彼女は部屋の隅で、またカチャカチャと知恵の輪と格闘している
克子たちは、明日は香月のジィさんの息子の葬式に行くんだろ
はい、その予定です
あらあたしも行かなくていいのかしら
だってあたしが蹴り殺した人のお葬式でしょ
たははっあたしとあんたが参列したら、警備の人数が3倍になっちゃうっての
えー、あたし別に騒ぎを起こす気はないわよ
そうじゃなくってキョーコ・メッサーとミス・コーデリアが二人並んで現れたら、警備担当者はパニックを起こすよちょっと気の毒だろう
そうねえじゃあ、いっか暴力団潰しの方が面白そうだし
メグが、お皿の乗ったワゴンを押して台所から出て来る
すげぇ、緊張している
まあこの人たちと一緒に台所に居るのは怖いよな
よ、ヨシくんごはんできたわ
オレの方に、身を寄せる
確かに、台所の方から美味しそうな匂いが漂ってきた
クンクンクンミス・イーディが反応する
ポイッと知恵の輪を投げ捨てた
おっベスト・タイミングで帰って来たみたいだねっ
寧とマルゴさんが、部屋に入って着た
髪を黒く染めている
あら、黒に戻したのいいんじゃない可愛いわよっ
恭子さんが、寧に言った
でしょ、でしょっねえっ
寧が、オレにニコッと微笑む
うん綺麗だよ
可愛いとかいう、レベルじゃない
人工的な金髪と、カラーコンタクトが寧の自然な美しさを隠していたんだ
黒髪に、ダークブラウンの寧はナチュラルに美しい
とんでもない美少女だ
懐かしいね、出会った頃のあんたに戻ったねもっとも、あの頃の寧は、そんなにニコニコ笑っていなかったけれど
恭子さんが、寧の顔をしげしげと見て言う
うんやっと、心の底から笑えるようになったのヨッちゃんのお陰だよっ
そう言って、寧は後ろからオレに抱きつく
うふふっヨッちゃん、だぁい好きっ
その光景を、恭子さんはミス・コーデリアに指し示し
あの通り、あの子はヘテロだから手を出すんじゃないよあたしの妹分なんだから
判っているわよっ
ミス・コーデリアは、恭子さんに腕を絡める
ヘテロって何です
ノンケってことだよ
恭子さんは答えた
よく判らんぞ
メグが、暗い顔をしている
寧さんが、黒髪の超少女になって帰って来たことにショックを受けているのか
オレが声を掛けようとすると寧が、オレを制した
ちょっと恵美っ
寧から今までのメグちゃんではなく、恵美と呼ばれたことに、メグはハッとする
あんたさぁまさか、こんなんで負けたとか思っているんじゃないでしょうねっ
そ、そんなこと思っていないです
寧は、オレを抱き締めたままふっふふーんと、メグに微笑み
恵美さあんた、自分が本気になったら、今の何割増しで綺麗になれると思っている
何割増し
本気で美容について勉強してファッションセンスとかも磨いて、やれることぜぇーんぶやったら、あんたは今のあんたより何割増しまで綺麗になれると思うわけ
そんなの、考えたことはありません
メグは、暗い顔で答える
じゃあ、今考えなよっ5割増し6割増し2倍とか3倍いける
せいぜい3割増しぐらいだと思います
ふーん
寧が、ジロジロとメグの顔を見る
今より3割増しには綺麗になれるんだね
でも、あたしがどんなに頑張ったって寧お姉さんほど、綺麗にはなれません
メグの言葉に、寧は
ふざけんなっバーカ
そういうのはねっ、本気でやってみなけりゃ判らないでしょっ最初からあきらめて、どーすんのよっ、あんたはっ
寧お姉さん
クスッと、寧がメグに微笑み掛ける
今日からあたしか教えてあげるからっ恵美が綺麗になるために、あたしが知っていることは何でも教えてあげるっ美容体操も一緒にやろっそんで、とっとと3割増しになってよ女を磨いて磨いて磨き上げてっグダグダ落ち込んでるヒマなんか無いんだからねっ
メグは、呆然としている
みすずにも宣戦布告してきたから、恵美にもするねっあたしたち姉妹は、助け合うだけじゃダメなんだと思うんだっ今のままなら、ヨッちゃんの優しさに、みんなで甘えるだけの怠惰な女になっちゃうよそんなあたしたちなら、ヨッちゃんが疲弊して倒れちゃうっての
寧は、優しくオレの頭を撫でてくれる
あたしたち、ヨッちゃんの女は競い合って、磨き合って、どんどんいい女にならなきゃヨッちゃんのためにね
ヨシくんのために
そうだよっ落ち込んでいるヒマなんて、無いんだからねっ
寧が微笑む天使の様な笑みで
いい女になろ一緒にさっ
恭子さんが感心して、マルゴさんに言う
へえ成長したもんだねあたしたちに隠れて、いつも小さくなっていた寧が、こんなことを言うようになって
寧も成長したんですよ今では、妹が何人も居るお姉さんですから
オレがやって来るまでは寧は黒い森の最年少の妹だった
今では年少組の少女たちを束ねる、立派なお姉さんだ
メグ寧お姉さんによろしくお願いしますって言うんだ
オレは、メグにそう促す
それとも闘わずして負けを認めるのかそういうのって、メグらしくないぞ
よろしくお願いしますあたし頑張ります寧お姉さんみたいに、綺麗にはなれないと思うけれどでも、精一杯、努力しますっ
うんっかかってきたまえっぬふふふっ
さてそれじゃあ、ご飯にしましょうか
克子姉が、席を立つ
ミナホは
マルゴさんが、ミナホ姉さんを探す
お嬢様は、お部屋にいらっしゃいます今はお忙しくしていらっしゃいますからお食事は、後であたしがお運び致します
そうそう、ここに居るメンバーで食べちゃおうっ
あのさ克子姉
オレはちょっと、考えていることがあった
オレアニエスの部屋で食べたいんだけど
アニエスの
克子姉は、びっくりしている
アニエスはいつも、あの地下室で一人で食事をしているんだろ
ええそうだけど
だったら、一緒に食べたいアニエスとは、そういうところから始めないといけないって思うんだ
アニエスと向き合うには
日常生活から共にするしかないと思う
でも他の人が一緒だと、アニエスはご飯を食べないわよ
だったら、そのままずっとアニエスの部屋に居るよずっと居れば、アニエスもお腹が空くだろうから、食べるだろオレに、攻撃してくる意志が無いって判れば
何時間もかかるわよ
構わないさというか明日、お葬式に行く以外は、連休の残りの時間はアニエスの部屋で過ごすつもりだよ、オレ
一気に片を付けるには、その手しか無いと思う
一緒に寝起きして食事するそうやって、オレと居ることに慣らしていくしかないよあの子の場合