ジッちゃんの言葉は重かった
一昨日ホテルの中の私はもう、重秋の殺害を覚悟していたあいつは死ぬいや、私が命じて、殺すのだと腹を括っていたつもりだったそれでも心が揺れた本当に、重秋が司馬くんへ暗殺部隊を送り込むのか重役たちの誰と内通しているかそれが判るギリギリまで、私は決定を保留したその結果、お前たちには、色々と迷惑を掛けた私の決断が早ければお前たちを、あんな危険な目に遭わせることは無かったと後悔している
それはあたしたちも、シザーリオ・ヴァイオラの件がありましたから香月さんだけの責任ではありませんよ
そうだよっあれは、あたしの闘いだったんだからっお祖父ちゃんとは、関係無いよっ
寧も答える
うんオレたちは、オレたちの意志で、シザーリオ・ヴァイオラと闘ったんだオレたちのことについて、ジッちゃんが責任を感じることはないよ
そう言ってくれるかありがとう、お前たち
ジッちゃんが、オレたちに頭を下げる
しかし瑠璃子は
暗い顔の瑠璃子をジッちゃんは、見下ろす
昨夜、瑠璃子と話をしたなぜ、そんなに落ち込んでいるのか私は、この子に尋ねたよこの子の答えは
ジッちゃんは、ハッと息を吐く
こいつは自分には、香月家の後継者としての資格が無いかもしれないということについて、ショックを受けているらしい重秋が香月家の内部の和を乱す、不埒者であったということだから、処分しなくてはならなかったということを、この子は当たり前に受けとめているそして、その上で重秋の娘である自分は、重秋の血を引くが故に後継者の資格を失うのではないかとそんな、下らないことで落ち込んでいる
ジッちゃんは、瑠璃子の悩みを下らないと断じた
自分の父親が、死んだんだぞそれも、祖父が命じて、殺したんだどうして、そんな暴挙を15歳の少女が納得できる香月家のためには仕方の無いことだと納得しましただとこれは恐ろしいことだよ
瑠璃子には情が欠けている私は、この子の情操を教育し損なってしまった痛恨の思いだよ家だの会社だのを守ることより、家族の情の方が大切だろうこの子は、まだ15歳なんだからなっ
ジッちゃんは、叫んだ
いや、全ては私の責任だこの子を、こんな人間にしてしまったのは、私なのだから
そんなジッちゃんそんなことを言ったらオレたちだって、お葬式の控え室だって言うのにここでイチャイチャしたり、笑い合ったり、セックスしたりしていたし
お前は違うよ
へジッちゃん
お前はいつも、自分の欲望は二の次にしているみすずや、美智を元気付けようとして、お前はこの子らの性的な希望に率先して応えている愛している男と肌を合わせることで、女は安心を得るからな
確かにみすずたちは、別にセックス中毒ってわけじゃない
現状の不安から、オレとの交合を求めているだけだ
みすずたちも自分の欲望に素直すぎる傾向にはあるがお前や周りの人間への気遣いはある昨日、今日と私はお前たちの言動を細かく観察した確かに、行動に逸脱はあるのかもしれないがお前たちには、相手を思いやる心情がしっかりとあるそれは、間違いない
情
しかし瑠璃子には、その情が無いこいつは、論理的かつ合理的な計算だけで、行動しているあまりにも、思考がデジタルなのだその彼女の中の怜悧な思考が自分には、もう香月家の後継者の資格が無いと判断したので、落ち込んでいるんだ
論理的かつ合理的怜悧な、思考
重秋が裏切り者であったことを司馬くんは知っている私が重秋を処分したということはいずれ、重役たちにも知れる彼らが、勘付かないはずがないそうなれば重秋の娘である自分は、次第に排除されるだろう私が、瑠璃子をみすずと対等に扱っていても重役たちの方が、勝手に気を遣って、瑠璃子から遠ざかっていく腫れ物に触る様に扱いを受けるだろうその司馬くんが、次の香月グループのトップであり私は老齢だいずれ死ぬ瑠璃子が、香月家の後継者に選ばれることはまずあり得ない合理的かつ論理的に突き詰めて考えればな
一つの論理的な解答だ
正しいかどうかは、別にして
正しい認識だ冷静に状況から考えれば、そういうことになる瑠璃子は、そう結論付けたんだそして後継者でなくなった自分は、もう無価値だと思い込んだだから、落ち込んでいる
ジッちゃんの言う通りだ
しかし瑠璃子は、判っていない瑠璃子のこの結論には情が欠けている
瑠璃子、お前自分が何だか、判っていないんだな
瑠璃子が顔を上げる
瑠璃子はもの凄く綺麗で、可愛い女の子なんだぞ
瑠璃子は判っていない
あのなあ瑠璃子は、とんでもなく可愛い女の子なんだよっそりゃ、香月家の本家のお嬢様ってこともあるけれど可愛すぎて、みんな近づけないってこともあるんだよっ
お兄様何をおっしゃっているんですか
お父さんがどうしようと瑠璃子には、関係無いんだよむしろ、お父さんが早くに亡くなってしまった、可哀想な子だって、みんな思っているよ香月グループの重役たちが、瑠璃子を邪険に扱うはずがないだろうっ
わたくしは慮外者、香月重秋の娘なのですよっ
だから、そんなの関係無いって
瑠璃子は、政治的なことにかんしては鋭い
しかし、人の情が判っていないから
人間は、合理的や論理的な答えよりも情に従って行動する
むしろ、今のままなら将来誰かが、瑠璃子を担ぎ上げて利用するかも知れないな
どうしてです、お兄様
人の情が判らない瑠璃子は騙しやすいからさ
そういうことだいずれ私は死ぬ私が死んだら何にせよ、香月グループ内で権力闘争は起きるだろうその時までに、司馬君がグループ内を掌握仕切っていなかったら性根の悪い奴らは、みすずではなく瑠璃子を御輿に担ぐだろう
そんなお祖父様
驚く、瑠璃子
父親がすでに死んでいて、後ろ盾の無い瑠璃子の方が、操りやすいしかも、お前は論理だけの女だから、理屈をこねくり回す、小賢しい男には騙されやすいだろう
だから今のお前は、香月家から叩き出すしかないのだよ
ジッちゃんがオレを見る
お前、今、幾ら持っている
金だよ三千円ぐらいは、持っているか
うん持っているけれど
出せ
よく判らないけれどオレは、財布から三千円取り出す
ジッちゃんは、懐から何か紙を取り出し万年筆で、数字を書き込む
金、三千圓
そして、その紙をオレに手渡した