それは判らないけれどでも、あたしはヨッちゃんがいないとダメなのヨッちゃんが、居なくなったらきっと死んじゃうよ、あたし
それは、あなたが彼に依存しているということでしかないわよ
ミナホ姉さんは、優しくそう言った
これは昔あたしが娼婦だった頃に、優花さんから聞いたんだけれど
優花さんは、お屋敷の元娼婦だ
かなり古参の
優花さんは白坂創介が、このお屋敷をメチャクチャにしてしまう前のお祖父様の代からいらした方でしょう娼婦になる前も娼婦になってからも、いっぱい恋をしたっておっしゃっていたわ
ミナホ姉さんが、懐かしそうに言う
それでねある時に、こんなことをおっしゃったの愛というのは、どれだけ迷惑を掛けられても、喜んで受けとめることができることだって
迷惑を掛けられても、喜んで受けとめられる
子供に対する母の愛がそうでしょどんなに、迷惑なことでもお母さんは、子供のためなら受けとめてあげるわよねまあ、ちょっとは怒るかもしれないけれどでも、男女の愛は違うんだそうよ
寧が、真剣な顔でミナホ姉さんの話を聞いている
男女の愛ではねある時から、相手に迷惑を掛けられたことが嬉しく感じるんですって自分を頼ってくれたこと自分が相手を助けてあげられることが、本当に嬉しくて堪らないんだそうよ
この優花さんの定義に従ったら寧や恵美を愛しているのは、彼の方よね彼は本当に献身的にあなたたちに尽くしてくれているからどんな迷惑を掛けられても受けとめてくれるでしょ、彼
2人もオレを見る
良かったわね、あなたたち彼に愛されて
ところであなたたちは、本当に彼のことを愛しているの
ドキリとする2人
依存することと愛することは、別よ
寧もメグもじっと、自分を顧みる
はいはい考え込むのは、それまでねそんなの考えても意味が無いことだから
ミナホ姉さんの言葉に2人は、えっと顔を上げた
ちょっとまた別の話をするけれど将棋の棋士になりたい人が、一日10時間、将棋の研究をするのは努力かしら
ミナホ姉さんは、メグに尋ねた
それは努力だと思います
そう本人に聞いたら、そうは言わないと思うわよ棋士になりたいのなら、1日10時間ぐらい将棋盤の前に向かうのは当たり前だわというか、10時間ぐらい普通に将棋を指し続けられないと、棋士になんてなれないわ
例え練習だろうと将棋を指すことを嫌嫌やってる人なら、棋士なんて無理どんな時でも将棋を指すことが当たり前で、日常生活の一部になっているからこそ棋士なわけでしょ
彼もそうよ彼は、あなたたちの望むことを何でも受け入れるし、どんな時だって全力で頑張ってくれるけれど嫌嫌やっているとか、努力しているとかっていう感覚はないはずよそれが当たり前だと思って、普通にやっているだけよそうよね
うん別にオレ、努力とかしていないよその時、その時に、そうしたいって思っていることをしているだけで辛いとか、嫌だとか思ったこと無いし
ていうかみんな、綺麗で優しくて、最高の女ばかりだし
オレが文句を言ったら、罰が当たる
ほら彼は、そう言ってるわよ、寧
ミナホ姉さんは、寧を見る
だから、あなたはしゃちほこ張って、彼や妹たちのために、自分が努力しようと思うのはやめなさい自然体でいいのよどうせ、なるようにしかならないっていうか最後には、この子がどんなことでも受け入れちゃうから
恵美も何が起きたって、この子はあなたのことを真っ正面から、受けとめてくれるわそのことは、もう判っているでしょ
メグは、神妙な顔で答えた
彼は、あなたに迷惑を掛けられることは全然苦じゃないのむしろ、あなたに迷惑を掛けられることを喜んでいるんだからね
メグがうんと頷く
だから後は、あなたの中だけの問題だけなのあなたが彼と他の子たちと、どんな関係になりたいかを考えなさい無理はしなくていいわ寧みたいに、理想を追ったって現実は、そんな風にはならないから恵美はまず、自分がどんな女の子なのかを理解するべきね
過大評価したら困るけれど、今みたいにやたらと卑下するのも困るわそうね自分が彼のためにできることを箇条書きにしてご覧なさい
あたしができることですか
そうよそりゃ、料理とかは克子の方が上手いんでしょうけれど他人との比較は、今はいいから、とにかく自分のできることを書き出しなさい結構あるはずよ彼が喜んでくれそうなことがね
ミナホ姉さんは、メグに微笑む
エッチ・シーンまで行かなかった
私の父は、病気前から母校の大学の社会人講座に通っていました
友達もいるらしく、残りの授業が少ないので、どうしても行きたいと言います
まあ、父が倒れたことは、誰にも言って無かったらしいので久しぶりに、友達に会いたいらしいのです
私が、今日、大学まで付いていくことになりました
まあ、今日は夜勤だからいいんですけれど
昨日の段階では、授業は10時半から12時までと言っていました
なので゛、そのつもりでいたのですが
今朝になって、父があれ、もしかしたら9時30分だったかもしれないと突然言い出しまして
どっかに授業時間を書いたものは無いの
判らん、どっかへやってしまった
時計を見ると、もうギリギリなので慌てて出掛けました
大学へ着いてみるとやっぱり10時30分開始です
そこの大学は、学食も開いておらず
父と2人で、ベンチで缶コーヒーを飲んでました
で時間に父を、社会人講座の教室へ届けて
私は、自分の母校ではない大学で2時間過ごさないといけないという
これがなかなか辛い
勝手が全然判らないですし
変に女子大生とかを見ていたら逮捕されそうだし
まあ、大学内に小さな博物館とかあるところだったので
そういうところで時間を潰しました
で、授業終了時間に父を拾いに行って
父と学食で昼食を取りました
オレが学生だった頃は、ここは**だったんだよ
ホント、いろんなことは忘れてしまっているのに昔のことは、よく覚えています
それって、いつ頃のこと
昭和28年だな
とにかくくたびれて帰って来ました
369.白坂雪乃、30円
ミナホ姉さんの話を聞いていたマルゴさんがオレたちの会話に加わる
確か有名な作家の先生が書いていたんだけれどさ童話のシンデレラの最後ってさ、その後、シンデレラは幸せに暮らしましたってあるじゃない
マルゴさんは、オレたちに微笑む
その幸せって、一体何だろうっていうのをテーマにした文章を読んだことがあるよ
ガラスの靴を履いて、王子様と結婚したシンデレラは、その後どうなるか王子様の浮気に苦しめられるかもしれない生まれてきた子供たちの育児に追われるかもしれない義父や義母になった王様や女王様と上手くいかないかもしれない自分や家族が、病気になるかもしれない多分その後のシンデレラの人生にも、波乱は続くよ毎日毎日、色々な現実に直面してあくせくしながら、一つ一つ解決していくことになる