお前は、オレとみすずのことだけ考えていればいいんだ

そういう顔はするなオレやオレの仲間に対しては、愛想良くしろお前、オレやみすずに可愛がられたいんだろ

なら、オレやみすずが喜びそうな態度を取れオレたちの喜びが、お前の悦びだそうだろ美智

肝に銘じます

そして、美智は不器用そうに、ニコッと笑った

まあ初めは、こんなもんでいいか

キスするぞ美智

オレは、美智を抱き寄せる

どうぞわたくしの全ては、ご主人様のものですお好きになさって下さい

オレは美智に唇を重ねた

工藤母と姉が苦々しく、オレたちを見ている

絶対に許さないわあたしの生涯を掛けて、あんたたちをブッ潰してやるから黒い森

工藤母は、オレではなくミナホ姉に呪詛の言葉を吐いた

あたしたちは誰からも許されるつもりはないわ

ミナホ姉さんが、冷たい眼で答えた

あたしたちはあたしたちで自らの生存を賭けて、サバイバルしているだけよ美智さんが、彼とみすずさんの支配下でなくては生きていけないというのならあたしたちは、彼女を受け入れるだけだわ

工藤美智さん黒い森にようこそっ

寧さんが、ニッと笑ってそう言ってくれた

そう言ってスッと頭を下げた

工藤母が、香月セキュリティ・サービスの医療隊を奈落に呼んだ