アニエスは、まだ食事に手を付けていない
しかし、豪快にバクバクと食べ続けるイーディをジッと見ている
うん、上手くいってるみたいだね
寧が、オレにニッと微笑む
ヨッちゃん入学試験とかでさ、アガらないようにする一番良い方法って知ってる
え知らないです
メグも、オレたちの話を聞こうと寄って来る
自分よりも、もっともっとアガっている子を見つけることだよっ人間てさ、自分よりも、もっと切羽詰まっている人を見ると落ち着いて冷静になれたりするんだよねっ
今の場合はアニエスが、自分の世界に乱入して来たあたしたちに警戒しているのは当然でしょ
アニエスはずっと、ベットの位置から動かずにいる
だからアニエスよりも、もっともっと警戒心でいっぱいいっぱいになっている子を用意してみました
しかも、その子はどうしてだか、恭子さんたちにハブられているみたいですあたしたちの方に近寄らないで距離を取っているアニエスから、すれば自分の立場に近いような気がして来ない
だから、恭子さんは、わざとイーディを
あたしたちのリーダーは、恭子さんだってわざと大げさにアピールしているのよ最初からでその恭子さんとイーディの人間関係に隔たりがあることも、最初から示している恭子さんイーディを担いで、現れたんだから
アニエスから見れば拉致されてきた子にしか見えない
最初のミュージカルも、イーディだけ強制的に参加させられていたし
そしてイーディが、恭子さんたちをもの凄く警戒しているでしょアニエス以上に、表情豊かにね
イーディってそんなに警戒しているんですか
オレには、彼女の様子はコミカルに見えすぎて実際、どんなものなのか計りようが無い
もう、すっごい状態よだから、あんなに料理が憎いみたいに、バクバク食べ続けているじゃない
イーディストレスで大食いしちゃうタイプみたいよねっ
寧が、悪戯っ子の笑みを浮かべる
いつでもフルタイム、大食いなわけじゃないんだ
でイーディが、ああやってムシャムシャご飯を食べているからアニエスも、そろそろお料理に手を付けると思うよっ
自分と同じように、恭子さんたちから圧迫されている子が平然と食べているんだからお料理に対する警戒は、しなくなるわよほら
アニエスが自分の足下の皿に近付く
すぐ横に、ガツガツと食べるイーディ
2皿目も空になった多度、警戒しながら、克子姉の居る大鍋の前へ行く
はいお代わりね
克子姉が、シチューをよそう
また警戒しながらアニエスに近付く、イーディ
パクパクと、シチューを掻っ込む
ふと、アニエスを見る
イーディとアニエスの眼が合う
ほら、イーディの眼がアニエスに言ってるよ何で食べないんだって
寧が、そう解説してくれた
アニエスが足下に置かれていた、シチュー皿とスプーンを取る
おそるおそるだが
シチューの中にスプーンを入れ
スッと掬う
イーディは、アニエスを見たままパクッとシチューを食べてみせる
そしてニッと微笑む
こいつは美味いんだぜと言わんばかりに
それを見て
アニエスも、口にシチューを入れる
克子姉が作ったシチューだ
美味いんだってのこれは
アニエスが口の中のものが、毒では無いと確信する
これは美味しいものだと
そうだろという眼で、イーディがアニエスを見る
イーディーが、パクッとシチューを食べる
それを見て、アニエスもパクッとシチューを食べる
これでいいんだよアニエスは、まず、みんなと一緒に同じものを食べるっていうところからスタートしないといけなかったんだから
アニエスっ
寧が、アニエスに声を掛ける
振り向いたアニエスの前で寧がシチューを食べる
美味しいよねっアニエスっ
アニエスに見える様にシチューを食べる
うん、美味しいっ
メグも続いた
美味しいわっ
もっと欲しかったら、ここにいっぱいあるからねっ
克子姉が、シチューの大鍋をアニエスに示す
みんな同じ鍋のシチューを食べているんだということを、改めて示す
アニエスの顔は、まだ警戒しているが
それでも、シチューを食べる手は止まらない
これは、彼女が物心付いてから初めて食べる人間的な料理なんだから
イーディが、ふと何かを思い付いたらしい
再び、警戒したままメグのところへ行く
イーディは、メグが英語が喋れないことは知っている
だから、身振り手振りで意志を伝える
すなわちあの子の分のタコスを小皿に取ってくれ
ああ判ったわ
メグが小皿に、タコスを取り分けてミス・イーディに渡す
すると、イーディは
おいおい、水も付けてくれなきゃ困るじゃないかという、アクション
あ、はいお水ね
メグはワゴンの下から、ペットボトルを一本取りだして、手渡す
再び、恭子さんたちを意識して、そろりそろりと戻って行くイーディ
アニエスの前に、タコスの小皿と水のボトルをスッと置く
アニエスは、新しい皿に警戒している
イーディは、自分の小皿のタコスを取ってアニエスの前で、食べて見せる
こいつは辛いぜということを示すために、ホーッ、ホーッと息を吐く
いやHOT、HOTと言っているんだな多分
それでも、アニエスが食べないから
イーディは、英語で彼女に何か言った
緊張しているのか、異常に早口だったので
オレにはホッチャン、ホッ、ホーッ、ホアアーッホアーッとしか、聞こえなかった
多分、とっても辛いけれど、美味しいから食べてご覧て言っているんだろうと思うけれど
大丈夫だよっそれも美味しいからっ
寧が、タコスを食べて見せる
メグも、オレも
うわっ、辛っ
トウガラシに頭を引っぱたかれたような衝撃を受ける
あ、ヨッちゃん、タコス初めて
ヨシくん、はい、お水
メグが、ボトルを開けてオレに手渡してくれる
オレは、ゴクゴクと飲む
うふふーんっ辛いものはね、水と交互に食べると止まらなくなるんだよーんっ
その頃、ついにアニエスがタコスに口を付ける
パクッと頬張って
ンンンンムンッ
ずっと無表情で死んだような顔をしていたのに
タコスの辛さに驚いて、眼をぱちくりさせる
イーディが、ペットボトルのキャップを外して彼女に手渡す
アニエスは、慌てて水を飲む
そしてイーディを睨む
何てものを勧めたんだと
しかし、イーディは平然と彼女の前でタコスを食べ続ける
自分にとっても辛いんだということを示すために、食べた後にプハァと息を吐く
そして、水をゴクゴク飲む
それから、次のタコスへ